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ローズマリーとエインリッヒの婚約破棄は側妃に呼び出されてから一か月後に成立した。

というのも、父親であるヴァイオレット公爵が国外にいる為、連絡を取り帰国してもらうのにそれぐらいかかったからだ。

ヴァイオレット公爵はエインリッヒや側妃の身勝手な振る舞いに激怒。公爵家を侮辱しているとして王室を訴えた。多くの事業を展開し、国の流通を握っていると言っても過言ではないヴァイオレット公爵家。

ヘラの行動により実家の流通がストップさせられたことは記憶に新しく、国王自ら公の場でヴァイオレット公爵家に頭を下げた。

本来、威厳を示さなければならない国王は誰に対しても頭を下げるべきではない。その国王に頭を下げさせるような行動をとったことにより王宮内でのエインリッヒとヘラの立場はかなり悪くなり、巻き込まれまいと人々は徐々に距離をとりだしたのだった。

ただローズマリーとエインリッヒの婚約破棄に関してはローズマリーにも非はあったということで慰謝料は断り、エインリッヒが公の場でローズマリーを辱めたことに対する慰謝料のみを受け取る形になった。

ヴァイオレット公爵はローズマリーとエインリッヒの婚約が破棄されたことに安堵しているようにも見えた。それもそうだろう。誰だって身の内に爆弾を抱えたくはないものだ。

このことによりエインリッヒの婚約者に名乗り出る者はいなくなった。男だから行き遅れだと指をさされて笑われることはないだろうが、彼の婚約者探しは難航しそうだ。

或いは『真実の愛』の相手であるあの子爵令嬢と婚姻を結ばせ子爵家当主とする可能性もあるか。

そうなれば相応の罰となるだろう。

当然だが王族として最上級の暮らしをして来たエインリッヒに子爵家の暮らしなどできるはずもなく、また子爵家も王家の問題児を抱えてはまともな暮らしなどできないだろう。

ユリアーデンはエインリッヒの何れ自分が王になるという言葉を信じたのだろうけど。

何れ王となるということは立太子したエヴァンを殺して玉座を奪うという意味なのだけどユリアーデンは気づいてすらいなかっただろう。

「セレナ、ローズマリーはもう発ったのか?」

今日は狩猟祭。

エヴァンは狩猟服に身を包み、背には弓矢を背負っていた。

狩猟祭のメインは男だけど女も招待される。

男が好きな女に獲って来た獣を捧げて愛を乞うのだ。何ともくだらない催しだが恒例行事の為公爵家の令嬢として参加しないわけにはいかない。

エヴァンは周囲に聞き耳を立てている者がいないことを確認してからローズマリーのことを聞いて来た。

エインリッヒとローズマリーのことはまだ暫く社交界で話題になるだろう。尤も話題の相手が第二王子の為、表立って噂する者はいないだろうが。

「ええ。今朝、発ちました」

今回のことでローズマリーが娼婦のように複数の令息を侍らせていたことがヴァイオレット公爵の耳に届き、公爵家から籍を抜いて平民に戻るか、修道院に入って再教育を受けるかの選択をローズマリーは迫られた。

ローズマリーはどちらも嫌だと散々泣いていたし、アマリリスは幾ら何でも可哀そうだとローズマリーを庇ったが公爵が意見を覆すことはなかった。

もし平民になるなら職の斡旋もするし、一年間は暮らしを補償するといっていた。破格の待遇だと思うけど結局ローズマリーは修道院に行くことを選んだ。

そこで再教育を受けてから公爵令嬢として戻る道になるが、そこは問題児が送り込まれることで有名な修道院だ。その為、教育もかなり厳しく合格を貰えない限り外界との全てを絶たれるのでローズマリーのこれまでの暮らしや性格を考えると平民に戻った方が幸せだったかもしれない。

「彼女が戻ってくる頃には行き遅れになってしまいますわね」

「なかなか手厳しい評価だな。そろそろ時間だな、行ってくる」

「はい」

「狩猟祭で男は好いた女に獲物を捧げる習わしがある」

「存じ上げていますが」

何を今更と首を傾けているとエヴァンが私の髪を一房持って口づけて来た。

「もしあなたに捧げたら受けてくれるだろうか?」

「‥‥‥」

どう反応していいか分からなかった。固まってしまった私を見てエヴァンは楽しそうに笑いながら狩猟に向かった。

ただからかっただけだろうか?

でもあれは真剣な目だった。

「レディー・セレナ、少々よろしいかしら?」

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