緊急事態
俺は時計を見る。まだ四時だ。って言うかあの罠に結局引っ掛かったんだ。
「その、すまん。結局どうにもならなかった」
「まあ、そういうときもありますからしょうがないですよ。今日は円のところにいって慰めてもらったらどうですか?」
「そうするよ、ありがとう」
「じゃあ自分は意見の回収してきます」
「えっ?逃げなくて大丈夫なのか?」
「まだ時間が多少あるので回収して、残りの仕事は家でやります」
「あのっ」
全員が声のした方を向く。手を挙げて声を発したのは遠藤だった。
「その、長岡先輩はずっと仕事を持ち帰ったり一人で済ませたりしているので、あのー、こういう緊急時くらいは任せてもらえませんか?」
「……綺堂が来るのが緊急事態扱い」
萎れた会長がボソボソとなにかを発した。
「んじゃ俺も手伝うわ」
「いいんですか?高柳先輩」
「あー、最近長岡を頼りすぎて遊びすぎたからな。たまにこうして恩返しみたいなのしないと仕事変わってくれなくなるだろ?」
「んー、ちょっと理由がおかしい気がしましたが、満場一致ですね」
「俺はー?」
「会長は今、戦力外なのでノーカウントです」
「慰めてもらおう」
俺抜きで勝手に話が進んでいく。
「ってことで今日は先輩が休む日です。はいはい、鞄もって」
「自分、仕事やれますよ?」
「やれます、やれませんの問題じゃない。今日、お前にはやらせない」
「ってことなのでさよーならー」
俺の前でピチッとドアが閉まる。追い出された?あんなに頑張っていたのに?
俺はとてつもない焦燥感にかられた。もしかして俺、学校での居場所を失った?
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