デジタルと現実の愛、ウィルスに繋がれて(AI生成)
窓の外には、緊急事態宣言下特有の静寂が広がっていた。
高層マンションの一室で、僕――ハルトは画面の中のコードと格闘していた。プログラマーとしての僕の仕事は、新型の**コンピューターウィルス「シトラス」**のワクチンを作成することだ。このウィルスは、感染するとPCのデータを人質に取るだけでなく、ウェブカメラを通じてユーザーの表情を解析し、絶望した瞬間にハードドライブを破壊するという悪趣味な代物だった。
そして、現実の世界でも、僕は「本物のウィルス」に隔離されていた。
☆画面越しの境界線
「ハルトくん、またそんな顔して。眉間にシワ寄ってるよ」
ディスプレイの端に映る小さなウィンドウ。そこにいるのは、恋人のミサキだ。彼女は現在、市の隔離施設で療養している。数日前、流行中の新型感染症の陽性判定が出たのだ。
「仕事なんだ。このウィルスを殺さないと、多くの人が困る」
「ふふ、かっこいいね。デジタルな世界のお医者さんだ」
ミサキは少し顔色が悪いものの、無理に笑ってみせた。彼女の背後には、殺風景な白い壁。僕らの間には、光ファイバーという名の神経系と、何百キロという物理的な距離、そして「感染」という見えない壁が立ちはだかっていた。
☆二つのウィルス
作業を進めるうちに、僕は奇妙な感覚に陥った。
「シトラス」のソースコードを解析すればするほど、それが生物学的なウィルスの振る舞いに似ていることに気づいたからだ。
自己複製: 健全な細胞に入り込み、自らのコピーを増殖させる。
潜伏期間: 一定期間は牙を剥かず、システムの中に深く浸透する。
変異: セキュリティソフト(免疫)を逃れるために、自らのコードを書き換える。
「ミサキ、ウィルスってさ、本質的には『繋がりたい』っていう欲求の塊なんだと思う」
「えっ、どういうこと?」
「相手がいないと自分を増やせない。独りじゃ生きられないんだ。手段は最悪だけど、ある意味で究極の依存だよ」
僕の言葉に、ミサキは少しだけ寂しそうに微笑んだ。
「じゃあ、今の私たちも、ある意味ウィルスに繋げられてるのかもね。こうしてビデオ通話してるのも、外に出られないからだし」
☆感染する愛
その夜、事態は急変した。
「シトラス」が僕のPCに侵入した。ファイアウォールを突き破り、画面が赤く点滅する。同時に、ミサキの体調も悪化し、彼女は苦しそうに呼吸を乱した。
「ハルトくん……苦しい、の……」
「ミサキ! 待ってろ、今……!」
キーボードを叩く指が震える。画面上では「シトラス」が僕のプライベートフォルダを食い荒らしている。そこには、ミサキとの思い出の写真、動画、交わしたメールのすべてがあった。
僕は究極の選択を迫られた。
ウィルスを駆除するためにシステムを初期化すれば、バックアップのない彼女との記録はすべて消える。しかし、何もしなければPCは壊れ、ミサキとの通信手段さえ失ってしまう。
「デジタルもアナログも、守りたいものは一つだ」
僕は、開発中の未完成なワクチンプログラムを自分自身に流し込んだ。それは「毒をもって毒を制す」手法。PCの全リソースを一点に集中させ、ウィルスの核を突く。
☆抗体の誕生
数分間の静寂の後、画面の赤光が消えた。
同時に、スマホにメッセージが届いた。ミサキからだった。
『熱が下がってきたみたい。お医者さんが、峠を越えたって』
画面の中、ミサキは眠りについていた。穏やかな寝顔。
僕のPCのデータは、半分以上が破損して消えてしまった。二人の思い出の写真は、ノイズ混じりの抽象画のようになってしまったけれど。
僕は、画面の中の彼女の頬にそっと触れた。冷たい液晶の感覚。
「繋がっているのは、コードやDNAじゃない。僕たちの意志だ」
ウィルスが細胞を書き換えるように、この経験は僕らを書き換えた。
次に会うとき、僕たちは以前の二人ではないだろう。お互いの痛みを知り、耐性を手に入れた、より強い「僕ら」になっているはずだ。




