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1私の狐  作者: 川本千根
第一部
15/51

階段の踊り場で

私が追いかけていくと、ゆっくり階段を降りていた環さんはその速度を早めた


追いつけない

慌てた私は足を滑らせて階段から落ちてしまった


ダダダ、グシャッと音を立てて


「うぅ…」


四階と三階の階段の踊り場で倒れ込む私を振り返って見て環さんはゆっくり階段を昇ってきた


助け起こしてくれると思った


けれど環さんはへたり込んだ私に


「私は心がふらふらと揺れる弱い人間が嫌いだ」


という捨て台詞残して再び階段を降りて行った


なに?あの偉そうな話し方

今までの環さんとまるで違う

っていうか普通助けるでしょ!この場面では!


思いやりがないにもほどがある

好きな相手には絶対とれない態度だよねっ!


取り残された私は怒りと情なさとで打った膝と脛と腰の痛みが増していくのを感じていた




足を引きずりながら最悪の気分で家に帰る


玄関を開けた途端雛がパタパタと走ってリビングから出てきた


「お姉ちゃん〜おかえり」


「ねえ、シネコンで店員さんとケンカしたでしょ!」


え?なぜ雛がしってんの?


「直からラインきた」


「シネコンでお姉ちゃん見かけたって」


「イケメンとケンカしてたって」


「ハハハ」


「お姉ちゃんってば、私に内緒で店員さんと付き合っていたんだね?」


「それにしても…お姉ちゃんもなんか一人前だねえ、彼氏とケンカするなんて」


なおしくんあの場にいたんだ


ハハハじゃないよ


私、もぉ気分最悪だよ


私のムッとした態度と少し足を引きずる歩き方に何かを感じたのか雛は真顔になって「どうしたの」と聞いてきた


雛はよく彼氏との間に起こった出来事を私に話してくるけど、私は今日のこと雛に話す気がしない

そんなオープンな性格じゃない


ああ、一人になりたい

こんな時に妹と同じ部屋なんて最悪だ

って思った私の気持ちを察したのか、雛は黙ってリビングに戻って行った




部屋に入り二段ベッドの下の段にドサッと寝転ぶ

ここが唯一プライベートな空間だ


環さん、私が別れを切り出そうとしたのを察して怒ったんだよね

で、逆ギレされたんだよね?

私…捨てられたの?あの踊り場で


あれは環さんとのお別れのシーンだったの?


別れの主導権は私が握りたかった

そしたらもっとスッキリした気分で帰ってこれたのに

なにこの最悪の気分?


私、嫌われちゃったよ、環さんに


するする〜っと涙が横に流れていった

うそ…私失恋して泣いている…


その涙を拭いたタイミングで部屋のドアが開く


部屋には入って来ずひょこっと顔だけ出して雛が


「お姉ちゃん、ケンカは早めの仲直りがお勧めだよ」


「ラインで謝っておきな〜」


と言ってドアを閉めた


ライン?


私、環さんの番号知らない…


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