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side.ローズマリー


気に入らない。

王子様と結婚して幸せになる。そう思っていた。エインリッヒ様は時折、私の元へ訪ねて来た。その時は必ず体を求められた。彼に求められていると思うと嬉しかった。でもなぜだろう。いつも心が虚しかった。

元平民の私が公爵家の養女になって、王子様と婚約までして幸せなはずなのに。あのいつもすました顔をしているセレナに勝ったはずなのに。

心は満たされない。

私は可愛い容姿をしているから学園に行くとたくさんのお友達ができた。殆どが下級貴族の令息だったけど。

なぜか貴族令嬢の友達は一人もできなかった。

きっと私の可愛さに嫉妬しているかセレナが邪魔をしているのだろう。セレナは本当に心が狭い。義妹の幸せを妬むなんて最低だと思う。

「エインリッヒ様は何も言っては来ないのね」

婚約者が自分以外の男と親しくしていたら普通はやきもちを焼くものだろう。なのにエインリッヒ様は何も言って来ない。

どうして?

私のことを愛していないの?

そんな不安がどんどんどんどん大きくなっていった時だった。

「エインリッヒ様の夜の遊びが最近減ったようよ」

「その代わりユリアーデンとかいうスラム育ちの汚らわしい女とよく一緒にいるようよ」

「あら、じゃあローズマリー嬢はついにお払い箱なのかしら。くすり」

「それにしても元平民のローズマリー嬢の次はスラム育ちのユリアーデンだなんて。エインリッヒ殿下はゲテモノ好きよね。くすり」

そう言って嘲笑う令嬢たちが廊下にいた。

「ぎゃあ」

私は廊下に飾ってあった花瓶を取り、中の水を彼女たちにかけてやった。

いい気味。

「ちょっと何をしますの?」

こんな馬鹿女共に付き合っている場合ではないので私はすぐにエインリッヒ様を探しに校内を走り回った。そして見つけたのだ。中庭の噴水で楽しそうに話すエインリッヒ様と紫の髪の女を。

「‥…私より大したことないじゃない」

それは見栄だった。

「エインリッヒ様」

私が声をかけるとエインリッヒ様はまるで私の存在を疎ましがっているように眉間に皺を寄せた。

「そちらのご令嬢は?」

私が声をかけるとユリアーデンは立ち上がり、にっこりと微笑む。

その姿は女の私でさえ思わず赤面してしまうほどに可愛らしく同時になぜかとても悍しかった。

「ユリアーデン・クライフトです。よろしくね」

「あら。スラム育ちなのに名前だけではなく名字まであるのね。驚いたわ。てっきり、卑しくもエインリッヒ様の優しさにつけ込んでこの学園に潜り込んだのかと思ったわ」

ユリアーデンは顔を赤くして俯く。

「スラム育ちの卑しい身分で私の婚約者に手を出さないで」

「ちがっ。私とエインリッヒ様はお友達で」

「エインリッヒ様の優しさにつけ込んだだけでしょ。最低だわ」

何が友達よ。

本当に友達なら恋人なんて噂は立たないわ。

「ローズマリー、たかが婚約者の分際で出しゃばるなよ」

「エインリッヒ様、きゃあっ」

エインリッヒ様に強く押された私は地面に尻もちをついた。

私を見下ろすエインリッヒ様の目はとても冷え冷えとしていた。こんなことは初めてでどうしていいか分からなかった。

「俺の地位にしか興味がないバカ娘が俺の愛する人を傷つけるな」

「……………あい、する、ひと?」

エインリッヒ様は何を言っているの?

あなたが愛しているのは私でしょ。だから私を婚約者に選んでくれたのでしょう。

「くすり」

「っ」

笑いやがった。

スラム育ちの身分卑しい人の分際で私を見下ろして笑った。

許さない。絶対に許さない。

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