タイトル:元暗殺者、転生して貴族の令嬢になりました
イラストレータ:みれあ様
出版社:主婦と生活社
発売日:2022/08/05
【あらすじ】
全然なりすませてない転生令嬢の コメディ×サスペンス×ときどきラブ! ? 任務に失敗した暗殺者が転生したのは、公爵令嬢のセレナ。 「私は元暗殺者。なりすますなんて簡単だ」 そう思っていたセレナだが、 頭がお花畑な母親や、彼女を蹴落とそうと周りを欺く義妹などとの 感覚のズレにいら立ち、生きづらさを感じていた。 マウントだらけのお茶会に、ドロドロな学園生活…… 周囲からの嫌がらせを冷めた目で痛烈にかわしながらも、 その冷徹さゆえに疎まれ孤立していくセレナ。 そしてある日、義妹が第二王子と婚約することを知り、 ついに家出を決意する。 しかしそこに、第一王子のエヴァンが現れてーー!? 愛を知らない冷血な元暗殺者は、 怯むことなく貴族社会を突き進む!
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名前はない。19956番という番号で呼ばれていた。
物心ついた頃からスラムの薄汚い路地裏で暮らしていた。いつも男が一人やって来る。彼に言われた人間を殺して、お金をもらう。
そんな暮らしをずっとしていた。
人殺しが悪いことだと思ったことはない。それは生きる手段でしかない。
だからと言って生きたい理由があるわけではない。死にたい理由すらもない。
生きているから生きている。死んでいないから生きている。
お腹がすいたから物を食べる。
お金がないと何も買えないからお金を稼ぐ。
ただそれだけのことで、それは本能に近かった。
そんな暮らしを何十年も続けていたある日、この国の王太子と呼ばれる人を殺せと依頼を受けた。
「この方だけは失うわけにはいかないんだ」
殺そうとした男を守る男がいた。
かなりの手練れだ。
「この方を守る為ならあなたと相打ちになっても構わない」
おかしなことを言う男だ。他人の為に命を擲つなんて。
いつも自分のためにだけに生きてきたから、彼の感覚はまるで分からなかった。
ただ、やばいなとは思った。
生きて帰れないかもとも。
死ぬのが怖いとは思わなかった。