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1私の狐  作者: 川本千根
第一部
11/51

漫画

この人多分フリーターだよね

心理学学んでいたけど就活に失敗した


少しおかしいところのある


でもなんだろう、言葉づかいこそ今の若者だけど何とも言えない品がある

ただの軟派男には見えない…


フリーターで、この威圧感と品格を醸し出せるものなのか?


なんか小学校のときのおじいさん校長先生くらい老成した雰囲気…


言ってることややってることにこの人の雰囲気にかけ離れたものを感じる

なぜだろう?


多分この家でおばあさんと二人暮し

この人の親は?

友達とかは?

部活は何だったの?

出身大学はどこ?

今までどんな人生を歩んできたの?


…この人への興味はなくもない

純粋にこの人の謎めいたところへの興味


「あの、今お返事しなきゃだめですか?」


「この漫画、借りて読んでみたい」


「この漫画を返しに来た時、お返事します」


そう言って私は環さんの家を出た

この前と違って、今日は環さん玄関まで見送りに出てくれた





「お姉ちゃんなに読んでるの?」


学校から帰ってきた雛が二段ベッドの下の段で漫画を読んでた私に声をかけてきた


「友達から借りてきた漫画」


「雛も読む?」


一巻を差し出したら


「うえっなんか古そう、どんな話?」


って聞いてきた


「カフェに勤めるイケメン店員と客のラブストーリー」


「店員さんはイケメンで俺様」


「女の子は真面目で冴えない感じ」


「女の子が店員さんに一方的に言い寄られる」



「ハハハ〜ベタだねぇ」


「いいや、趣味じゃない」


「ん?デジャブ?」


「その設定、この前のお姉ちゃんじゃん」


「ウケる〜」


「あーだから読んでるの?」



「そういう訳じゃないけど」


なんだろう、なんとなく雛と目を会わせにくい


「ん?お姉ちゃんちょっと顔赤くない?」



「え…そう?そういえばちょっと熱っぽいかも…」



「今年の夏風邪はたち悪いよ、早めに薬飲んどきなよ」


「私はとっとと宿題やっちゃおうっと」


そう言うと雛は長い髪を縛り直し学習机に向かった


ほんとに偉いな、雛は

やるべきことはすぐにやる


八畳の部屋に偏屈な姉と詰め込まれ…

嫌だろうに文句ひとつ言わない

私みたいに人がいると集中できない〜とか


人間性が違うなとつくづく思う




それはそうとこの漫画、ほんとに笑える、店員さんの言動が環さんそっくり

かわいいねって声をかけるとことか、背中から服ぬがそうとするところなんか


あっ、あんた俺の彼女になる気満々じゃんって台詞まである


本当にこの漫画を参考にしてるんだなあ


ん、でも俺狐だからってくだりがない

巻物渡すシーンも

あれは環さんのオリジナルなんだな

…やっぱり変な人


さて、環さんになんて返事をしようかなぁ

はあ…私が男のことで悩む日が来るとは


悩む?

断ればいいだけの話じゃん

だけど…なんか…


雛に相談できたらな…

でも、環さんが変な人すぎて何をどう相談していいかわからない

第一照れる


大学の友達にも言えない

この前構内で痴話喧嘩しているカップル見て「バカだね〜」って、男女交際にうつつをぬかす奴らのことを共にあざ笑ったばかりだ


私…なんで今日あの家に行っちゃったかなぁ…

自分のコトを語っちゃったかなあ


そんなことを考えながら漫画を手にちょっとウトウトした


その短い間に夢を見た

子供の頃の夢




あ、小田原のお祖母ちゃん

いらっっしゃーい


「繭、雛、大きくなったね〜」


「はい、これおみやげ」


「雛にはピンクのハンカチ、雛の好きなうさぎの絵がついてるよ」


「はい、お姉ちゃんには黄色いハンカチ」


「ほら、雛とお揃いのうさぎ」


…私もピンクがいいんだけどな



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