向日葵が咲くころ
彼との時間が
こんなにも大切になっていた
ずっとずっとこの時間が続けばいい
そう思って
おしゃべりに夢中になっていた
だから
夕暮れ近いその時に
彼の異変に気付かなかった
いちにち数回
踏切り点滅その時に
彼がくずれ落ちた
がたがたがたがた
ふるえている
とっさに彼の手をにぎった
けれど
わたしは
彼にふれることができなかった
わたしは分かってしまった
彼がどうしてここにいるのか
わたしは気づいてしまった
彼がこんなにも不確かな存在だと
ただただこの気持ちが
この熱と一緒に
にぎるわたしの手のひらから
彼に伝われば
そう思った
向日葵はもうほころびかけていた
毎日が心配で心配で
踏切り降りるその時間
わたしは彼につきそった
少しでも彼の気が晴れれば
そう思い彼の目をみつめながら
強く強く両手でにぎった
どうしてそんなにきみが苦しそうなの?
彼が無理に顔を笑わせて
わたしに言った
なんでもないよ
涙をこらえて
ただただ彼の手をにぎりしめた
彼の手をにぎっているはずのわたしの両手は
いつしか
自分の両手をにぎりしめているにすぎないのには
気づかないようにしていた
次の日
彼はいなかった
次の日も
その次の日も
彼はいなかった
いつもと同じ帰り道
元に戻った日々
ふと気づくと向日葵が咲いていた
いつしかのイヤな予感が現実になった
彼はもういなかった
それから新しいわたしの習慣
透きとおるような真っ青な空の下
半透明のアイスキャンディーを
照りつける太陽にかざすと
うすみずいろの世界を通して
あなたが見える気がした