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Ep.VIII 惑星要塞戦

 Ep.VIII 惑星要塞戦


「敵艦隊確認!

 総隻数三十!

 内、雷撃艦十五隻、超撃艦五隻、生物艦五隻、航宙艦五隻です!」

 全く・・・・・・

 機動要塞を撃退した後、一日たりとも休めた日はない。

 最近は星で一日過ごすことがないため時刻がどうなっているのかは忘れたが。

「防御艦を前に出して艦隊への攻撃を防ぎ、航宙機と生体艦を先に出させろ。

 槍を優先的に撃墜し、航宙機、生体艦退避後、宙空衝撃弾頭ミサイルを超撃艦に放ち、敵艦隊を一掃する。

 第四護衛艦は弾頭ミサイルを予め装填しておけ」

「了解! 各機――」

 疲れている。

 艦隊全体が。

 撤退したいのはやまやまだが、こんなところで退いてはだめだ。

 指揮官なんて仕事はいつ来るかわかったもんじゃないし、まだ戦艦自体は損傷も大して多くはない。

 艦隊を奮い立たせるような言葉でも言ってみたいものだが、そんな賢さは俺にはない。

「残る宙空弾頭ミサイルの数は」

「残り六発、五発は本艦に格納中、一発は護衛艦に装填中です!」

 三十六発あった弾頭ミサイルも今ではこれだけか。

 中枢都市を丸ごと消し去るぐらいはできるか。

 ・・・艦隊が持てば、の話だが。


 僕たちの部隊は、戦闘続きで少し疲れはあったけど、他の部隊や搭乗員から比べればかなり元気な方だった。

「いよいよ敵さんも三十隻も出してきたのね」

「合計すると八十隻以上もほぼ無傷で撃沈してるからね。

 そろそろ本気を出しても悪くないと思っただけだと思うよ」

 球状感応センサーに指を置く。

「カタパルト発射まで、3、2、1…はっか……」

 体が自由になると、もう一度座りなおす。

「諸君らに、迅速かつ最大の戦闘を期待する!

 全部隊、続け!」

「「「了解!」」」


「敵艦が航宙機に対し、砲撃を開始しました!

 予測より、だいぶ離れています!」

 ここに来て狂ったのか?

 タイミングをもう少し読んでほしいものだ。

「艦隊全速前進!

 索敵される前に敵を射程範囲内に入れろ!」

「了解!

 艦隊、全速前進!」

 興奮しているのか、から元気が出てくる。

「航宙艦より、ジャシルタの発艦を確認!

 こちらに向かってきます!」

「生物艦より、槍の射出を確認!

 扇状に展開しています!」

「超撃艦のエネルギー収束を確認!」

 総攻撃か。

 臨むところだ。

「全艦速力減少!

 防御艦を外に扇状に展開!

 第三、第二護衛艦はジャシルタの迎撃、その他は槍の迎撃を最優先しろ!」

「了解!」

 艦隊が俺が指示したように広がっていく。

「超撃艦、来ます!」

 艦に若干の振動が伝わる。

「本艦の上後翼部先端損壊!

 航行可能レベル5です!」

 また、辛い思いをさせたか…くそ。

「生物艦の射出が完了したようです!

 射出された槍の本数は計四十七、内五本を迎撃です!」

「ジャシルタ八機、攻撃体勢に入りました!」

 他の艦が貫かれる。

「第五半生体艦撃沈!

 第三、第四主力戦艦、第一、第二護衛艦、第四駆逐艦居住ブロック、第三駆逐艦左翼二箇所損壊!

 第三駆逐艦は航行可能レベル3に低下!

 被害を受けた艦艇は、既に処置済みです!」

 一気に百五十人が死亡…か。

 だが、考えるのは後でいい。

「現在出現している槍、及びジャシルタの全機撃墜を確認!」

「退避命令を出せ!」

「了解!」

「敵惑星接近!

 残り600で射程圏内に入ります!」

 二連続で戦闘か。

 いや、こいつらはいわば囮か。

「各ヴァルキリー第二部隊は出撃準備!

 第一部隊の収容は後で行う!

 宙空衝撃弾頭ミサイル、発射!」

「了解!」

 ミサイルが発射されるのが視界に入った。

「惑星の詳細は!」

「地表温度約−135℃、大気はほぼありません!

 規模は火星の約五倍です!」

 直接攻撃による破壊は難しい。

 だが、大気がないなら……

「全主力戦艦、第一護衛艦、第一から第四防御艦、及び本艦を惑星より1MIまで後退!

 他の艦は惑星へとこのまま前進! 射程範囲ぎりぎりを保ちながら本艦を含む別働隊の護衛を行え!

 全主力戦艦は重力相互発生装置搭載弾を全砲門に装填!」

「了解!」

 いよいよこれを使うときが来たか。

 重力相互発生装置搭載弾。

 銀河連合軍における、初の対惑星用砲弾である。

 一方に半重力発生装置を、もう一方に重力発生装置を搭載した砲弾であり、各重力装置は地球の約五千倍の重力を発揮するものである。

 重力によって加速するため、ある程度の距離は必要になるが、1MI、地球と月の距離で発射すると片方につくころには約秒速500000kmに達し、その勢いで惑星を貫く。

 人類の最高兵器ともいわれるものである。

「戦闘艦隊、再航行を開始しました!」

 済まんが、がんばってくれよ。


 第一部隊の仕事が終わってしまえば、僕らはぶっちゃけ暇だ。

 宇宙空間だから戦闘の音はしないし、攻撃が当たりさえしなければかなりリラックスすることができる。

「他の部隊って、いっつもこうして待ってるのよねぇ」

「第二まで回ったこともあんまりありませんからね」

 どちらかというと、銀河連合軍は全体的に短時間決戦、もっというと電撃決戦に向くように全体が作られている。

 これは、消耗戦向きな鼎皇軍と戦闘をするときに有利でも不利でもあった。

 ちなみに、どれだけ鼎皇軍が消耗戦向きかというと、建設中の機動要塞が襲われ、連合軍が中に篭ったときに、丸二日間もの間、雷撃艦がこっちの戦闘速度と同じ速さで周りを巡回していた、という記録が残っているほどだ。

「残り五分…何とかなりそうね」

 部屋の小さなモニターには二つの数字らしきものがカウントダウンを続けていた。


「第一駆逐艦右翼部、被弾!

 航行可能レベル、3から2に低下!」

 防御艦もこれほどたくさんの攻撃はさすがに防ぎきれず、全艦艇が航行可能レベル4から2という状況。

 あと一分…あと一分で……

「艦隊後部小惑星帯より、超撃艦出現!」

 くそっ! ここにきて……

 小惑星帯の警戒が、まだ甘かったのか…!

「全ハッチオープン! 艦艇の収容を急げ!」

「超撃艦のエネルギー収束を確認!

 間に合いません!」

 くそっ…判断ミスだ…!

「全別働隊艦体、緊急回避行動!

 全搭乗員、対ショック体勢!」

 モニターのエネルギー収束は止まってくれない。

 ここまで…か……

「攻撃、来ます!」

 地震が、艦内に伝わる。

 終わるの…か……

 しかし不幸なことに、揺れは数秒で治まってしまった。

「第一護衛艦、撃沈!

 第一から第四防御艦、エンジン部損壊! 航行不可能!

 本艦は右舷上部半壊!

 全主力戦艦は無傷です!」

 実質五隻もの非生体艦が撃沈…痛すぎる。

「目標地点まで残り二十!」

「重力弾再装填!

 戦闘艦隊に緊急退避命令!

 全艦、対重力弾装置作動命令!」

 非生体艦が射線上から遠ざかり、半生体艦と生体艦がこちらにダイブする。

「目標地点到達!」

「敵戦艦二十隻出現!」

「全艦、退避を継続!」

 くそ…まだ退避できてないのか……

「全艦、射線上、及び被弾地域からの退避を確認!」

「相互重力発生装置搭載弾、発射!」

 出てきた艦隊を貫通して弾が惑星へと突き刺さり、惑星が爆発する。

 見たのは初めてだった。

 星がはじけ飛び、無数の隕石となって散っていく。

 これで周囲の星にも甚大な被害が出るはずだ。

 一つの惑星と432名の命。

 どちらが軽いかなんて、俺にはわからない。

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