雨の中。
土砂降りの雨の中。
彼女はただ立っていた。
悲しそうな目で、何処かを見てた。
彼女は何も手にしていない。
そう、傘さえも。
一見、その幼い顔立ちから迷子の少女にも見えるが、何か決意をしたような目からそれは無いと分かった。
ふと、彼女が手を伸ばす。
そして、何かを掴もうとするように宙でその手を握った。
しかし、手は何かを掴むはずもなく、虚しく空気を切る。
彼女の濡れた綺麗な茶髪と、寂しげな黒い瞳と雨は、アイツを思い出させた。
もう、二度と戻って来ないアイツを……。
そのせいだろうか。
僕は声をかけていた。
「傘、使いますか?」
「……え?」
彼女は驚いたようにこっちを見やった。
ああ。
当たり前だけど、声は別人だ。
彼女の声は弱々しく小さいが、アイツの声は明るくて大きかった。
「傘です。……そのままだと濡れますよ」
すると、彼女はちょっと笑う。
クスクスと、いかにも楽しそうに。
さっきの表情とは大違いだ。
「残念だけど、もう濡れてるの。今更傘なんて」
少し考えて、僕も笑った。
「それもそうですね。……でも、風邪を引くといけない。良ければ僕の家に来ませんか?」
え、と彼女が目を見開く。
それと同時に、僕も驚いていた。
僕はいっぱしのサラリーマンで、そこそこの家賃のマンションで独り暮らしをしている。
しかし、一度も人を上げたことがない。
汚いわけじゃない。
プライバシーの問題だ。
なのに。
なんで僕は彼女を家に呼ぼうとしてるんだ……?
やっぱり、アイツに似てるから?
そう思い、急に鼓動が速まる。
もし断られたら?
どう言おうか。
『ですよね、いきなり来ませんよね』
とでも?
いや、でも……。
「じゃあ、お言葉に甘えて……」
袖を掴まれた。
え?
お言葉に甘えて……?
てことは。
「来てくれるの!?」
あんまりにも驚き、思わず大声を出す僕を、彼女は少しキョトンとした目で見てから言った。
「はい、お邪魔でなければ」
そして、掴んだ袖を引っ張る。
その仕草に、キュンときてしまった。
「邪魔なわけがありませんよ。では、行きましょう」
僕はニッコリと笑い、彼女と共に雨の中を歩き出した。
彼女を家に連れていなければ。
どうなっていたんだろう?
もしかすると、アイツのことを何も知らないまま時を過ごしていたのかもしれない。
ひゃっふ~い!
テンションが高いHolly-Leafっす←
注意!
※亀更新ですね
※亀更新ですね←
※全て悪いです←←
読者さん、来ないかな…((
コメント等、お待ちしてます!