禁断の装備★
最後の方にナナセのイラストあります。
私は朝目覚めると、身支度を整える前に鏡で自分の姿を確認した。
肌は白く綺麗で、髪は青みがかったストレートの鎖骨位まである黒髪。
体つきは平均より若干小柄で、胸は残念レベルのいわゆるチッパイだ。
ピンクブロンドではない上チッパイなのは、多分金髪ダイナマイトバディのフランソワ様との対比ではないかと思われる。
ピンクブロンドはともかくとして、乳ぐらいでかくしてくれても罰は当たらんだろうと思う。全くもって転生した旨味がない。(前世でも乳は控えめだった)
乳の事はひとまず置いといて、最も重要なのは目を隠す程の長い前髪。
うん!コレ明らかにモブ系主人公(自己投影型)だ!!
この前髪はどことなくロックっぽいせいか嫌いじゃなかった現世の私だが、まずはヒロイン設定に対する些細な抵抗として髪型を変えてみることにする。
前髪を上げた私の顔————それは……アーモンド型の形のいいブルーのお目目ではあり、全体として整ってはいるが、なんというか、小ざっぱりした顔である。決して美女ではない。
これはあれだ!化粧で化けるタイプだ!!流石モブ系主人公!!
ならば化粧など最低限のレベルしかしない……!!
そう心の中で決意を固めた。鏡の中の私がニヤリと微笑んでいる。
前世でも地味JKだった私だ。そもそも化粧技術などさして持ち合わせていない。ごくごく稀に親の許しを得てライブに行く際も、モッシュするタイプの私は汗だくでもみくちゃになること前提なので化粧などしなかった。
昨日衝撃の事実を知った私は、ただただ流されるしかなかったこの学園生活の始まりに意味を見出していた。
そう、人生には目的が必要なのだ。
私は机から徐ろに鋏を取り出し、いい感じにザンバラになるよう前髪を切った。
前世で前髪を切ることには慣れていた。縦に鋏を入れるのがコツだ。
前世スキルがようやく発動だ!……地味だな!!
「テッテレー♪ナナセはモブ主人公男爵令嬢仕様の前髪から令嬢らしからぬロックな仕様の前髪へと進化した!!」
長さはほぼほぼそのままに、実にいい感じにザンバラに切れた。
某バンドのヴォーカルさん(男性)を意識した素敵前髪に仕上がっている。
前髪に合わせて顔周りにもシャギーを入れてみた。
どうだこの令嬢じゃない感!!
デフォがハーフアップなので、後ろ髪は括ることにした。
飾りもへったくれもないただの黒ゴムで、下気味に髪をいい加減にまとめる。
ポニーテールやツインテールなどもってのほかだ。
狙いどころはモテではない。非モテなのだ。
余談ではあるが、前世でライブに行った際後ろの人に「鼻に毛が入る」と呟かれてから、私はポニテにしたことがない。現世でもしたことがないのは、きっと無意識にそれを気にしていたのだろう。
「あとは……」
私はクローゼットにチラリと目をやった。
そこには両親が用意してくれた服や下着の他に、おそらく標準装備として用意してあったのであろう学校の制服が数種類入っている。(夏服、冬服と多分式典用だと思われる制服や、コート類)
入寮当初からそれらはあった。
当時から気になっていたのだが、明らかに異質な装備が一点それらに混ざっていた。
————小豆色の学校ジャージ。
私はゴクリと喉を鳴らし、震える手でその禁断の装備に手を出した。
(いや、コレを着ていく訳じゃないのよ?ちょっとホラ試しに着てみるだけ!)
それを手にした私は何故か自分に言い訳をしながら着替え出す。
「テッテレー♪」
衝撃の事実とその興奮から眠れず、寝不足からハイになっていた私は着替え終わると効果音をつけながら鏡の前に躍り出た。
「!!」
その姿は紛れもなく田舎の中学生だった。
「————っ!!」
私はなんだか自分でもよくわからない感情に身悶え、小さくガッツポーズを取るような形で身体を前屈みにして俯き、プルプルと全身を震わせた。
それはなんというか……愉悦的なものだったように思う。
「……イイ。これで登校しよう」
私の中で何かが弾けた瞬間だった。
モブ主人公・ナナセ↑
閲覧ありがとうございます。
モブ主人公時のナナセは前髪をちゃんとセットしている(少し巻いて左に流している)為あの長さ(短く見える)なんですよ?短く描きすぎた訳じゃないですよ?
ジャージナナセ、差し替えました。
そのうち色塗ります。