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14話 二次試験【超絶不快】

 式神の主だからわかる。ミチカゼはその建物に居たと。

 そしてキシャに雷を落とされたと。


 きっと早々に偵察が終わり、キシャと話している私を待っていたのだ。

 そして私がお姫様抱っこされた光景に鼻息を荒くしていたに違いない。


「まさか制裁を加えてくれたの?」

「どういうこと?」

「いや何でもない」


 目の前の女性が何を考えているのかわからない。

 

 でもこんな風に考えている暇があるのなら早くモンスターを倒しに行かなければ。

 ミチカゼは式神だからたぶん無事だろう。


 私は一度深呼吸をしてキシャと向かい合った。


「あのさ、試験が終わったら話したいことがある。だから二次試験受かって」

「ヘドロちゃんとお話し?」

「そう。脱落したら関わることさえ不可能。だからお互いに受かろう」

「うん、わかった。僕もヘドロちゃんとお話し出来るように受かるね」

「とりあえずモンスター探しの件はお断りで。じゃあね」


 少しだけキシャという人間を理解した。


 普通の会話は噛み合わず繋がらないことが多いけど、相手が真剣な態度になれば一瞬で意図を読み取ってくれる。

 面倒で不思議な性格だけれど、いちいち説明しなくて良いのは助かった。


 私は雷が落とされた建物を眺める。


「ヘドロちゃん。またね」


 するとキシャは瞬きの間に距離を詰め、私の手を取るとまるで王子様のようにキスをした。


「は?」


 私の腑抜けた声が漏れると同時にキシャの姿は消える。

 足元には火花が散らばっていて、雷魔法の力で移動したのだと勘付いた。


 私はキスされた手の甲を顔の前に持ってきながら、雷が落ちた建物へ向かう。


「ダウナー系高身長女性にキスを贈られた私の気持ちを聞きたい奴は出てこい」

「おう!!」


 案の定、ミチカゼはここに居た。そして無傷の状態で私の目の前に現れる。


 一応辺りを見回すけどキシャの姿も他の参加生の姿も無い。


 私はため息をついて手を下ろすと、目的地も決まってないのに歩き始めた。


「ミチカゼに話したいことが沢山ある」

「俺はコハクに聞きたいことが沢山ある。で?今の気持ちは?」

「超絶不快」

「はぁ!?マジかよ!?」

「キスされたら誰でも喜ぶと思うな馬鹿」

「俺は興奮で声を抑えるのが大変だってのに…」

「それより身体は何ともない?雷落とされたけど」

「平気だ。傷1つ無いぜ」


 私から見てもピンピンしているから本当に大丈夫なのだろう。

 キシャの言動について相談をしたいが、今はそれよりも大事なことがある。


「雷の件は後で話すとして。……音の正体はどうだった?」

「ああ、実はな」


 するとミチカゼは歩き進める私の前に浮かぶと真剣な顔つきになる。

 さっきまで鼻息荒くしていたのが嘘みたいだ。


「参加生の1人が大型モンスターにやられた。骨の音は攻撃をモロに受けたからみたいだ」

「え?じゃあその参加生は?」

「たぶん強制転送されたはずだ。今頃はプロジェクト施設の医務室じゃないか?」

「なら脱落だね……」

「そうだな」


 私は顔も名前も知らない参加生を哀れに思う。


 崩壊都市にいるモンスターはホログラム投影だとしてもやられた時の痛さは変わらない。

 モンスターにボコられた挙句、生き地獄行きは最悪の結末だ。


 それにしても大型モンスターは骨が軋むほど強い一撃を持つのか。


「ってことはまだあそこに仕留め損なった大型モンスターが居るの?横取りする?」

「いやそれは無理だと思う。俺が偵察を終えてさっきの建物に移動する頃には他の参加生が寄っていた」

「やっぱり自力で見つけるしかないのか」

「もう試験開始から30分だ。そろそろ本気で探さないと余裕なくなるぜ」

「わかってるよ…。キシャに捕まらなければ今頃見つけられてたと思うし」


 私は既にどこかへ行ったダウナー女性の顔を思い浮かべる。

 けれど今は試験に集中しなければ。


 私は自分の両頬を思いっきり叩いて気合いを入れ直す。


「行こう、ミチカゼ。まずは1体目!」

「そうだな!ビビる必要はねぇ!」


 私とミチカゼはどちらともなく拳を近づける。

 その拳同士が合わさろうとした時、近くに聳え立つビルが破壊された。


「「……マジで?」」


 私達は重ねられなかった拳をそのままに首だけを動かす。


 ビルがあったはずの場所は一瞬で平らになり、その代わりと言わんばかりにゾンビを巨大化させたようなモンスターが私とミチカゼを睨んでいた。


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