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第九話 苦い勝利

 淳平の前にそびえ立つ高額の衣服。

 可愛らしい女子向けの服は、常識を越える敵として淳平たちの前に立ちはだかった!


 って言うのは良いとして、本当に高くないか?

 今から島な村に行ってもいい?


 いや、ダメだろうなぁ。

 麻音のことだ、どんな服を買ったのか見に来るだろうし、古着屋でそれっぽいの買おうもんなら、一発で見抜かれそう。


 アイツの服に関するこだわりは異常だからな。

 どうしてあそこまでおしゃれに金をかけるのか、俺には分からん。


「うーん、どれも高いし、おしゃれなのかよく分からんな」


 どれがおしゃれなのか理解できない。

 シリウスに好きに選ばせてみるか?


「シリウス、自分が良いなって思ったやつ一着持ってきな」


「え? 選んで良いんですか?」


「ん? ああ、好きなの持ってきて良いよ」


「はい!」


 可愛らしい笑みを浮かべて、シリウスは走り去っていった。

 やはり、おしゃれな服というのは見ていて楽しいのか?


 女子は服選びが好きって麻音も言っていたし。

 そう言うものなのだろうか。


「一応俺も見て回るか……」


 フリフリな何かが付いている服に、肩が出てる服。

 ピンク色の服に、白色の服。


 上と下が一緒になっているわんぴーす? とかいう名前の服。

 ズボンがぼろぼろに破けているダメージジーンズとか言うのもあった。


 いろんな服があるなぁ、と思って店内を回っているとシリウスが帰ってきた。

 嬉しそうな顔をしながら、こちらに走ってくる。


「こ、これとかどうですか!」


 白色の服、かわいらしさ全開かと思ったがフリルが少しだけ付いていて、そこまで主張も派手ではない。

 これが……おしゃれ……?


 よく分からんが、シリウスが欲しいというのだ。

 買ってあげようじゃないか。



 ……

 …………

 ………………



 後悔はない。

 買ったことに後悔などするわけがない。シリウスが欲しいと言ったのだ、買ってあげるべきだろう。


 だがな……。

 後悔がなくたって、愚痴を言うぐらい許されても良いと思う。


 神も仏も麻音も許してくれるはずだ。

 というか許せ。


 麻音に関しては黙って許せってんだ。

 なんだよ! 七千八百円!?


 あの店に行くまでにシリウスが欲しがっていたので実は買った100円の帽子と比べものにならない。

 帽子を買うときは、それの数倍近いモノを買うとは思っていなかった。


 服の一着だぞ!

 布きれがただの布きれをちょっと細工するだけで、七千八百円も稼げるらしい。


 ちょっと服屋に転職しようかな。

 適当に布と布縫い合わせてフリフリを付ければ完成だ。


 もしかして俺、服を作る才能があるのでは。

 こんなにすぐ衣服のデザインを思いつくのだ。


 白とピンク色を使って、フリフリにダメージ(?)を付けるためにビリビリにして、上下一緒のわんぴーすだ。

 ……やっぱ、やめる。変なの出来上がったわ。


 いくらおしゃれに疎い俺でも分かる。

 これ服じゃない。ただの布きれだ。


「シリウス。その服だけじゃ足りないだろ。島の村にも行っとこう」


 あそこなら格安で、それなりの品が手に入る。

 安心と信頼の出来と価格だ。


「はい、分かりました」


 ブランド名が入った紙袋を大事そうに持って、シリウスは歩く。

 俺が持とうと思ったんだが、自分の物は自分で持ちます! と言って渡してくれなかった。


 本人がそう言うのなら俺は何も言うまい。

 それに、欲しいものが手に入ったとき自分の手から離したくない気持ちはよく分かるからな。


 自分で触れていたいし、自分でずっと眺めておきたい。

 なんなら一緒にすら寝られてしまう。


 俺もやったよ。

 スーツでな。くしゃくしゃだよ。


 それ以来一回もやってない。

 やってないというか、やらないと決意した。


 俺の家にはアイロンがないのだ。

 くしゃくしゃのスーツは印象が悪いらしいからな。


 ……なんで、俺自分の失敗談思い出してるんだ。

 なんか気分が下がったぞ。


 ブランド店の次に寄った、島の村トウキョウ店。

 やっぱりここが落ち着くね。


 四桁目の数字が少し違うだけで心に余裕が生まれる。

 この店でもシリウスが欲しいもの一着。俺がよさげだと思った物を数着買った。


 女児向けの所から買ったんだ。

 間違いはない……はず。信じてるぞ、島の村。


 俺の絶望的なセンスを島の村ならどうにかしてくれると確信している。

 いつも服はここで買ってるんだ。


「今日は、こんなに買ってもらってありがとうございます」


「気にするな、お前のためだったからな。これ位へっちゃらだよ」


 それに麻音からもらった二万も余ったからな。

 俺たちの生活費の足しにしよう。


 島の村で買った服は、さすがに多いので俺が持っている。

 最初はそんな事出来ないとシリウスが持って行こうとしたが、レジで受け取るときに俺が先手を取ったのでこうなった、


 シリウスは俺の身の回りのことをしようとする節がある。

 俺は自分の事ぐらいできるのでしなくていいのだが、彼女のプライドだろうかそれがいつも許さない。


 謎の奉仕精神とでも言えば良いだろうか。

 それがいつも働いている感じだ。


 敬語と言い、積極的に苦を背負おうとする姿勢とか。

 どんな施設の出だ?



             ☆☆☆



「第一回! チキチキかわいいシリウスのファッションショー!!!!!!!」


「い……いえええい……」


 少し恥ずかしそうに手を上げるシリウス。

 さあ、買ってきた服を見ようじゃないか。


 可愛らしいシリウスに着せようじゃないか。

 参加者はシリウス一人。そして、審査員は俺一人。


 二人っきりのファッションショーだ。

 誰にもかわいいシリウスの服は見せてやらん!!!


 ここまで見ていただきありがとうございました。

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 それではまた次のお話で会いましょう。

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