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鬼人は寄り添うのみ  作者: えちだん
第一章 人、鬼人、妖
2/9

その影は鬼人也。

 人里から少し離れたところに山がある。

山は木々で生い茂りまるで人が来るのを阻んでいるかのようだった。

そんな山奥にガサガサと葉を揺らしながら駆け回っている影が二つあった。


 一つ目の影は地を四つ足で駆け回っている。

体躯は人間の成人男性にも引けを取らないどころか一回り大きい。

全身が剛毛に覆われており、その内側には強靭な肉が埋もれていた。


 その正体は猪である。


 森の中で出会ってしまったら命の保証はないと容易に想像できる大きさ。

その体躯と突進力という武器を持っていた。

この猪は山での強者としての風格を持ち合わせていた。


 その猪が走り回っている理由は何だろうか?

誰かがこの強者の不興を買い、不届き物を追いかけているのだろうか?


 否、否である。


 猪は自分の捕食者から逃げ回っているのである。

この山の強者を追いかけまわし、あまつさえ捕食しようとするものはいったい何者だろうか?

その正体はもう一つの影である。


 その影は木々を縫うように追いかけまわしていた。

木の幹を蹴り垂直に身体が跳び、枝に飛び移ると身体がゴムマリのように跳ね回る。

重力を無視したような動きで空に躍り出て猪を目に捕らえる。


 そうして、猪の真上に突き出た枝を蹴り、垂直の影が降り立った。

その影の足と地面に挟み撃ちにされた猪の頭部はたまらずひしゃげてしまう。

先ほどまで地面を駆けまわっていた強者は地に伏し、動かなくなっていた。


 雲の隙間から日が差し込みその影を照らす。

黒髪、黒目で、一般的な成人男性より頭一つ大きい背丈。

筋肉は引き締まり、まるで巨大な肉を身体に押し込まれ凝縮された印象を受ける。

そして一番特徴的なのは額に生えている二本の角であった。

角は目幅と同じあたりに生えており、長さは小指と同じか少し短いといった長さであった。

色は白く、この角がこの男を人間ではないということを現していた。


 鬼人。

彼は捨てられて200年たった今でも生き延びていた。

あの弱弱しく、二の足で立つこともできず、虫を這って食っていた。

その鬼人が今では、二の足で立つどころか、空を跳び、強者を狩る捕食者となるほど成長したのだった……

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