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side.エヴァン


「随分とセレナ嬢のことを気にかけているんですね」

狩猟の為に森に入るとすぐに側近のジュドーがセレナのことを話題に出してきた。

「彼女に獲物を捧げるつもりですか?」

「気に入らないか?」

「私ごときが口を挟むことではありません。ただ、あのローズマリー嬢の姉ですし今はあまり言われていませんが以前は悪女と呼ばれていたこともありましたので」

セレナのことは協力者にすると決めた時から色々調べた。

あの能天気な夫人のもとで育ったとは思えないぐらい規格外で狂っていた。

襲い掛かってきた野良犬を何の躊躇いもなくケーキ用のナイフで刺したと聞いた時には耳を疑った。無礼な態度を取った騎士には剣先を向けて脅迫したこともある。

彼女の報告を聞くたびにわくわくした。

そして二度目に会った時、あの塀を容易く越えて地面に着地した姿はまるで天使が舞い降りたのではないかと心を奪われた。

いつ見ても予想外で面白い女。

何不自由なく育った令嬢のはずだ。けれど時折放つ殺気はまるで熟練の暗殺者のようだ。それに彼女は無意識で行っているので気づいてはいないようだが気配や足音が全くない。

一体どんな育ち方をしたのかどれだけ調べても分からなかった。

「傲慢で、我儘で冷たい女だと邸の使用人には言われています」

「そのようだな」

「そういったご令嬢はお嫌いだと思ったのですが」

「ああ、嫌いだ」

「セレナ嬢はそういった人間ではないと?」

「何が真実かは自分の目で見て確かめる。そして俺は彼女をそういう人間ではないと判断した。寧ろ問題なのは彼女の家の使用人達だろう。質が悪すぎる」

どこまでも甘い公爵夫人のせいで使用人はつけあがり何をしても許されると勘違いをしている。

仕えている家の娘の悪口を平気で口にするなど使用人としてはあり得ないのにローズマリーの味方をした使用人は当然のようにセレナを侮辱した。平民の虐めのようなこともし始めた時は腸が煮えくり返った。

こいつらをどうやって殺してやろうかと思ったがさすがに度が過ぎたのか私が動く前にセレナが処断した。

気が付けばセレナばかりを目で追っていた。いつから私の心はこれほどまでに彼女に占領されたのだろう。当の本人は迷惑そうではあるがそこがまた面白い。

「殿下ぁっ、殿下、大変です」

狩猟祭が始まって一時間ぐらい経った頃、騎士の一人が馬を飛ばしてやって来た。その様子からただ事ではないことが見て取れたのでジュドーと無駄話をするのを止め気を引き締めた。

「何だ?」

「そ、それが、令嬢たちのお茶会会場にま、魔物が」


◇◇◇


呼びに来た騎士に王宮への増援指示を出し、急ぎ現場へ向かった。

「あれは」

飛び散る鮮血

舞う一人の少女

現場は混乱し、逃げ惑う人々の悲鳴と少人数で何とか対応している騎士の怒号が響く中で一人の令嬢を背に戦う彼女の姿だけが私の目に入っていた。

「セレナっ!」

「いけません、殿下っ!」

気づけば走り出していた。

自分の立場を考えるのなら取るべき行動ではないことぐらい分かっている。

本来ならこんな行動は取らなかった。

でも彼女に迫りくる脅威を目にした瞬間、考えるよりも先に体が動いていた。

「エヴァンっ」

驚愕に目を開くセレナ。

ああ、彼女はこんな表情もできたのか。

その表情を引き出したのが自分だという事実に場違いながらも喜びを感じた。

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