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1私の狐  作者: 川本千根
第一部
29/51

誰か私を褒めて

結局私は吐いて下した


私を案じて雛がドアをドンドンたたいていた

「お姉ちゃん大丈夫?」と言って


異変を感じたお母さんもやってきて雛と一緒になってトイレの外から、私の名前を呼び続けている


もうっ、二人ともうるさい!


トイレから出た私はヘロヘロだった

雛とお母さんの間を割って通り、口をすすぎに行った洗面所の鏡に映った自分を見て、ああ顔面蒼白とはこういうことを言うんだろうなと思った


私は吐いて下したおかげで雛を非難する体力がなくてその場ではケンカすることもなかった

そして雛に謝罪するをチャンスを与えることなく寝込むことができた


私の不調は流行っているお腹が痛くなる感染力の強い夏風邪のせいだと思われたみたいで、お母さんから雛に私への接近禁止令が出た


ありがたい

しばらく

雛の顔を見なくてすむ


この部屋に一人でこもれる

私が治るまで雛はリビングで寝ることになったから


気持ちの

整理をしたい

環さんと今後どうするか


環さんは今何を考えているんだろう

会いたかった人に会えた喜びに震えてるんだろうか?

私のことをどうしようと悩んでいるんだろうか?


…あの人意外にいい人だから困っているかもしれない


雛は…

環さんを見て何にも思い出さなかったのかな?

何も感じなかったのかな?


深く考え事をしている最中にキリキリとした痛みがまた襲ってくる

う…お腹痛い


はあ

絶望が深すぎて涙もでない


勝負に…ならないもの…

私と雛じゃ


過去何回も何回も一つしかないものをめぐって取りっこしてきた

お菓子だったりおもちゃだったり

年は二つ下だけど子供のときから雛の方が大人で、私が譲ってもらったことも多い


欲しい物は手に入れても、譲られた時点で勝負に負けたような気がする

そしてその途端手に入れたものは輝きがなくなってしまう


勝負…

私との勝負なんて意識したことはないだろうけど、雛は

私は戦って負けるの嫌なんでここで身を引くよ


不思議なんだけど…

環さんが元カノと似てる人に出会っちゃたらどうしようと恐れていたときよりも今のほうがずっと気持が楽な気がする


悲しいには悲しいけど




私の腹痛は翌日には治ったけど、誰とも口を聞かずすごしたかったのでその後2日間仮病を使った


けれど白粥に梅干し飽きたし、センブリとか飲まされるのいやになっちゃったし、家族に心配かけるのも罪が重いような気がしたので今朝は「腹痛治った〜なんか美味しいもん食べたい〜」と言って起きた

そして久しぶりにいつも通りの朝食を食べた


お母さんは私の顔色と食欲を見て安心したみたい

普通に過ごす許可が出た


…なんだかんだ言っても私はまだ親の庇護下にいるお子様なのだ




朝風呂に入った後、部屋に雛を呼び聞き取り調査

なんで雛が環さんの家を知っていたのかと、あの日あの家に飛び込んできた経緯いきさつ


雛は申し訳なさそうに全てを白状した


話を聞いてあーあ運が悪かったなと思った

なんと…直くんに二回も環さんと一緒のところを見られていたとは…

でもそれは偶然じゃなく必然かもしれない


あの日私が環さんを誘ってアピ○に行ったのも、例の虫が出現して私に叫び声をあげさせたのも、みーんな必然

環さんと雛が再び出会うための


環さんは前の恋人に会いたがっていたから願いが叶ったんだろう

願えば叶うっていうタイトルの本よく書店で見かけるもの


例えば私が神様の書いたドラマの出演者なら、私は主人公の二人が再び出会えるきっかけを作るための端役にすぎないんだろうな


心の美しい人間だったらそのドラマで二人の仲を取り持ってやったりするのかも知れないけど無理、私には


雛を怒鳴りつけなかっただけでも頑張ったと褒めてもらいたい

…誰かに




取り持つことはしないけれど、邪魔もしないよ、環さん

あんまり惨めな思いしたくないから


だから別れの主導権は私に握らせて


うん、簡単

もうあの家に行かなければいいだけのことだもの


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