第十五話 初仕事
聞き込みと言う事で、一番事件について知ってそうな隣人宅に訪問することにした。
自分の隣の家で殺人事件があっただけにとどまらず、さらに燃えて全焼したんだ。かなりの情報を持っていても不思議ではない。
そう思い、俺は隣人宅の家に前に立つのだが……。
「でけぇ~」
侵入者を圧倒する門に、臆されていた。
人間よりも少し大きな門に、上から見下すように出ている屋根がさらに重厚感を与えている。
その中でぽつんと置かれているインターフォンが雰囲気をぶち壊しなのが残念だな。
しかし、これがあるだけで安心感が得られるという見方をすれば素晴らしいと言える。
物語とかで家の中の人を呼び出すときに、扉の取っ手でノックをするそれがどれだけ雰囲気を大事にしていたのかよく分かる。
あれだけでもロマンがあり、見ていてわくわくした。
「私、人が居るか見てきますね」
俺の手を離れて、シリウスはインターフォンを押しに行った。
少しだけ押すのをためらってから、力を込めてグッと押した。一つ一つの動作が小動物のようで庇護欲が心から溢れかえりそうだ。
しばらくして、インターフォンから声がした。
少し距離があるので向こうが何を言っているのか分からないが、シリウスの返答から察するによく知らない人には会えないと断られているのだろう。
シリウスも俺の役に立とうと努力してくれているが、向こうが怒鳴ったかと思った瞬間、シリウスが俯いた。
その瞳には涙この浮かんでないものの、とても悲しそうな顔をしている。
まあ、初めての仕事が大失敗じゃあへこむよな。
しかも、ブチギレられての終了だ。
ここで次頑張ろうとポジティブになれる奴がいるのなら、そいつは何にでも耐えきれるよ。
例え耳の中にムカデが入ろうと平気な顔して座ってるよ。
「淳平さん……その……」
とぼとぼと帰ってきたシリウスは、とても申し訳なさそうだ。
声色もしょんぼりとしており、送ってしまったこちらが申し訳ない環状で支配されてしまう。
「気にするな。俺が行ってみよう」
一度交渉に失敗した家にもう一度行くというのは失礼な行為かも知れないが、ここでシリウスだけに失敗を経験させるのはよろしくない。
自分も失敗するところを見せれば、自分だけできないなんてという孤独感を紛らわせることが出来る。
俺でも出来なかったんだ、初めてのシリウスじゃ難しいよ。
という感じで、うまく収まればいいなぁ、と思っている。
「すみませーん」
意を決してインターフォンを押して、相手の反応を待つ。
第一声は果たしてなんだろうか。取りあえず、自分たちの目的を伝えて……。
すると、ブツッと相手がインターフォンに反応をした音がした。
こちらからは相手の顔が見えないので、緊張するな。向こうはこちらの顔をしっかりと見て発言しているので、相手の顔が見えない自分たちは常に下に立っていると考えるべきだろう。
「……新聞、宗教、セールスならお断りだよ!!!!」
第一声を聞いた感想。
大変に面倒くさそう。
いや、あくまで第一印象だから話したら印象は百八十度変わるかもしれないけどさ、開幕怒鳴られるって怖いじゃん。
シリウスがうまく話せてなかったのも納得だ。
「すみません、われわ─────」
「しつこいね。さっきといい、今といい。何回言ったら分かるんだ」
「いや、そうじゃな─────」
「いやじゃないよ! あんたらはこっちの言う事をはいはいって聞けば良いんだよ! 何度も何度も来やがって!!」
どちらでもないって、言わせろや。
どれでもないのに勝手に決めつけないで欲しい。そんな金やら宗教やらよりも大事な人命についての話をしに来たんだが。
「毎日のようにうちに来て、何が目的なんだ!言ってみろ」
「いや─────」
「いやじゃないよ!あんたらはこっちの言う事をはいはいって聞けば良いんだよ! 何度も何度も来やがって!!」
は、話がループしてやがる。
なんだこの終わりを感じない会話は……。
「それに、さっきの小娘はなんだ! こっちが話しかけてるのにまともに会話できやしない」
話しかけてるって、別にシリウスはお前と世間話がしたくて話しかけたわけじゃないんだが。
てか、どうしてインターフォンに応対した奴が話の主導権を奪い去ってるんだよ。こっちは用があって押してるんだから、話を聞いて欲しいんだが。
「もごもごとしていてきもちが──────」
「おい」
カメラは気にしない、ぐっとインターフォンのマイクに相手が良く聞こえるように口を近づける。
耳に嫌と言うほど声を届けてやるために。画面は近づきすぎて真っ暗だろう。
「シリウスの悪口を言ってみろ、いくらなんでも自由すぎるぞ」
こっちの話は聞かないし、勝手に誤解して暴言を飛ばしてくるし。
挙げ句の果てにはシリウスの悪口を口走ろうとするという。
いくらなんでも自己中すぎるだろ。
俺が悪口を口走る直前に止めたことに感謝して欲しい。
シリウスの個性を侮辱するような言葉に、優しさを与える気は毛頭ない。
この家、面影名なくなるほど破壊してやるわ。
「……」
俺が一言言ってから、マシンガンのように連なっていた言葉が止まった。
シリウスのことを言われカッとなって言ってしまったが、何の反応もないのは想定外だな。調子に乗るなと、激高されると予想していたのだが。
「おーい? 聞こえてますか?」
「あ、はい。家の前に不審者がいて、はい。急に罵声を飛ばされて」
「はあああ?????」
こいつ憲兵に通報してやがる!!
こっちの話は聞かずに、一方的に罵声を浴びせた奴がなに被害者気取ってんだよ! こっちはシリウスの悪口言われかけたんだぞ!
しかも、急に冷静になるじゃん。
ブチギレ応対はどうしたんだよ。なんで俺たち理不尽にキレられて犯罪者にされなきゃいけないんだよ!!
しょうがない、ここに逃げるか。
こんなところで捕まってたら聞き込みどころではない。
「シリウス! 逃げるぞ!」
「……っえ?」
「ちっ、すまん!」
唐突な逃走指示に反応できないシリウスを、俺は無理矢理抱きかかえた。
さすがにここで1から説明して、シリウスに納得してもらっての逃走では憲兵が来てしまう。
取りあえず、一時撤退だ。
しばらくしたらまたここにきて、今度は別の家に聞き込みをしよう。
シリウスにお姫様だっこをして、俺は取りあえず少し離れたファミレスまで逃げることにした。
時が過ぎるのをあそこで待とう。
「ふざけんなよ、あのジジイ!!!!」
去り際に忘れずジジイ宅に暴言を飛ばしてからその場を後にする。
シリウスを怒鳴っただけではなく、悪口まで言おうとするとか二度と来るか!
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それではまた次のお話で会いましょう。