4.セインとベル
「はぁー、やれるかな……」
あの後、依頼を受ける気になったら冒険者ギルドに連絡をしてくれと言って帰っていくエレインさんを見送って俺は自室で溜息をついていた。
まさかエレインさんの依頼がユニークスキルの取引だなんて……しかも、Sランク冒険者の超レアスキル『聖剣の担い手』だ。一応冒険者ギルドが把握しているスキルは全部暗記しているので効果はわかっている。
聖剣というのは強力な力を持つため、封印されていたり、武器が持ち主にふさわしいかを判断する場合がある。有名なのはこの国の王位継承者のみが抜くことはできるカリバーンなどだろう。カリバーンは岩に封印されており、王にふさわしいものでないと抜けないそうだ。現にこの国では何百年も抜けるものはおらず、今この国を統治している人間も王代理の代理ということで統治しているのである。
彼女のスキルはそんな聖剣を問答無用で使用可能にするスキルだ。そんなチートスキルを売買するのだ。どうせ、権力者が関わっているのだろう。万が一失敗したらどうしようと怖くもなる。俺が悩んでいるとコンコンっとノックの音が響いた。この時間はベルだろう。
「どうしたんだ? こんな時間に男の部屋に来るなんて襲われても文句言えないぜ」
「指一本でも触れたら追い出すわよ、それにあんたに襲うような度胸はないでしょう? そんな事はいいから早く開けてよね」
「はいはい、すいませんでした」
容赦ない言葉に苦笑しながら扉を開けると、湯気が立っている小さい鍋を抱えたベルが不機嫌そうな顔をして立っていた。何だろうと思って鍋を覗き込むと俺の大好物であるゴロゴロと肉の入ったビーフシチューが香ばしい匂いを醸し出し、俺の空腹を刺激する。
「ベル、これは……?」
「夜食よ。あんた何か思い詰めた顔してたじゃない。商売に関する事だろうから何があったかは聞かないけどさ、好物でも食べて、元気出しなさいな」
「お前本当にいいやつだよなぁぁぁぁ!!」
「勘違いしないで!! あんたがへこんでると宿屋の雰囲気が暗くなるのよ!!」
俺がベルにお礼を言うと悪態と共にそっぽを向かれた。でも、その顔が少し嬉しそうに笑っていたのを俺は知っている。俺が元気出して喜んでくれているんだろうな。そんな彼女の存在を俺はとても嬉しく思う。
俺とベルは一緒に座ってビーフシチューを食べ始める。とろとろの肉とうまみのつまったシチューが俺の心を癒す。
「あのさ、ちょっとでかい依頼が回ってきたんだよ……でも、あまりに話がでかすぎてさ、自分でもできるか不安なんだよな……」
「あんたなら大丈夫でしょ。私はしってるもの、あんたが自分のスキルを研究して、みんなに効率のいいスキルを貸してパーティーをサポートしていたのを……そりゃあ、パーティーの連中の実力もあったでしょうけど、あんたが一生懸命頑張ったからBランクの最速のレコードホルダーになったのよ。それに……私は昔から知っているもの。あんたはなんだかんだやれる男だって。この世の誰よりも私が知ってるわ」
「ベル、ありがとう……まあ、そのパーティーには追放されたけどな」
「そういやそうね、ムカムカしてきたわ」
凶悪な顔になるベルに俺は苦笑しながらも感謝する。パーティーの連中は全然評価してくれなかったけれど、彼女は俺の頑張りを認めてくれていることが嬉しい。俺の頑張りを見てくれている人がいて、俺ならできると言ってくれる人がいるのが嬉しいのだ。
「まあ、あれよ、それに、失敗したら失敗したで私が雇ってあげるから安心しなさいな」
「ああ、ありがとう。成功したらさ、お祝いに酒でも飲もうぜ」
そうして俺たちは二人でいつものように談笑しながらビーフシチューを食べるのであった。俺は彼女の作ってくれたビーフシチューを食べながら決める。決めた、明日冒険者ギルドへ行こうと。
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