落ちこぼれ第二王子の帰還〜選ばなかった方の男が、聖帝と呼ばれるまで〜
「アルフレッド、婚約を破棄してほしいの。私は……第一王子であるエドワード様を支える道を選びました」
リリアーヌのその言葉は、冷たい刃のように僕の胸を刺した。
僕は魔力が低く、社交界でも「王家の出がらし」と揶揄される第二王子。対して兄のエドワードは、次期国王と目される完璧な第一王子だ。
「……分かった。君の幸せを邪魔する権利は、僕にはないからね」
僕は笑って身を引いた。その直後、僕は「修行」という名目で、魔物が跋扈する辺境の最前線へと事実上の追放を言い渡された。リリアーヌは一度も振り返らず、兄の腕に抱かれていた。
3年後:崩壊の序曲
王都の舞踏会は、かつての華やかさを失っていた。
兄・エドワードが強引な軍拡を進めた結果、国庫は底を突き、隣国との緊張は最高潮に達していた。そして、兄の隣で「未来の王妃」として振る舞っていたリリアーヌもまた、贅沢三昧の生活で民の不興を買っていた。
そこへ、一人の伝令が駆け込む。
「報告! 隣国連合軍が国境を突破! ……ですが、**『白銀の騎士団』**によって瞬く間に壊滅させられました!」
「白銀の騎士団だと? 我が国にそんな部隊はないぞ!」
エドワードが声を荒らげる。
「彼らを率いるのは……この国を追放された、アルフレッド様です!」
運命の再会
会場の扉が跳ね上がるように開いた。
現れたのは、かつての弱々しい面影など微塵もない、圧倒的な魔力を身に纏った僕――アルフレッドだった。
辺境での死闘の中で、僕の「低い魔力」は、実は「魔力を極限まで圧縮して貯蔵する」という稀有な体質ゆえのものだと判明したのだ。今や僕は、大陸最強の魔導師であり、隣国の窮地を救ったことで「聖帝」の称号を贈られていた。
「アルフレッド様……!?」
リリアーヌが、縋るような瞳で僕を見る。エドワードは腰を抜かしていた。
「久しぶりだね、兄上。それから……リリアーヌ様」
「ああ、アルフレッド! 良かった、助けに来てくれたのね! エドワード様ったら、もう無能で困っていたの。私、本当はずっと貴方のことを――」
「寄らないでくれ。汚れる」
僕の冷徹な声に、リリアーヌが凍りつく。
「僕は、僕を信じてついてきてくれた部下たちと、僕を受け入れてくれた隣国の民を守るために来た。この国を救うつもりはない。……もっとも、君たちが使い込んだ借金の肩代わりに、この王領は僕の管理下に置かせてもらうけどね」
結末:それぞれの場所
エドワードは廃嫡され、北方の鉱山送りとなった。
リリアーヌは、身に付けた宝石やドレスをすべて没収され、修道院での奉仕活動を命じられた。
「待って! 私は王妃になるはずだったのよ! アルフレッド、お願い、昔みたいに笑って!」
泣き叫ぶ彼女の声を背に、僕は一度も振り返らなかった。
かつて彼女が僕にしたように。
今の僕の隣には、辺境で共に戦い、僕を「無能」ではなく「一人の男」として愛してくれた、誇り高い女騎士が寄り添っているのだから。
ようやく少し、望む展開に近付いて来た……。




