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白い手のガレスちゃん4

「あー、ほら、追放なんてよくあるって。俺もこの間されちゃったしさ。ほら、料理あるけど食べる。全部エレインさんのおごりだし遠慮しなくていいぜ」

「いえ、大丈夫です……気を遣ってくださってありがとうございます」



 あの後、俺はテーブルで一人悲しそうな顔をして、座っているガレスちゃんを放っておくことはできずに声をかけ、酔っぱらっているエレインさんを運んで個室へと移動したのだ。

 自分が追放されたこともあり、声をかけてしまったが、余計なお世話ではなかっただろうか、と思いながら、弱々しい笑みを浮かべるガレスちゃんを見て思う。

 俺の時なんて恥ずかしくなって、声をかけてきてくれたエレインさんにお礼も言わないで、とびでてきてしまったんだが、本当にできた子だよな。だが……こんな子を追放するなんて許せない!! などと思いはしない。結局、冒険者が性格よりも実力を重視するからな。だからこそモードレットやザイン達も冒険者としてやっていけるのだ。どちらに問題はあったかは詳しい事情を聞いてから判断すべきだろう。



「それで……何があったんだ? 見たところあの二人も新人冒険者だろ? 最近パーティーを組んだって言ってたよな」

「はい……あの二人とは初心者講習の同期だったんです。その時に臨時でパーティーを組んでそのまま冒険にも問題なければパーティーを組み続けようって話だったんですが、私だけ何のスキルも身につかなかったんです……」

「なるほど……」



 初心者講習というのは冒険者登録をして最初に自分がどの技能に適しているかを学ぶ講習である。まずは基礎的な座学を学び、その後、魔術や法術、剣や弓、槍などの一通りの研修を受けて冒険者としての自分の方向性を見極めるのだ。大抵の人間は俺が持っている初級剣術などの基礎的なコモンスキルを手に入れるのだが、ガレスちゃんは全部だめだったようだ。まあ、気長にやっていれば何らかのスキルは手に入るだろうが、彼女を追放した二人も、何らかの理由があって冒険者になったのだ。講習で少し仲良くなった程度の彼女がスキルを覚えるかもわからないのに時間を割くことはできなかったのだろう。



「私は冒険者に向いていないかもしれないです……でも、諦めたくはないんです。でも、私は冒険者にならなきゃいけないんです」

「そうか、絶対冒険者になりたいなにかがあるんだな……」



 俺が何かを言う前に彼女はそう言った。その目はこれまで宿屋で見たことのないほど硬い意志を秘めていた。おそらく、彼女は何人にも冒険者は諦めたほうがいいんじゃないかと言われてきたのではないだろうか? それでも曲げないのだ。俺はそんな彼女をかっこよく思ってしまった。そして俺には、彼女を助ける方法がある。だけど、ここで安易にスキルを売って、冒険者になったら彼女の命が危険にさらされることだってあるのだ。俺にその責任を負う事はできないのだ……



「それでも選ぶのは彼女だ。セイン君が気に病むことはないよ。武器屋が売った剣で誰かを殺すか、守るかなんて考えはしないだろう?」

「エレインさん!?」



 俺が驚いて振り向くと、エレインさんが優しい笑みを浮かべて俺の後押しをしてくれた。くっそ、ちょっとかっこいいと思ってしまったじゃないか。さっきまで酔っぱらって寝ていたのに……だけど、その一言に勇気づけられたのは事実だ。俺はなら彼女を助ける事ができるのだ。

 会話についてこれずきょとんとしているガレスちゃんを、まっすぐ見て俺は言った。



「ガレスちゃんが望むなら俺は君にスキルを売る事ができるぞ、冒険者として必要なスキルをね。その代わり結構高い買い物だぜ」

「本当ですか」



 彼女は俺の言葉に信じられないとばかりに目を見開いて……そして、強い意志を持って「お願いします」といった。

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[良い点] もう少し・・・ もう少しで先が・・・ 結構、分量ありましたね、あれ(笑)
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