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雨上がりの熱(AI生成)
蒸し暑さが残る夏の夜だった。日中のスコールが嘘のように静まり返った空気は、土と濡れた植物の匂いを濃くしていた。古い木造家屋の縁側に座り、私はグラスの中の氷が溶ける音に耳を傾けていた。
浴衣の襟元から、ほんのり汗ばんだ肌が覗く。湯上りの熱がまだ体に残っていて、それが肌の上を薄い膜のように覆っているのを感じた。風はほとんどなく、蚊取り線香の煙がゆっくりと、しかし確実に立ち上っていく。その煙の向こうに、月がぼんやりと霞んで見えた。
遠くで、微かに祭囃子の音が聞こえる。それは賑やかな音ではなく、むしろ夜の静けさに溶け込むような、たゆたう音だった。指先でグラスの表面をなぞると、冷たい雫が滑り落ちる。その冷たさが、じっとりとした空気の中で一層鮮やかに感じられた。
目を閉じると、全身の感覚が研ぎ澄まされる。汗が肌を滑る感覚、蚊取り線香の微かな香り、遠くの音。そして、自分の心臓が、この熱い夜の中で、静かに、しかし確かに脈打っているのが聞こえた。それは、何かを待ち望むような、あるいは何かに満たされる前の、柔らかな予感のようなものだった。