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第十二話 ファン

 朝食は昨日食べたあのサンドイッチだ。

 俺が教えたのと、ソレ用の食材しかないため必然的に朝食はこうなる。


 別に朝から出前を頼んでも良いのだが、昨日馬鹿のように高い服を買ったのがトラウマになって金を握る手が震えていたので諦めた。

 お金の余裕はあっても、心の余裕はなかったようだ。


 その様子を見ていた二日酔いの麻音には鼻で笑われたが、怒りをグッと抑えて笑って許してやった。

 が、その後俺の寛大な心を気持ち悪いとかいう失礼極まりない発言をしたため、両者全ての力を使った戦闘へと派生しかけたが、シリウスが間に入ったことにより麻音の命が数日延びた。


 次は絶対ないからな、と宣言をしたら、期待しているわと返事をして麻音は帰って行った。

 しっかりとサンドイッチは食っていったので、食材は一人前なくなってしまった。


 まあ、食パンは近くのパン屋から売れ残りを半額で買わせてもらっているし、他の食材もスーパーで半額になった物を使っているから別に良い。

 一人前なんて、百円にも満たない。


 そんなこんなで、俺の生活は元に戻ろうとしていた。

 シリウスという存在こそいるが、彼女は俺の家を綺麗にすると意気込んでいたので好きにさせている。


 なんでも汚い部屋を綺麗にするのはとっても楽しいらしい。

 達成感やら、幸福感やら、そんな感じの物が得られるので是非やらせて欲しいと懇願されてしまった。


 シリウスにお願いされてしまっては断れないので、何度も頷いて彼女に許可を出した。

 小さな声で「やった」と言ったときの彼女は、もう天使かと思うぐらいにはかわいかった。


 もしも、神が彼女を迎えに来たと言ったら納得してしまうレベルにはかわいかった。

 絶対に連れて行かせはしないけど。


「なあ、シリウス」


「はい、なんでしょう」


 机の上にある灰皿のゴミを片付けているシリウスに声をかける。

 彼女はその手をパッと止めて、俺の方を見た。


「なんでお前はそんなに俺のために、色々やってくれるんだ?」


 それに、初めて会ったときの俺と麻音たちの対応の差を思い出すと違和感があった。

 麻音たちに対しては口から出る言葉はたどたどしく、目を合わせられなかった状態だった。


 しかし、初めて俺と会ったときは事の経緯をしっかりと説明でき、俺との会話も特に気になる点はなかった。

 俺と麻音たちの対応の差が気になった。


 あたかも俺を以前から知っているかのように距離感が近く、麻音たちとは正しく初対面という感じの対応だった。


「えっと……その……」


 あやしい。

 一言で言ってしまえば、そう感じてしまった。


 しかし、俺は探偵だ。

 名付け師でもなんでもなく、聡明な探偵なのだ。


 僅かな状況しょう子といかいう人物から、正解に導くことが出来てしまう。

 今の状況、俺が見抜いたしょう子によるとシリウスは俺に面識があるか、一方的に知っていたのだ。


 こんな少女、そして施設で俺を知る術なんて数少ないだろう。

 施設って新聞もらえるのだろうか。


 そういえば、以前おれ新聞に載ったけどその時に知ったのか?

 それとも、日々の活躍が色んな人に伝わって彼女の元にたどり着いた?


 俺の活躍を聞いて彼女が俺に心を開いていると言うのなら、実は彼女俺のファンなのでは?

 そうに違いない。彼女は俺のファンだったのだ。


 ファンクラブを作っていなくて申し訳ない。

 彼女から、一言もそんな話聞いてない気がするけど恥ずかしいだけだろう。


「あの─────」


 口を開いたシリウスを、俺は手をバッと出して止める。

 わざわざ分かりきったことを言わせるなんて無粋なことを、俺はするほど馬鹿じゃあない。


 女の子が恥ずかしがるようなことをやらせるなんて、失礼じゃないか。

 相手の心を読んで、先回りをする。


 なんでもデートをするときは女性の座るところにハンカチを引くらしいからな。

 そう言うことだ。


「言わなくても良いぞ。お前の気持ちはしっかりと受け取っておく」


「え? えっと。あ、ありがとうございます?」


 どうしてか疑問形のところが引っかかるが、彼女が感謝しているのなら良いだろう。

 これからは紳士探偵『並木淳平』として働くのはどうだろうか。


 いや、まあ、冗談だけどさ。

 かっこいい気がする。


「シリウスも困ったことがあれば言うんだぞ。俺がどうにかしてやるからな!!」


 俺が認識した大事なファン一号だ。これからも応援してもらうために頑張ろうじゃないか。

 そのためには……。


「まずは依頼だよなぁ」


 意気込んだのは良いものの、探偵という職業である以上依頼がなければ収入がない。

 基本的に今まで一週間に一個。多いときは二個という感じで、ペットがいなくなったけど警察とかには取り合ってもらえないし、と困った人がやってくる感じだ。


 良くペットがいなくなるあの富豪はもうこの前来たから、最低でもあと三日は来ない。

 探偵が依頼ありませんかなんて、客引きやら訪問やらするなんてダサいし。


 だからといって悠長に待っていると、二人になったこの部屋の食費やらいろんな物の出費は変わらないし……。

 どうやってお金を確保しようか。シリウスの分だけ時鬼に払わせるか?


 いやいや、それは一緒に住むと言った癖に何をしているんだということに……。

 収入の見込みがなく、うがーと唸っていると扉が再びノックされた。


 最近、俺の部屋に来る奴が多い気がする。

 シリウスに会いに来た麻音か時鬼だろうか。


「はーい、開いてまーす」


 適当に返事を返すと、ゆっくりと扉が開いた。

 その扉の挙動に俺は違和感を覚える。もしもあの二人なら、こんな丁寧に開けることはない。


 我が物顔であの扉をぶち開け、室内に侵入してくる。

 この謙遜具合。間違いない。


「ここって探偵事務所で合ってますか」


 依頼がやってきた。


 ここまで見ていただきありがとうございました。

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 それではまた次のお話で会いましょう。

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