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ビッチヒロインを回避する方法

(いやいや絶望するにはまだ早いわ……)


 私はノートに『ビッチヒロインを回避するためには』と大きめの字で題を書く。日本語で。

 そして現状を振り返ってみる。


 唐突に学校に入学させられてからまだ一ヶ月。

 嫌々勉強を教わっていた私ではあるが、落ちこぼれすぎて進級できないというのもみっともないので攻略対象のイケメン共に素直に勉強を教わっている。

 しかし幸いなことに心は全く開いていない。むしろ閉じている。

 勉強に関すること以外、マトモに会話すらしていない。


 なにぶん特権階級におけるマナーというものがわからない私だ。下手なことを口にして不敬に問われてはたまったもんじゃない。


 男爵令嬢になり、貴族学校なんぞに通う(しかも寮暮らしときた)こと自体が寝耳に水だったわけで…訳のわからないままこんなことになった流れ自体に不満バリバリな私は不貞腐れてもいた。


 そういうところが端々から感じられるのであろう、攻略対象の皆様の好感度はむしろ低いと思われる。


(よっしゃぁぁ!むしろこれ大正解じゃん!?)


 ゲームの通り会話分岐でストーリーや好感度が変わるとしても、先程も述べた通り、現段階で彼等と私はマトモに会話をしていないのだ。(大事なことなので2回言いましたよ!)

 私の発した言葉を思い出してみても「よろしくお願いします」「はぁ」「すみません」「そっすか」「ここわかりません」「ありがとうございます」ぐらいしかバリエーションが無い程だ。


「よーしよーし!これなら生き残れるぞぉ~!!」


 まだ学園生活は始まったばかりだ。俄然やる気が出てきたぞ!


 しかし皆と仲良くならないのは良い事ではあるが、ビッチヒロインエンドを避けるには念の為『推しを作っておいた方がいいんじゃないかな』とは思った。


 まだそれぞれ四回しか会っていないが、ゲームを元にわかる限りで攻略対象の情報をまとめてみた。


 第二王子……ダンス・音楽・社交マナーなどを教えてくれる。俺様系チャラ男。

 候爵令息……歴史等を教えてくれる。宰相候補。真面目な優等生。

 第二王子付き騎士……馬術や武術を教えてくれる。明るい脳筋。

 子爵令息……数学や経済を教えてくれる。大商人の息子。スマートな腹黒。

 伯爵令息……薬学を教えてくれる。朴訥で優しい。眼鏡キャラ。

 王宮魔道士弟子……魔法学を教えてくれる。寡黙でミステリアス。


 悪役令嬢……第二王子の婚約者候補筆頭。


 実はまだ名前がうろ覚えなほど、イケメンであるはずの彼らに対して私は興味がなかった。現状に対する不満やお貴族様への緊張の方が勝っていたからだろう。


 そんな彼らに関して推しもへったくれもないので消去法で決めることにする。


 第一に念頭に置くべきなのはやはりゲーム内で悪役令嬢だったフランソワ様の存在だろう。


 ――――第二王子の婚約者候補筆頭。


 おそらくメインルートであるが、第二王子との接触は極力避けたい。

 なので王子は勿論、取り巻き的立ち位置である候爵令息と側近騎士の二人もパスだ。

 確か癖のないこの2人の攻略難易度は易しめであった気がするが、逆にそれは怖いとも言える。つるんでいる三人に粉をかけていることになりかねない。

 そんなことになったらビッチ街道まっしぐらだ。


「となると子爵令息、伯爵令息、王宮魔導士弟子の三択か……」


 この世界は『乙女ゲームであって乙女ゲームではない』世界。つまりリアル。


 身の安全さえ確保できれば攻略がうまくいかないのは構わないけれど、逆にうまくいっちゃったら先の事を心配しなければならない。


 私の立場は元平民の男爵令嬢だ。


 爵位的には子爵令息が一番いいような気がするが、彼のお家は大きな商家だという……しかも彼は私の苦手な腹黒キャラときた。


「いやー、ムリ無理、パスだわー」


 推しは二択に絞られた。


(王宮魔導師ってどんなポジションよ?)


 魔導師は数少なく、選ばれしエリートであることは14年間この世界で生きてきた私も知ってはいるが、なにぶん平民育ちなので今ひとつピンとこない。

 王宮で使われてるってことはエリート中のエリートなのかな~とは漠然と思うけれど。


 勿論伯爵令息もそれはそれで不安である。


 結局のところ皆不安ではあるのだが、単独行動を好む伯爵令息と魔導師弟子はまだマシな気がした。


 ただしこの二人に関しては不安な要素が別にあった。


 面倒臭くなって放置してしまったこの乙女ゲームだが、それぞれのエンディングはちょっと気になったので、グー●ル先生に教えてもらうことにした前世の私。

 朧げに残っているその記憶では、確かどちらかはヤンデレだったように思う。


 監禁エンドとか絶対嫌だ。


「……よし!推しは保留!!」


 平民落ちしたとしても役立ちそうな勉強なので、教えてもらって損はない。取り敢えずこの二人の勉強には他より力を入れることにしよう。



 推し云々はともかくとして……

 私が最も攻略せねばならない相手は最初から決定している。


『悪役令嬢 フランソワーズ・セルトガ公爵令嬢』


 彼女と仲良くなること……


 攻略対象者と仲良くなるよりも、それが一番手っ取り早く安全な気がした。

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