筋肉本美沙皮
私の名前は筋肉本美沙皮! 先週入った会社で副社長を倒して今は副社長をやってる22歳のピチピチでキャリキャリのバリアウーマン! 今日は人生初の占いとやらを受けに来たよ!
さて、本当に地図通りならこのナゲットとポテトの匂いがする赤いお店に入るはずなんだけど⋯⋯あ、いた。テーブルに水晶置いてるババアいたわ。
「こんにちは〜」
私が近づくと、ババアの顔つきが変わった。梅干しみたいだった顔が、一瞬で干し柿になったのだ。このババア、やりおる。
「いらっしゃい」
そう言って真顔で固まるババア。
10秒、1分と経っても微動だにしない。
「あの、占いをですね⋯⋯」
「⋯⋯⋯⋯」
聞こえていないかのような顔のババア。さっきから瞬きもしていない。
「あの⋯⋯あっ」
ババアの顔をよく見てみると、口の横に「30円」とマジックで書いてあった。デカめのホクロかと思っていたが、まさか料金表だったとは。
ババアの口に50円玉を入れると、両の鼻の穴から10円玉が勢いよく飛び出し、向こうの席に座っていたカップルの食べていたハンバーガーにそれぞれ混入し、2人は激怒して背中の太鼓を叩き始めた。
「あなたの前世は食パンです」
私の前世、食パン。
「来世も食パンです」
来世も食パン。
「人生のサンドイッチですね」
「上手いこと言ってんじゃねぇよ」
人様から30円取っといて言うことがこれだと? 許されへんからなこんなん。
「ナゲット食べますか」
私の怒りを察したのか、占いババアが媚びてきた。トレーの上にはマスタードソースのみ。私はバーベキュー派だ。
「食べます」
マスタードソースをたっぷりとつけ、麗しきプルプルピンクくちびるへ運ぶ。
黄色いタレのついた揚げ肉塊はサクッと小気味の良い音を立て、甘ったるい酸味のエントロピーを増大させた。
「お口に合ったかしら?」
「マヨネーズみたいな味ですね」
「あなた、話が噛み合ってないわよ」
「うん、サンダルで来てよかった」
やぱりナゲトは、バベキュに限る。
『みさぴとおにぎンマ』N5159IB