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1私の狐  作者: 川本千根
第一部
3/51

デートしない?

「次の火曜日の午後あいてる?デートしない?」


体は冷凍マグロでも耳は聞こえる


火曜日…1限と2限しかない日だ

できる…

あれなに算段しているんだ?私

ナンパ男嫌いじゃないのかっ


しっかりしろっ


断らなきゃ…と思うものの冷凍マグロなので声がでない

あうあうしていたら店員さんは


「待ち合わせは一時にアピ○のスタバーで、まゆ


「あ、フレンチトースト温かいうちにお召し上がりください」


と言い番号札を持って去っていた


ちょっと!

なんで私の名前を知っているの!!


ここにはいつも一人で来るから友達に「繭〜」って呼びかけられることもない

小学生じゃないから持ち物に名前も書いていない


なんで?なんで私の名前を知ってるの、店員さん!?


ひょっとして忘れている同級生とか?

いや、あんな美形の同級生はいなかった

それにどう見ても年上だ


どういうこと?

なんか気持ち悪い


私は慌てて個室を出て店員さんを追いかけた


「店員さん、店員さん!」


大声出したものだから2階席にいた二、三組の客の注目を浴びる


一階に続く階段手前にいた店員さんは振り返り


たまきです、申し訳ありませんが仕事中ですので」


と一礼して階段を降りて行った


回りの客が飲み物を手にフリーズしたまま痛そうな目で通路にたたずむ私を見ている…


はっ、ちょっとおっ、これじゃあまるで私がイケメン店員に執着している常連客みたいじゃないの!

私は慌てて三段の階段を上り囲われた個室に逃げ込んだ


やだ、恥ずかしくて2階席の客が帰るまで降りて行けないよ…


あーもう課題どころじゃない

環…って言ってたよね

苗字?名前?


どっちも知り合いにはいなかった

火曜の午後…

どうしよう


私はその場でぐるぐる考えて一時間後、冷えたフレンチトーストを無理やりお腹に詰め込んで逃げるように店を出た


そして家に帰って一部始終を学校から帰って来た高校生の妹に語って聞かせた


ホントは人に話したくなんかなかったんだけど自分ではどうしていいか判断できなかった

少しパニックになっていた


「ねえ、どう思う?ひな」と問いかけたら


「ふーん、変な話だねえ〜なんでお姉ちゃんの名前を知っていたのかなぁ」と雛は言った


妹の雛は今高3、進学校に通っているけど難関大学には行かず、服飾系の大学に行きたいと言い出してそれに反対している親を説得しているところ

粘り強い性格だから自分の意思は貫くだろう


「まあ、行くだけ行ってみりゃあいいじゃん」


「おねえちゃんが男の人に声かけられるなんて生涯最後かもよ?」


生涯最後は言いすぎだろう


「ショッピングセンター内のスタバーなら人目があるから安心だし…あ、でも個人情報与えちゃダメだよ」


「名前は知られちゃってるみたいだけど…なんで名前知ってたのかだけ上手に聞いてきなよ、そうじゃなきゃずっと気になるでしょ?」


「なんかちょっと気味悪いもんねぇ…休日だったらついていってあげられるんだけどな…」


中間テストの試験勉強をしながら雛はそう言った


冷静なご意見ありがとうございます

そして保護者のような心遣いありがとうございます


そう思いながら私は「はあ」と答えた


そしてちょっと後悔した


なんで雛にしゃべっちゃったんだろう


この世話好きの妹はきっとこれからこの件についていろいろ聞いてくる

なにか報告の義務を背負ってしまったような気がする


…それにどうして私は声をかけてきた店員さんがすごい美形だってことを抜かして話しちゃったかな


もしあの店員さんがイケメンだって話していたら、それは怪しい、行くのよしなって雛は言ったかもしれない

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