3章 公園
3章 公園
しばらく歩くと程なくして公園が見えて来た。
公園の入り口前には大きな樹がそびえたっている。
私が子供の頃にはすでに立派な大きさの樹だった。
樹齢は何年くらいたっているのかは不明だが、大きさの割によく手入れがされており鬱蒼と茂るのではなく爽やかさを持った樹だった。
遠くからでも見えるその樹が公園の入り口の目印になっていた。
その樹のそばで子供が泣いている。
初めは樹にばかり注目をしていたために視界に入っていなかったが、徐々に近づくにつれ様子が気になる。
4、5歳くらいの男の子だ。
樹を見ると赤いボールが樹の高い所に引っかかっていた。
これは大人でも取る事は出来ないだろう。
おそらく遊んでいるうちに樹に引っ掛けてしまったのだろう。
代わりと言ってはなんだが子供に家で見つけたフリスビーを差し出した。
「泣いてないで、これで遊んでおいで」
突然、声をかけられた子供は慌ててこちらに振り向く。
驚いたような、恐怖を感じるような怪訝な顔をこちらに向ける。
もう一度声をかける。
「フリスビーをあげるから、これで遊んでおいで」
意味がわかったのか、はじける笑顔で尋ねてくる。
「おじさん、いいの?」
「かまわないよ」
「おじさん、ありがとう!」
フリスビーを受け取り、嬉しそうに手の中のものを眺めている。
まあ、今の子供はこんなものであまり遊ばないから珍しいのだろう。
大人が一人で遊ぶより子供に使ってもらう方がフリスビーも喜ぶ。
一瞬、何かが記憶の端をよぎったが気のせいだろう。
良いことをしたな。
ひとりで満足感に浸っていると、目の前で男の子がガサガサとポケットを漁る。
何かを出そうとしている様だが色々なものを入れているのか中々出せない。
もういいよ、とは言い出せず何かが出てくるのを気長に待つ。
「コレあげる」
差し出したのはお守りだった。
思わず受け取ってしまったが、残念ながら特に要らない。
とりあえず感謝の気持ちなので受け取っておく。
男の子はありがとうとお礼を言う間も無く走り去ってしまった。
お守りはどの様なものかまじまじと眺めてみる。
あまり見たことが無いものだがお土産屋で売っている安物ではない。
「安産祈願」や「交通安全」なら笑い話だが、
気軽に扱うには気が引けてしまうのでポケットの奥にしまい込んだ。