家にて
「ふーっ、酷い目にあいましたね」
僕は濡れた鞄を床に乱暴に置くと、洗面所からタオルを二枚取って来た。
「はい、使ってください」
と、一枚を彼女に手渡す。
彼女は、ありがとうございますと呟き、荷物を置いた。
改めて彼女を見ると、やっぱり可愛い。
何歳なのだろうか。
と、そこまで考えて気付く。
自己紹介をしていないじゃないか!
「あの、僕の名は|谷 柚基«タニ ユズキ»です。20歳で、サラリーマンしてます」
すると、彼女はタオルを落とした。
目を丸くしている。
可愛い。
アイツと瓜二つなだけに、アイツが見せない表情を見るのは楽しかった。
「ユズキ……さん?」
「そうですよ」
あれ、と思う。
どうして彼女はこんなに驚いてるんだ?
それを尋ねようと口を開くが、彼女が自己紹介を始めてしまう。
「|霧穂 怜«キリホ レイ»です。仕事は……秘密です……って、ユズキさん!?」
電撃が走ったようだった。
霧穂。
アイツの名字だ。
そう、あれは中1の自己紹介のとき……。
「初めまして、|霧穂 涙«キリホ ルイ»です。得意なことは……」
もう12人ほど続いた自己紹介。
僕は自分が言う時のために、必死にプリントを見ていた。
すると。
「あのさ、聞いてんの?」
と、声が。
顔を上げると、涙の姿があった。
「プリントを見てる」
そう答えるとなんで、と言われた。
「いや、だって……」
「失礼だろ、こっちだって発表してるんだぜ?」
反論しようとしたら、遮られた。
確かに正論である。
それに、これだけで授業を止めるのも嫌だ。
そこで、僕は素直に謝ることにした。
「ごめん」
こうして、僕と一風変わった涙との不可思議な交流が始まった。
ひゃっふ~い!
今回は登場人物の名を晒しましたん←
個人的には涙くんが好き((
る~いく~ん((黙