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第四話 質問の多い料理店

山道で迷った長谷川が立ち寄ったレストランで……

 久しぶりの休日に山道をドライブしていた長谷川は、そろそろ昼時なのに食事ができる場所が見つからずあせっていた。焦って知らない道に入り込み、余計に人里離れた場所に迷い込んでしまったようだ。

 ようやくレストランらしき建物を見つけ、ホッとして車を止めた。古びた木造の建物で、看板には『本格西洋料理レストラン・ワイルドキャット』と書いてあった。もっとも、この山中にあるような店だから、レストランという言葉が気恥ずかしくなるような、さびれた感じの料理店である。

 とりあえず中に入ってみると、ランチタイムを過ぎたためか、店内には他の客は一人もいない。無愛想なウエイトレスに窓際の席に案内され、大きなメニューを渡された。そのまま立ち去ろうとするウエイトレスを、長谷川は呼び止めた。

「もう、何にするか決めてるんで、注文してもいいかな?」

 ウエイトレスは何故か、一回深呼吸のような仕草をした。

「はい、うけたまわります」

「表にサンプルが出てた、シェフのおすすめハンバーグランチってやつを頼む」

 ウエイトレスは宙をにらみ、記憶を呼び覚ますためか、二三度モゴモゴと口の中でつぶやいてからしゃべり始めた。

「かしこまりました。おすすめハンバーグランチは、スープ・サラダ・パン又はライス・デザート・ドリンク付きでございます」

「うん、それでいい。早く持ってきてくれ」

 ウエイトレスは長谷川の言葉が耳に入らなかったらしく、しゃべり続けた。

「それぞれお好みによって、数種類の中からお選びいただけるようになっております。まず、スープですが、コンソメスープ・オニオングラタンスープ・パスタ入りトマトスープ・コーンクリームスープ・パンプキンスープ・野菜たっぷり田舎風スープがございます。どれになさいますか?」

「何でもいいよ。とにかく、腹ペコなんだ」

 ウエイトレスの眉間みけんに縦ジワが入った。

「ひとつ、お選びください」

「うーん、じゃあ、コンソメでいいよ」

「サラダのドレッシングですが、フレンチ・サウザンアイランド・シーザー・和風ゆずポン酢ジュレ・明太子入りマヨネーズとございますが」

「ええと、まあ、フレンチかな」

「パンとライスはどちらにされますか?」

「パンで」

「パンには、バゲット・チーズ・胡桃くるみ・ハードロール・ソフトロール・ライ麦パン・雑穀パンがございます」

「ああ、普通のフランスパンでいいよ」

「それでは、バゲットで。バター・マーガリン・オリーブオイルなどはいかがでしょう?」

「バターだな」

「メインのハンバーグですが、濃厚ドミグラスソースハンバーグ・チーズハンバーグ・ペッパーハンバーグ・和風おろしハンバーグのどれにいたしましょう?」

「うーん、濃厚ドミなんとかでいいや」

「大きさは150グラム、200グラム、250グラム、特大400グラムとありますが」

「そうだなあ、200かな」

「付け合せのポテトですが、フレンチフライ・マッシュポテト・ブラウンオニオンポテト・ジャーマンポテトがございますが」

「ポテトなんかどれでもいいだろう。え、だめ。じゃ、フライドポテトだ」

「では、フレンチフライで。デザートは、ティラミス・マンゴープリン・チョコレートムース・ヨーグルトアイス・抹茶アイス・バニラアイスのどれがお好みでしょうか?」

「もう、もう、アイス、バニラアイスでいいよ」

「最後にドリンクですが、ぶどう果汁100パーセントジュース、ブレンドコーヒー、アメリカンコーヒー、エスプレッソ・カプチーノ・カフェオレ・ダージリンティー・アールグレイティー・ハーブティーがございます。なお、ハーブティーは、ローズヒップ、カモミール、レモングラス、ミントからお選びください」

「あー、うー、えー、申し訳ないけど、キャンセルしてくれないか」

「はい、どこかチョイスをご変更ですね?」

 長谷川はため息をついた。

「いや、そうじゃない。聞いてるだけで、お腹がいっぱいになった。もう、帰るよ。道を教えて、あ、いい、いい、自分で調べるから」

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