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鬼人は寄り添うのみ  作者: えちだん
第一章 人、鬼人、妖
5/9

餓狼団登場!?

 会話というよりも、もはや愚痴になっているがおとなしく相槌を打っていた。

できるだけ街に長居をしたくはないのだが、お世話になっている相手を邪険にする訳にも行かずほとほと困ってしまう。

そうしていると店にガラの悪い男が一人入ってくる。


 その男は着物を着崩しており、獣の毛皮を腰に巻いていたりと全体的にちぐはぐな印象だ。

彼のようなものを傾奇者とでもいうのだろうか?

彼の物珍しい格好に目を奪われていると、男は急に声を荒げ始める。


「ヤイヤイヤイ!! ここは俺たち餓狼団(がろうだん)の縄張りでい! おい、女! 俺達に許可も取らず、そんな怪しいよそ者と商売するだなんてふざけているのかい!?」


「なんだって!?」


 男の声にも負けず劣らずの声量で女性は睨み返す。

男は小さい悲鳴を上げ後ろに一歩下がってしまう。


「お、俺は餓狼団の一員だぞ……!」


「何が餓狼団だい! 狼を名乗るならせめて狼の毛皮を身に付けな! あんたが腰に巻いてるのは穴熊の毛皮だろ!!」


「うぐぐ…… 俺たちが守ってやってるのに何て言い草なんだ……」


「守る? いったい何から守っているんだい!? ただ威張り散らしている悪ガキのくせに黙ってな!!!!」


 女性は男に一歩に引かず、それどころか男を飲み込まんとする勢いで言い返す。

男のほうは、顔には汗をかき始めており戸惑いの表情の手本のようになっている。

しばらくすると男はタガが外れたかのように腰に差している棒を抜き、振り上げた。


「う、うるさい! うるさーーい!! お、俺はすごいんだ! そんな怪しい奴、俺が退治してやらぁ!」


 急にこちらに棒を向けられ、たじろいてしまう鬼人。

どうすればいいのか分からず困ってしまい、女性のほうに助けを求めるように顔を向ける。

女性は小さくため息をつくと男ににらみを利かせながら口を開いた。


「あの子はただの悪ガキさ。最近になって餓狼団とかいうのを仲間内で作って悪ぶっているだけだから怪我しない程度にお灸をすえてやってくんないかい?」


 そう言われ、もう一度男のほうを見る。

男は頭に血が上っているというより、引っ込みがつかないといった様子だ。

微かに体が震えていることから、荒事に慣れているようには到底思えない。

これだったら適当にあしらうだけで引いてくれるだろう。


 男に向かって鬼人はゆっくりと歩を進める。

鬼人が一歩、歩くごとに男は一歩、下がってゆく。

それを数度繰り返すと男の背と壁の距離はなくなり、後ろに下がれなくなる。


「こっちにくるんじゃねえっ! ほ、本当に、こいつでぶっちまうぞ!」


 震える声で男は棒を鬼人に向かって向ける。

鬼人の背丈が高いことと顔が見えないことから威圧でもされているのだろうか?

そんな怯えている男が棒を握っている手に自分の手を添える。

男は訳が分からないという顔をしていたが、徐々に顔の表情が苦痛の表情に変わっていく。


 表情を変えたのは鬼人の手が男の手を握りしめ始めたからだった。

徐々に力を加えていき、男の手を握り潰さないように注意する。

ある程度力を加えると男はたまらず、棒を落とした。

その様子を確認して鬼人も手を離すと男はその場から逃げるように離れる。


「ち、ちきしょう! おぼえてろいっ」


 そう言い放つと店から勢いよく飛びだしていく。

後に残るのは、なぜか申しわけないことをしたような気がして居心地が悪そうにしている鬼人と大笑いをしながら腹を抱えている女性だけだった。

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