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虹色滴  作者: 桐 菊之
あお
5/10

向日葵が咲くころ



透きとおるような真っ青な空の下

半透明のアイスキャンディーを

照りつける太陽にかざすと

うすみずいろの世界を通して

あなたが見える気がした










いつもと同じ帰り道

いつもと同じ毎日

つまらない日々のくり返し

だけど夏のあいだ

少しの楽しみ

学校帰りに食べる

アイスキャンディー


だけど今年はもう一つ

駄菓子やさんの近く

踏切り前に生えていた

向日葵の世話






そんなありふれた一日に

わたしは彼と出会った






ある日学校帰り道

向日葵水やりそのあとに

ふと目の前に彼

半透明の彼








なにもかもを投げすてて

とにかくとにかく逃げ出した




息が切れ

うしろをふり返ると

向日葵ひざたけその横で

さっきと同じく立っていた






太陽にかすんだ彼

透けてみえる踏切りが

ゆらゆらゆらゆらゆれていた










それからわたしはその道を

そそくさすばやくかけ抜けた

向日葵もほうって

アイスもほうって

ただひたすらに避けていた






みっかよっかたったとき

向日葵しなしな元気なく

おどおどおどと水をやる

びくびくびくと水をやる




けっきょく彼はいないので

久しぶりにアイスを食べた






食べおわった後

また彼がいた








動かない彼に

動けないわたし

向日葵だけが

そよそよ風にそよいでた






向日葵の世話をありがとう

とつぜん

いきなり

彼がわたしに話しかけてきた

もっと幽霊らしいこというと思った

いつものくせでつぶやいた


あわ

あわ

あわ

あわ


彼が笑いだした

つられてわたしも笑ってしまった










いつもと違う帰り道

いつもと違う夏休み

今年はたいくつしない夏になりそう

だった








それから

わたしの日常に彼がいた


たくさん彼としゃべった

なんでも彼と話した


彼とおしゃべりする時間

とてもとても楽しかった






だけど

どうしても話せないこと

わたしのことじゃない

彼のこと




それだけが

どうしても

聞けなかった






だから

向日葵せたけその時に

もうすぐつぼみができるね

ふと

彼がそういったとき


なぜだか

どうしてか




イヤな予感しかしなかった






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