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1私の狐  作者: 川本千根
第二部
35/51

定期的に見る夢がある。


変な夢。


狐がぶどう畑をうろついていて熟れた美味しそうなぶどうなってる木の前で止まる。

でも葡萄は木の高いところになっていて、ぴょんぴょはねても手が届かない。


あきらめて狐は歩きだし低いところに実のなっている木の前で止まる。

そしてぶどうを一房もぎってガブッと口にする。

けれどすぐにペッと吐き出し一目散に逃げていく。


その光景を目にした私はなぜか怒って狐を追いかける。

だけど狐は足が速くて追いつけずそのうち見失ってしまう。

その後私はなんとも言えない哀しい気持ちになる。


そしてその哀しさは目覚めてからも続く…





あ…久しぶりにあの夢を見た…


あれって多分イソップの狐だよね?

高いところの美味しそうなぶどうは手に入らないからあきらめて、手近なところのぶどうを食べたらまずかったんだよね、きっと。


私が狐の夢を見るようになったのは二年で大学を辞めちゃった頃からだ。

なんか心理的な意味があるのかな?あの夢。


ピチュピチュという若い鳥の声で目覚めた私は見た夢を振り返りベッドの中で胸に手を当てた。


ん…

前ほどは心が痛んでない。

今日の狐は逃げ方がいつもより滑稽だったからかな?


それにしてもあの狐なんでいつも二足歩行なんだろう。

なんかのキャラみたい。


「あーいつかあの狐を現行犯で捕まえたいなー」とつぶやきながらベットから起き出し、部屋の黄色いカーテンを開けたら春の冷たい朝の空気をまとっていた窓がむき出しになって、急に部屋の温度が下がった気がした。


う〜寒さが身に染みる。

心まで冷えてくみたいだ。

んーでもそれは温度のせいじゃないな。


昨日、お産で1ヶ月近く家にいた妹が赤ちゃんと共に東京に帰っちゃったから…

その寂しさもあってよけい寒さが身にしみるんだよね。




少し震えながら私はクローゼットからもこもこの靴下を出してそれを履いた後、テレビ台についている引き出しの中から封筒を二つ取り出してながめた。


一つは白。

一つは薄い黄色。


実は私、すごく不思議な経験をしたことがある。大学生のときに。

神隠しと言うと大袈裟だけど自分の感覚的にはそんな感じ。


ある日なんの脈絡もなく全く知らない住宅街にいた。

しかも泣きながら。


その時手にしていたのがこの千円が入った黄色い封筒。

で、その日家に帰って自分の机の引き出しを開けたら出てきたのが真っ白な便箋が一枚だけ入ったこの白い封筒。


どちらも宛名書きもなくこれにまつわる記憶が全く無い。


いや、黄色い封筒は東○ハンズで買った記憶がある。

この薄い黄色に惹かれて。

だけどあの時なぜ千円入れたものを握りしめていたかがわからない。


ただなんとなく私にとって大切なもののような気がするんだ…


普段はこの封筒のこと忘れてるんだけど、あの夢を見たあとはなぜか思い出してこうして手に取ってしまうんだよね。


いったい何なんだろう、この封筒。

気になるなあ。


泣きながらこれを持っていた場所に行けば何かしらのヒントが見つかるんじゃないかと思ってその場所に行こうともしたんだけど、これまた不思議なことにはっきり覚えてないんだよね、そこがどこだったのか…


この封筒ってあの夢となんか関係あるのかな?

月、木で。

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