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短編集  作者: 第八天龍王 七百七十七印麗院


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星屑の密談〜冷徹騎士団長と呪われし魔女の、正体隠匿交換日記〜

 薬草店『陽だまりの家』を営むエルセの下に、ある日、備え付けの魔法のポストの鍵を、かつて薬草で傷を治した小鳥がポストの中へと運んで来たのだった。

 エルセは試しに手紙を送ってみることにした。内容は、無難に夕飯のメニューの悩みを誰に届くとも知らず、以下のようなものだった。


『今日の夕飯、どうしましょう?

 キャベツが安かったから買ったけど、コレだけじゃ寂しいかな。

 お肉を入れたいけど、最近、騎士団の検閲が厳しくて売上が落ちてるから我慢しなきゃ。

 ああ、お腹が空いた。

 誰か、キャベツだけでお腹いっぱいになる魔法を教えて!

 P.S.ポストの中に変な鍵が落ちていたから、一応入れておきますね』


 騎士団の検閲と云うのは、魔法が禁忌とされ、騎士団が魔法使いを狩ると云う帝国ならではの悩みなのだ。実のところエルセは心優しくおっちょこちょいの魔女なのだった。

 何気無く魔法のポストに、小鳥が投函していった鍵も封入して投函するエルゼだったが、コレが意外なところに繋がっていたのだった。


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


「何だ、この手紙は!?」


 帝国第一騎士団長にして、呪われていると噂されている上、冷徹無比と恐れられる『魔法使い狩り団長』の氷の瞳のジークは、何処からか没収した魔法のポストに手紙が落ちていたのに気付いて、その内容にも驚いた。

 あり得ない。肉の無い食事は食事と呼べないだろう!と。


『……貴公が何者かは知らぬが、このポストに鍵を戻したのは英断だ。感謝する。

 しかし食事の件は見過ごせない。貴公は「キャベツだけでいい」と言っていたが、それは戦場であれば死を意味する。

 体をつくるのは常にタンパク質だ。肉を食え。

 売上が厳しいのなら、森の東側に自生する「銀猪(シルバーボア)」を狩るといい。

 奴らは夜、低木の下で眠る。首の左側が急所だ。

 魔法などという不確かなものに頼らず、まずは肉を調達しろ。


 ジ』


 勢いでそこまで書いて、本名を書こうとしたジークは、その軽率さに気付いて幼い頃の愛称を思い出し、最後に名前を『ジジ』と書いて仕上げた。

 そうしてポストの鍵を開けて投函し終え、はたと気付いた。自分は何をやっているのかと。そんなに(ヒマ)だったのか、否、そんな訳があるまい。こんなことをしている間にも、また魔法使いによる犠牲者が出ていたらと思うと──ブルブルと首を振り、ポストに確かに投函した手紙が消え去っているのを見届け、「やはり、魔法。怪しき技術よ!」と警戒を強くした。建前として、魔法は取り締まらなければならないものと思っていても、ジークは実のところ、可愛らしい動物や、心の込もった手料理に飢えている孤独な男なのだ。


 一方で返事を受け取ったエルセは。


「あらあら。『銀猪』にはそんな弱点があったの。

 お隣の猟師さんに、頼んでみようかしら?」


 そんな事を呟きながら、蒸しキャベツ鍋を摘んだ。どうであるにせよ、この鍋に肉を投入するには時間が掛かる。今夜の内に頼んでおいても、明日の夕餉(ゆうげ)迄の時間は掛かるだろう。


 エルセは早速返事を書いた。


『ジジさん、アドバイスありがとうございます。

 でも、私1人では猪なんて狩れません……。

 結局、キャベツは蒸し鍋にして食べました。

 ところでジジさんはおじいちゃんなんですか?』


 直ぐに返事は返って来た。20代後半のジジは。


『……おじいちゃんでは無い。何故、私が年寄り扱いされねばならぬのか……、理解に苦しむ。

 あと、猪が無理なら、せめて玉子を食え。

 それから、夜更かしは肌に悪いぞ。サッサと灯りを消して寝ろ』


 エルセは言われた通りに灯りを消して眠った。

 そしてとある日、お隣の猟師さんが前夜の内に仕留めて来た『銀猪』の肉を分けて貰って、猟師さんも「こんな弱点があったとは……」と感心していた。


 そんな折、『陽だまりの家』に騎士団の検閲が入った。幸いにして、魔女である証拠は見つからなかったものの、乱暴に扱われた割れたガラスで指先に切傷が一つ付いた。痛がるエルセに、手袋を外したジークが「手の汚れを拭け」とハンカチを手渡した。そして、その後にジークは「不審な行動は(つつし)め」と冷たく言い放って去ったのだった。去り際に、「貴様、顔色が悪いぞ。もっと栄養のあるものを食べろ」と、低く威圧するような声で言い捨ててから。


 次の日、朝には『陽だまりの家』の魔法のポストにジジからの手紙が入っていた。

 内容は要約すると。


『今日、傷ついた女性を見掛けたが何も出来なかった。私は無力だ』

 と、後悔を綴った内容だった。


 そこでエルセは、星の形に切り抜いた『星降るクッキー』を焼いて包み、『先日のお肉のお礼です』と、隣の猟師に頼んで肉を手に入れた話題も書き記して手紙を送った。


 実のところ、エルセの店は「かなり怪しい」と騎士団から睨まれていて、頻繁に抜き打ちで検閲が入るのだった。

 その日、ジークは部下が検閲しているのを見守りながら、大事そうに星形のクッキーを摘んでいた。


「……珍しいクッキーですね」


 震える声でエルセがジークに訊くと、ジークは耳まで真っ赤にして。


「……大切な友人から貰った、世界一美味い菓子だ。貴様にはやらん」


 そう断った。


 そして、ある日には、ジークがエルセの首筋に顔を寄せ、どうやら匂いを嗅いでいた。


「──な、何か?」


「──失礼。似ていると思って、な……」


 そう、エルセが手紙に()き込めている花のお香の匂いを、ジークはエルセの首筋から感じて確かめていたのだった。


 その日、エルセは手紙で『今日、気になる男性が店に来た』と記すと、ジジからは『その男はやめておけ』と嫉妬する内容の返事が返って来た。


 その次の検閲の時には、エルセはジークにお茶を淹れて差し出した。


「……任務中だ」


 ジークはそう断ったものの、茶碗からは手紙に焚き込められた花と同じ匂い。結局、「何も怪しいものは見つかりません!」との部下の報告を受けた後に、ジークはその冷めきったお茶を一気に飲んで立ち去った。


 ジークは花の匂いから花の正体を掴んで、押し花にして手紙に添えて贈った。


 そうして、『陽だまりの家』は遂に他の騎士団からも睨まれてしまう。この頃には、お互いに確信を持っていた。だが、確認する訳にもいかない。

 ジークは、その睨みを利かせて来た騎士団を牽制し、検閲と云うより、見守りに来始めた。


 文通を始めて一ヶ月。エルセは、顔も知らない『ジジさん』にだけは町の人にも言えない悩みを打ち明けるようになった。


『ジジさん。今日は店にとても怖い騎士さんが来ました。

 呪われていると噂の方で、皆から避けられているように見えるけれど……私には、その人の瞳がすごく寂しそうに見えるんです。

 私の家系も、変な魔力があるせいで「不吉だ」と遠ざけられてきました。

 誰かと手を繋ぐだけで幸せなのに、それが一番難しい……。

 ジジさんは寂しいと思ったことはありますか?』


 コレを受け取ったジークは、自室で凍りついた。

 『怖い騎士』とは、自分のことだと気付きながらも、彼女が自分の瞳に『寂しさ』を見ていたことに、凍てついた心が激しく揺さぶられる。


『……その騎士も、貴公と同じなのかも知れん。

 手を繋げぬなら、同じ月を見れば良い。

 私も……貴公の手紙が届く夜は、孤独では無いと感じている。

 夜道には気を付けろ。貴公の店を狙う不届き者が居ないか、私が……祈っておく』

 『私が』の後に『部下に命じて』と書きかけて消した。

 その手紙が届いてから、『陽だまりの家』に頻繁にジークが訪れるようになった。

 何か取り締まる訳でもなく、ただ──無言で最高級の干し肉をカウンターに置いては。


「……」

「えっ?!あの、これは?!」

「……落ちてた。食え。死ぬぞ」

 落ちていたは流石に法螺を吹いていた。


(やっぱり怖い!でも、この『食え』ってフレーズ、何処かで……!?)


 干し肉の(くだり)は、何度も繰り返された。

 ある日、エルセは意を決して、お礼に特製クッキーをポストに投じた。


『ジジさん、明日、広場の噴水の前で会いませんか?

 赤いリボンを籠に結んで待っています。

 もしもおじいちゃんで歩くのが大変なら、私が伺います!』


 ジークは決意した。ジジと云う情けない偽名を謝罪し、正体を明かして彼女を護ると。


 翌日、広場の噴水前。

 エルセは赤いリボンを籠に結んで待っていた。

 そこへ、フル装備の鎧で兜は無く、緊張で顔を真っ赤にしたジークが歩み寄った。

 エルセはガクガクと震えながら、何とか声を絞り出した。


「き、騎士団長様……!?どどど、どうしてここに?

 私、何か罪を?」


 直立不動で、ジークは返答する。


「……エルセ殿、済まなかった。私が……私があの『ジジ』だ」


 ここで、最大の勘違いが生じた。

 エルセは、騎士団長が自分を逮捕しに来たものだと誤解。そして、彼の『ジジ』と云う言葉を飼っている警察犬か何かの名前だと思い込んだ。


「ジジ……?ああ!そのおじいちゃん冒険者さんが、騎士団長様の名前を(かた)って、勝手にお肉を送り付けていたんですね!?

 団長様、その人を捕まえないであげて下さい!悪い人じゃないんです!ただの筋肉マニアのおじいちゃんなんです!」


 エルセは混乱した頭の中で、そう情報を整理して言い放った。


「……」


 ジークは、絶句する他に無かった。

 そこへ、訳知りの副団長が現れて、ジークに向かってこう言った。


「おーい、団長。いや、『ジジ』さん?早くそのクッキー、おじいちゃんとして受け取ってあげなよ」


 ジークは真っ白になって、エルセからクッキーの袋をひったくるように受け取って、怒号と共に照れを露わにした。


「私は……おじいちゃんでは無い!」


 叫び声を上げて走り去るジーク。


 残されたエルセは──


「やっぱり騎士団長様は怖い……。でも、ジジさんを守ってくれたのかしら……?」


 ──と、斜め上の感動に目を輝かせるのだった。


 ジークが、『陽だまりの家』に誤解を解きに押し掛けるまで、あと3日。

 スミマセン、『AI』にプロットを立てて貰っていたら、複数の返答を整理して書いた結果、こうなりました。

 恋愛モノを苦手意識で避けていたら、腕前上がらないなと思って、練習のつもりで書いてみました。

 どことなく違和感を感じたら、一度のプロットで作品の展開を短編でも整理出来なかった為と思われます。

 恋愛モノが得意な人の作品を、もうちょっと読み込んだ方が良いのかなぁ……?

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