表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
淺顔  作者: kirinboshi
2/8

1章 自宅

1章 自宅


工場勤務は朝が早い上に夜は遅い。

その上通勤は電車を乗り継ぎ2時間以上かかる。


残業代は雀の涙。

うちの会社ブラックなのかな?

けっこう、重労働だし……。


人とあまり話さなくても良いという一点のメリットだけで働き続けている。


ようやく取れた休日を堪能しながら、タバコから立ち上る煙に思いをはせる。

タバコにほのかな甘さを感じつつ、同僚のことを思い浮かべる。

あの同僚は働きすぎておかしくなってしまったのかな?

不幸な事故に見舞われてしまった事は残念だった。


同僚は休憩時間に話せる数少ない人間だった。

自分も彼も家族がおらず、似たような境遇にシンパシーを感じていたのかも知れない。

今でも気になる存在だ。


「!」


その時、思わず何かの気配を感じて飛び起きた。

視線を感じ、気配の先を確認してみるが何もない。


タバコの煙もさっきと変わらず部屋を漂っている。

注意深くあたりを見回すが、いつもと変わらない自分の部屋が映る。


自分も働き過ぎだろうか?


誰に問う訳でなく自問自答してみる。


ちょっとした恐怖を感じ、気分転換に何かしようと思い立った。

今日は時間もあるし、ちょっと掃除でもしてみようか。

もう半年もしていない。

一人暮らしであまり家にもおらず、汚れていないとはいえ埃はたまる。


誰かこの家に訪ねてくる事でもあれば掃除をしているのかもしれない。

だが、長い間、誰も来ることもなかったし、今後もないだろう。


いつの頃からだったか、友人も恋人も家族も作ることなく生きてきてしまった。

とにかく何もかもおっくうになってしまったのだ。


つれづれと思いつつ、タバコの火を消し重い体を引き起こして隣の部屋に向かった。


そういえば、押し入れを長い間、開けてないな……。              


押し入れを開ける。

煩雑に詰まった様々な物が崩れ落ちる。


「やっぱり開けなきゃ良かったな」


床に散らばった物を見てみると懐かしいものばかりだが、見覚えのない金属が見えた。

押し入れからバールのような物が見つかった。

「バール……かな?」

その物体はバールに違いなかった。


自分で入れた記憶はないが、吸い寄せられるように手に取る。

何故か安心感が広がり、わずかに心が軽くなったように思う。


少し散歩に行ってみようかな?

散らかった物をそそくさと押し入れに放り込み出かける準備を始めた。



出かける準備をしていると、長年玄関にほったらかしにしてあったフリスビーが目に留まる。

特に考えて行動したわけではなかったが、思わず手にとって眺めてみる。

懐かしい子供の頃のことが脳裏によぎったが、すぐに掻き消えてしまった。


「そうだ!公園に行ってやってみようか。」


馬鹿な考えかもしれないが、不思議とやってみたい衝動にかられる。

急いで準備し、フリスビーを片手にでかけた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ