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Tiny Little Soldiers ~香山センセイの二足のわらじ~  作者: ちひろ
第十話 卒業編(1月~3月)
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今年の卒業生を送る会は何をするのだろう?

登校中に優と早瀬くんとLINEしてて、わたしたちは勝手に盛り上がっていた。

「洋三たち何やるんだろうね(*^ω^*) 超楽しみ!」

「昨日16時以降は卒業生立ち入り禁止になってたんだよ」

「やべーな。あいつら本気出すつもりまんまんだな( ;゜Д゜)」

「馬上さんに会ったけど、絶対泣かせるって!」

「マジで! じゃあ引くぐらいに号泣してやろうよ!」

葛目くんたちがわたしたちに見せてくれる最後の姿だ。大いに期待している。

クラスのみんなが集まるのも久しぶり。入試がかぶってる人もいて、今日の送る会、明後日の卒業式と、どちらも全員そろわないのが残念だ。

「菜摘、久しぶり!」

「ミサミサー! 元気ー!?」

菜摘や久々に会うみんなと思う存分ハグし合った。あんまりいつまでもやってるので男子もハグし始めた。「キモい」と女子が辛辣にツッコむ。こんなバカは大学生になったらできないんだろうな。

「おはよう、待たせたな! みんな元気そうだな!」

ひときわ元気な香山先生がトップギアで飛びこんできた。男子がさっきと同じ調子で先生に抱きつく。

「グフッッ、そのボディブローはキツいぜ…。ほれほれ、出欠とるぞ、出欠」

「まだチャイム鳴ってませんって」

「先生、テンション高すぎー」

わたしもみんなと同じように先生を囲んで大笑いした。ふと先生と目が合う。けどすぐにそらされた。いや、そらされたというより、先生は全員の顔を順番に見ているようだ。

そんな先生を好きになったことを急に誇らしく感じた。

「じゃあ今日の予定。2限までが卒業式の予行演習になる。3限からはお楽しみ、卒業生を送る会だ。今朝まで葛目会長たちが一生懸命準備してた。みんなはハンカチの用意を忘れないように」

香山先生はニヤリと笑った。泣く準備をしろということだ。



「諸先輩方! ご卒業おめでとうございます!!」

変わらぬ調子で葛目くんはステージで司会をしている。文化祭以来コンタクトレンズを常用しているようだけど、こちらの方がしっくりくるようになってきた。

「思えば2年前…、右も左も分からぬ私たちに、優しく声をかけてくださり、引っ張ってくださったのは、ここに集う先輩方でした。そのみなさんが……」

芝居がかった言い回しで、ステージ上をもったいぶって移動する葛目くん。舞台役者を目指してるって噂は本当のようだ。

「洋三、送辞の内容しゃべっちゃダメだろ! 明後日にとっとけって!」

黒岩くんが大きな校内配置図を持ちながらステージへ上がってきた。

「みなさーん、ご卒業おめでとうございまーす! オレたちのささやかな送る会に来てくださってホントにありがとうございます!」

黒岩くんも相変わらず元気だな。

「それではですね、送る会の企画の説明をさせていただきます! 山田くーん、例の物をお配りして」

「座布団は配らねーぞ!」

卒業生へ校内配置図のプリントを配るように指示されたのは野々村くんだ。このボケツッコミも健在らしいが、葛目くんのボケを殺さないようにツッコむあたり流石だ。1・2年生のクラス委員長が配布の補佐をしている。

「それから山田くん、さらに例の物を」

「だから……、もういいよ」

今度は小さなメモを配ってくれた。一人ひとりへの宛名が書いてあり、自分宛てで間違いないか確認しながら卒業生へ渡っていく。

「はい、ご自分宛てのメモかどうか確認してくださいね。それではー……」

葛目くんは大きく深呼吸した。雄叫びがくるぞ、と一同身構える。

「第一回! 宝探しゲーーーーームッッ!!」

そして、一同は頭の上に「?」マークを浮かばせながら「オオーーッ」と応えた。宝探し? 何やるんだろう?

「みなさんに自分の叫びをお聞かせできるのも最後なのですね。感傷はさておき、少々ご説明いたしましょう。彬、芙美子」

いつの間に、葛目くんは黒岩くんと馬上さんを下の名前で呼ぶようになったのかな。わたしたちの知らないうちに、この代も着々とチームワークを強めてきたのだろう。

黒岩くんは先ほどの校内配置図の、馬上さんはメモの巨大バージョンをかかげた。

「みなさんにお配りしたメモには、ちょっとした謎が書かれていると思います。それを解くと『校内のどこどこへ行け』という指示になるのです。1枚1枚違うことが書かれていますよ」

わたしたちは近くの人とメモを見せ合いながら、「ホントだー」「全部違う」などとザワザワしだした。3年生は約270人。全部に違う謎を書くなんて、どんな手段を使ったんだろう。

「とは言いましてもですね、まったく同じ場所へ行く指示でも文章が違ったりしています。その場所へ行くとみなさん、そこの番人から新たな謎を書いたメモを渡されます。いくつもの謎を解き続け、最終的にお宝にたどり着く! それがこの『宝探しゲーム』の概要であります! それではみなさん、出発の準備はよろしいですか? 制限時間は12時15分までです。時間になったらここへ再度お集まりください」

会場がどよめき始める。もう始まるの?

「『宝探しゲーム』、スタート! 行ってらっしゃーーーい!」

……と、言われても。というのが大多数の反応のようだ。みんなキョロキョロしながら「どうするー?」と言い合っている。わたしもとりあえず自分のメモを見た。

「私がここで墨汁をぶちまけて制服を汚した時、美紗先輩の知恵袋のおかげで助かりました! ★☆ゆきな☆★」

ゆきなちゃんは書道部の後輩だ。いつだったかな、ゆきなちゃんはハデにぶちまけたんだった。部室近くの手洗い場だったと思うけど、そこに行けってこと?

卒業生たちはメモを見ながらひとりふたりと席を立つ。わたしもそれに続いた。

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