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第十四話 彼らの住居

 依頼は請け負ったということで、取りあえずは定石の聞き込み調査だ。

 さすがにペットと違って、感覚であっちにいる気がするなんて見つけ方は出来ないので、地道にやっていこうじゃないか。


 シリウスを俺と一緒に外に出るのは楽しいらしく、帽子から僅かに見えるその顔は純粋無垢という表現がこれでもかと似合うほどの笑顔だった。

 見ているコッチまで元気をもらえそう。


 シリウスに何かあったらいけないので、手を握りながら俺たちは赤いメモに書かれた住所へと向かう。

 事務所からは少し離れていたので、電車での移動だ。


 しかし、電車ではシリウスが初めての電車に大興奮していてとても可愛らしかったことだけなので特に触れない。

 シリウスのかわいいところは俺だけの秘密である。あと、たまたま居合わせた運の良い奴ら。


 それにしても、メモに書かれた住所に正しく向かっているがこの周辺はえらく豪邸ばっかだな。

 どの家にも大きな門とでも言えば良いのだろうか、車が通れそうなぐらい大きな門があり、家が見えない。


 周囲はしっかりと壁で囲われていて、僅かに見える家ですら少し遠くに屋根があるということを考えると、あの敷地内も家と同じように大きな庭があるのだろう。

 こんな家に住んでみたいモノだな。


 シリウスと二人きりっていうのは掃除とか大変そうだから、掃除専用に人でも雇って二人で自由気ままに暮らす。

 たまに麻音とか時鬼が来て、一緒に飲む。


 そんな生活が出来たら……幸せだろうか。

 どうだろう。案外、今の火の車状態の探偵業も楽しいんだよな。


 大家のじいさんは優しいし、アイツらも気楽にうちに来るし。

 いや、気楽に来てもらうのは困るな。飯は食うし、家は散らかすし。


 良いことが一つもない。

 やっぱ来ないで欲しい。事務所にも、未来で俺たちが住むかもしれない豪邸にも。


「シリウスはこんな家に住んでみたか?」


 適当に目にとまった家を指さし、シリウスに訊いてみる。

 彼女的にはどうなのだろうか。こういった豪邸という恐ろしい金持ちの道楽は。


「こんな大きな家ですか? 憧れはしますけど、住んでいて肩が凝っちゃいそうです」


「そういうもんなのかな~」


「あっ、もちろん。淳平さんが住みたいというのなら、私は付いていきますよ!」


 俺の反応を見て、返答を間違えたと思ったのかシリウスが急いで訂正する。


「シリウスがいるのなら、俺はどこでもいいけどな」


 このかわいさの権化のような存在が、自分の側に居てくれるのなら俺はどこでも構わない。

 海中だろうが、空中だろうがどこだって住んでやろう。


「そういえば、麻音さんたちの家ってどんな感じなんですか?」


「麻音たち?」


 アイツらってどんな家に住んでたっけ。基本的に向こうが事務所に来ることの方が多いから、すぐに思い出せなかった。

 確か麻音は依然事故があったアパートの一室が安かったからそこに住むことにした、と最初の頃に言っていたな。


 押し入れの壁に貼ってるお札が気持ち悪いから取ったとも言ってた。その後、俺と時鬼ですぐに貼り直しに行ったのは良い思い出だ。

 一応今のところは何も変な事はないらしいが、もしお札を剥がしたままにしてたらどうなってたんだろう。別に何も起きない事も考えられるっちゃあ、考えられるが。


 時鬼は、タワーマンションとか言うところの低層階に住んでいるらしい。麻音は一度見に行ったことがあると、楽しいそうに語っていた。

 彼が言うには取りあえず防犯の面で考えてそこを選んだらしい。淳平ももうちょっと気を付けなよ、とも言われたな。


 今のところ強盗が入ったとか、怪しい手紙が来たとかはないので俺は気にしてないが、シリウスがいるのなら気を付けるべきか。

 防犯カメラぐらい自前で用意しようかな。


「麻音はアパート、時鬼はタワーマンションって所に住んでるよ」


 住んでる理由なんて興味ないだろうし、とりあえず住んでる建物だけ伝える。

 それだけでも、彼女は目を輝かせているので別に良いだろう。


「お二人の家にも行ってみたいですね」


「ん? そうだな……」


 シリウスを連れて麻音の家に行くのも良いし、時鬼の家も見てみようかな。

 アイツらが勝手に来るんだ。俺たちだって行って良いだろう?


 良いよなぁ。

 拒否権なんてないはずだ。


 そんなこんなで今夜の予定を考えていると、目的の場所が見えてくる。

 見えてくると言っても、あくまで住所だけを指している。


 二年も前の出来事だ。

 事故当時のまま残っているわけもなく、そこには新居が建っている。


 周囲の家と同じように壁が家や庭を囲っていて、敷地内はよく見えない。

 しかし、他の家と違って壁の色が少しオレンジがかっていてと、ぼーっと眺めていても自然と視線が集まるような目立ち方をしている。


 この家も言ってしまえば麻音と同じように事故物件になるのだろうか。

 それを少しでも感じさせないための工夫だろうか。だったら、住まなきゃ良いと思うが高級住宅地っぽいしプライドか。


 金を持っていると表現するのに一番簡単なのか、視覚的にそう感じさせることだからな。

 時鬼だってタワーマンションに住んでいると言って、連れて行くだけで大体の人が自分の事を大金持ちだと思っている人が多いと言っていた。それと、その期待を裏切るように低層階に案内するのが辛いとも。


 取りあえず、聞き込み調査だな。

 周囲数件にここ二年前の事件のことを聞けば色々と知れるだろう。


 新たなに新居を建てて目的の住所に住んでいる人に聞くのは最後だ。


「よし、シリウスがんばるぞ!」


「はい!」


 初めてのペット探し以外の仕事。

 シリウスからしたら初めての仕事だ。


 絶対に成功させないとな!


 ここまで見ていただきありがとうございました。

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 それではまた次のお話で会いましょう。

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