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1私の狐  作者: 川本千根
第一部
4/51

ひなは美少女だ


私に似ているか似ていないかといえば似ている


よくテレビに出てくる美人女優のそっくりさんがちょっと崩れててたいした美人じゃないように、可愛い妹に似ている姉の私は、可愛くはない


だから悩む

昼間のことを


なんで、なんで私に声かけた?


布団に入ってからも私は環と名乗った店員さんのことで頭がいっぱいだった


翌日の朝も、昼も夜も

その次の日も、またその次の日も


もし私が雛みたいに可愛かったら余裕で無視できたのかな

それとも面白がってこだわりなく誘いに乗るのかな


実は大学二年の現在まで男の人と付き合ったことがない

ちょっと男の人苦手だし、男女交際に興味もない


そんなの今時普通だよね

私の友知り合いの半数以上は彼氏がいたことがないし


けど彼氏がいる娘は、今の彼氏の前にも彼氏がいた

そういうもんだよね


妹の雛にも中学のときから付き合っている相手がいる

なおしくんは雛に比べると見劣りするような気もするけど、本人がいいんだから、姉がどうこう言う筋合いはない


まあ、男の人に限らず私は人づきあいがあんまり好きじゃないかも

家にこもってるのも割と苦にならない


だいたい名前がまゆだもんね

なんか最初から籠ってる感じがするよね?

あ、でも安心して下さい

人並みの社会生活は送ってますから


学校も今まで何回か皆勤賞もらったし、友達も多くはないけどちゃんといます




「お姉ちゃんって偏屈で気取ってるよね」って妹にはよく言われる


「入れ替わりたち変わる流行りのイケメン俳優はこき下ろし、なんか脇役ばかりやる不細工な実力派俳優が好みです〜って」


「私は俗っぽいミーハーな女じゃありませんってことを証明したくて必死って感じ」


「人と違うことに価値があると思っているフシがあるよね」


「なんか生きにくそう」


…図星です、雛


私は人が右と言えば左と言いたいし、左と言えば右と言いたいへそ曲がり


さらに超頑固者


小学校のときの出来事がそれを物語ってる


小四のとき担任の先生が宿題とわかりにくい出し方をした調べ物があった

自分の生まれたときの天気を調べてくるというものだったかな?


数人の生徒はそれが宿題だと理解して親と協力して調べてきたけれど、ほとんどの生徒がやってこなかった


それを担任はひどく怒った

多くの子が謝ったけど私は謝れなかった


だって先生は宿題だって言わなかった

だからこそこんな大人数がやってこなかったんじゃん


同じように考えて謝らなかった子たちが、職員室につれていかれて正座させられ、一人、二人と先生に謝って帰っていく中、私が最後まで残った


他のクラスの先生のとりなしで私は謝らずに帰ることを許されたけど…


職員室を出るときに「かわいげのない子」と言われたのを覚えてる


確かにそうかもしれないと自分でも思う

でも、どうしても人に謝れない


まあ、ぶつかっちゃったり足踏んじやったりしたときは謝るよ?

…そういうことじゃなくってさ


いったいなんだろう?このこだわり

自分でも変なやつって思うよ…

でもいいのさ

文学やる者は多少問題がある人間で



はぁ…

あの人に名前呼びかけられなければ余裕で無視したのに

名前…なんで知っていたのかな


うん、やっぱり火曜日アピ○のスタバーに行こう

それで、私の名前を知っていたわけだけを聞いてこよう

雛の言う通り、それがわかんないとなんか気持ち悪いもんね


べつにあの店員さんに会いたいわけじゃない


私は自分の信条により、軟派の店員さんの誘いに乗ってホイホイとデートなんかするわけにはいかない




そして訪れた火曜日の午後

アピ○のスタバーの前に一時ピッタリに来たら、店の前に置いてあるベンチに店員さんが座ってた


「あの」と声をかけたら限りない無表情で立ち上がり店の中に入っていった


え、え?


いや…

ここで断ろうと思ったんだけど


店員さんは注文をする人の列に並んで私の方を振り返った

多分来いってことだろう


なんて無愛想な態度なんだろう

自分が誘っておいて…


私は戸惑いながらも店員さんが並んでいるのとは別の列に並んだ

自分が注文した飲み物を持って先に席に着いている店員さんの元に向う

ああ、結局一緒にお茶することになってしまった


席についてから


「あの〜どういうことなんでしょうか」


「店員さんはなぜ私の名前をご存知だったんですか」


と尋ねたら店員さんは


「へえっ、あんたほんとに繭って言うの!?」


って言った

ひどく驚いた顔をして


うそ…当てずっぽだったの?

繭なんてそんなにありふれた名前じゃあないのに


意外な答えに疑問を感じているところ、巻物を渡されて、そして俺狐って申告されたのです

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