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1私の狐  作者: 川本千根
第一部
16/51

期待

次の日の朝、前みたいに環さんがバス停に現れないかなあと期待したりしたんだけど、環さんは来なかった


二本ほど私はバスを見送ったんだけど…


学校についてからもずっと環さんのことを考えていた

なんでシネコンであんな大声出して怒ったの


…私が言おうとしたこと、察したんだよね


私ごときに別れを切り出されるのが屈辱だったの?

なんでなんでと考えて一日が終わってゆく


膝や腰が痛いうちはまだ良かった

痛みが分散してたから

それが収まってからは胸の痛みが際立った


時間が経つにつれて階段の踊り場で偉そうな態度を取られて見捨てられた怒りが薄らいでゆき結果として環さんへの恋しさだけが残った


あんな理不尽な態度を取られたのに


苦しい

みんなこんな苦しい思いして恋愛してんの


ぴょんぴょんはねてやっと手に入れた葡萄が甘いとは限らない


はぁ道行くいちゃつく頭空っぽそうなカップルさん、今までバカにしてきてごめんなさい


人を好きになるのがこんなにしんどいものなら、それに手をだ出すあなた達は勇者です




ため息ばかりの日々が虚しく過ぎていった




「お姉ちゃん、最近元気ないね〜初彼とまだ仲直りしてないんだ?」


学校をサボって部屋着のまま部屋で過ごしていたらお昼過ぎ雛がそう言って入ってきてカバンをドサッと学習机の上に置きながらそう言った


雛…

なんでこんな時間に帰ってくるの


ああ今日は終業式か

明日から夏休みなんだ


「だって…私店員さんのケータイ番号知らないし…」



「え…ナニソレ」


「お姉ちゃん、ひょっとして浮気相手かなんかにされてるんじゃない?」


「番号も教えてくれないようなやつとは付き合うのよしなよ」


雛はそう言って少し不審な顔をした



「いや…もしかしたらケータイ持ってないじゃないかな、店員さん」と私が言ったら「ひえっ何時代の人!」と今度は驚いた


何時代…


江戸時代に生まれたって言ってたな


「あ…」



「何、お姉ちゃん」



「下島コーヒー辞めちゃったんだから店員さんではないな…」



「はぁ〜、変なお姉ちゃん」


雛は「ダメだこりゃ、ほっとこ」と言って部屋を出ていった




部屋に一人になった私は再びカーペットに転がり一生懸命環さんがあんなに怒った理由を探していた


よく考えたら

私のことがどうでもよかったら環さん、別れを切りだそうとしたことに、あんなに怒らなかったよね


そう考えるとなんだか少し複雑


私のことを好きになるよう努力すると言ってくれていた

時間がないとも


ん?

時間がない?

時間がないってどういう意味?


環さん、二言目には時間がないって言ってたっけ


…もしかして、環さん病気なのかな

余命宣告受けているような状況だったりして


あの人ものをはっきり言わない人だから…


環さんはもう一度恋愛をしたがっていた

私と恋愛しようとそれなりに努力してくれていた


鎖骨触らせてくれたり私と休みが合わないって下島コーヒー辞めちゃったり


環さんと出会って二ヶ月

私は別れることによって環さんの残り少ない大切な時間と努力を無駄にしようとのかな

だからあんなに怒ったんじゃないかな?


え…


うそ!環さん死んじゃうの?!


私は自分の出した答えに動揺した

もういても立ってもいられなくなった


そして気がつけば上は襟のよれたTシャツ、下はグレーのスエットの半ズボンという部屋着のまま自転車の鍵だけを持ち家を飛び出してしまっていた



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