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スカラネットの言葉はそれから間もなく、予言となった。

「まぁ、エインリッヒ様ってば面白ぃ」

紫の髪と目をした可愛らしい令嬢とエインリッヒがよく一緒にいるのが見られるようになった。その時からぱったりとエインリッヒの女遊びは減っているそうだ。

「ユリアーデン・クライフト。クライフト子爵と侍女の間にできた子だ。子爵夫人が侍女に子供ができたと知り邸から追い出したそうだ。母娘はスラム街で育った。だが先日、子爵夫人が亡くなり子爵は大手を振って母娘を引き取った」

頼んでもないのにいつの間にか私の隣に立っていたエヴァンがエインリッヒの新しい恋人について説明をする。

エインリッヒとユリアーデンは中庭にある噴水の縁に座って楽しそうに会話をしていた。ユリアーデンは大口を開けて笑う。楽しいと全身で表現しているようだ。貴族令嬢ならはしたなくてしない仕草だ。

「エインリッヒは『真実の愛に目覚めた』と言っているそうだ」

楽しそうに会話をする二人の元にローズマリーが駆け寄る。

会話は聞こえないが読唇術で「スラム育ちの汚らしい女が私の婚約者に手を出すな」とか「エインリッヒ様の優しさに付け込むなんて最低だ」と罵っているのが分かる。いつもエインリッヒの前で猫を被っていたのに完全に剥がれている。

ユリアーデンは戸惑ったようにローズマリーを見つめ、エインリッヒはユリアーデンを庇うように立ち上がる。

「俺の立場にしか興味のないバカ娘が俺の愛する人を傷つけるな」と言ってローズマリーを突き倒す。

その姿を見てユリアーデンの口が僅かに弧を描いた。

エインリッヒは女遊びを多くしているくせに女を見る目がないようだ。彼も所詮は表面的なことしか見ていないということだろう。

さて、面倒なことになりそうだな。

「助けないのか?」

興味がないとばかりに彼らに背を向ける私になぜかエヴァンが当然の顔をしてついて来る。

「なぜ?足の骨を折ったわけではないのですから自分で立ち上がることぐらいできるでしょう。あれも平民育ちです。かすり傷一つつかないように育てられる軟弱な令嬢とは違います」

「怪我の有無は関係ないよ。きっと心が傷ついている」

「死ぬわけではありません」

「君は極端だね。まるで常に死と隣り合わせで生きて来た戦場の戦士のようだ。死ぬわけではないからと放置すれば些細な傷でも膿み、腐り落ちることもあるし感染症を起こして死ぬこともあるんだよ」

「だから」と言ってエヴァンは私の手を取った。

「もし君が傷つくことがあればそれがどんなに些細な傷でも私は必ず手当てをしよう」

そう言って笑うエヴァンを見ていると心が落ち着かなくなった。それは不快ではなかったけど自分にはない感情を呼びそうで怖くなって私は彼の手を振り払った。

彼は怒りはしなかった。苦笑していたけどどこか悲しそうだった。

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