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「セレナ、どうしたの?」

すぐにアマリリスとローズマリーが来た。

アマリリスは私の部屋の惨状を見て驚いている。

侍女が言っていたようにローズマリーが指示したのは間違いないようだ。彼女は憎々し気にこちらを見てくる。

「床に転がっている物が何だか分かりますか?」

アマリリスは床に転がっている液体を見つめる。

「これは何?」

「私の食事だそうです。そこの侍女が持ってきました。部屋で食事をすると言ってもいないのに、勝手に部屋に入り、そのようなものを私に食べさせようとしたんです」

「まぁっ!」

アマリリスは信じられないという顔で侍女を見る。侍女は青い顔でびくびくと怯えている。

「ローズマリーの指示だと侍女は言っています」

「ローズマリー、あなた」

アマリリスは驚きながらローズマリーに真実を問おうとした。

ローズマリーはすぐに目に涙を浮かべて言い募る。

「ひ、ひどい、ひっく。私がそんなことするわけないじゃない。ひっく、うっっ」

「そ、そうよね。ごめんなさい、ローズマリー」

アマリリスは泣き出してしまったローズマリーに戸惑い、罪悪感に満ちた顔で彼女をそっと抱きしめる。

何て単純な女なのだろうか。

こんな女の腹から生まれたのだと考えるとぞっとする。

「ではあなたは侍女が勝手にしたと言いたいのね。部屋への無断侵入に加え、貴族であり家主の娘である私に対する侮辱。鞭打ちの刑の上、クビね」

「そんなぁっ」

侍女は大粒の涙を零しながらローズマリーに縋りついた。

「ローズマリー様、あんまりです。私に言ったではありませんか。セレナ様が目障りだから、王族と婚約を結べた自分はセレナ様よりも立場が上だから、立場を思い知らせてやると。私はあなたの指示に従ったまでです。それなのに私を売ると仰るんですか。ご自分の保身の為に」

「か、勝手なこと言わないでよ。あなたが勝手にやったことでしょう。きっとあなたは私の為だと勘違いをしたのね。でも、誰かの為にやったとして、やった人の罪は問われても動機に使われた人間の罪が問われるなんておかしいわ」

あくまで自分は無実だと主張するローズマリー。

「そんな」と泣き崩れる侍女の姿を見て同情したわけではないだろうがローズマリーが言う。

「鞭打ちはあまりにも酷すぎます。そのような残酷なことを平気で仰るなんてお姉様には慈悲の心がないんですか」

自分のせいにされても、それを水に流して侍女を庇う優しい令嬢を演じたいのだろう。

アマリリスも騒ぎを聞きつけて集まった使用人達もそんなローズマリーに感動して、逆に私には冷たい目を向ける。

どこまでもおめでたい奴らだ。

「貴族を侮辱すれば誰にも与えられる当然の罰よ。あなたは罪を犯した者を見逃せと言うの?何の罰も与えないなんて他の使用人に示しがつかないわ」

「だからって鞭打ちなんて」

「一番軽い罰よ。何も殺そうってわけじゃないんだから」

「殺す‥…」

侍女はがくがくと震え、自分の体を抱きしめていた。

「何を驚いているの?不敬罪で死刑を宣告されることは珍しいことではないでしょう。ローズマリー、あなただって例外ではないのよ。王族に不敬を働けば即死罪よ」

「私は殿下に愛されているわ」

こいつ本物の馬鹿だ。

婚約は確かに申し込まれた。だけどエインリッヒがローズマリーに本気で惚れているかなんて分からない。彼に何かしらの考えがあるのか、あるいは彼の背後にいる者が。

貴族の婚約に裏表がないと考えるのはかなり危険なことなのだ。

騙し騙され、利用し利用され、裏切り裏切られ。それが貴族。

貴族とは詐欺師の集団のことを指すのだ。

それにローズマリーの言はつまりエインリッヒは愛する者の為に法律を曲げ、罪を犯した人間の罪を帳消しにできるということ。

だから自分は何をしても許されると言外に言っているようなものだ。本人は気づいていないようだけど。

幸いなことにアマリリスを含めた周囲の人間は馬鹿ばかりなので、そのことに気づいていないようだ。

ローズマリーは本当に悪運の強い人間である。

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