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虹色滴  作者: 桐 菊之
むらさき
2/10

非日常



なにもない場所

そこに僕はいた。
















色も、音も臭いも

感覚もない場所

そこには空間というものがなく

時間というものもない



なーんにもない場所。



僕はどうしてここにいるのだろう

…そうだ、僕は








「いかなくちゃ」


ふと気づくと僕は1人呟いていた


珍しいな

僕は一人言なんて言わないのに




それに比べて__




僕は今、なにを考えていたのだろう


どうしてか忘れてしまった








いかなくちゃ、いかなくちゃ

どこに?

と、僕は思うけれど

あれ、どこだっけ?

わからない

いかなくちゃ、いかなくちゃ


逝かなくちゃ…












ああ、そうか

僕は死んだんだ

でもなんでだったかなぁ




確か彼女が__




あれ、今

誰を思い浮かべたのだろう?

…憎い憎い憎い


でも、それよりたくさん悲しい












「逝かなくちゃ」


そうか、僕は死んだんだった

今さら思い出す必要なんてないか、

逝かなくちゃだめだから




でも、彼女が泣くから__






どうしてだろう

思い残すことなんてないはずなのに


たとえあったとしても

死んでしまった僕に

いまさら、どうすることもできないのに








けれど、なぜだか、

どうしても気になる。








どうして僕は死んだんだろう


なにを思い出さなくちゃならないのだろう






そんなことを考えていたら

頭が



ぐる

ぐるぐる

ぐるぐるぐる

ぐるぐるぐるぐる

ぐるぐるぐるぐるぐる

ぐるぐるぐるぐるぐるぐる

ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる

ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる

ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる

ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる

ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる

ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる












そうだ、僕は、








どうして忘れることができたのだろう

憎い憎い憎い憎い憎い…


彼女を轢こうとした運転手が憎い

彼女はただ単に横断歩道をわたろうとしただけなのに




僕は間に合ったのだろうか

彼女は無事なのだろうか


僕が死んでるならば

僕はたぶん間に合って

彼女はきっと無事だろう












ようくん



そんなことあるはずないのに、



ようくん



彼女、のことを思い出したときから

彼女、に呼ばれている気がする


これは僕の都合のいい幻聴なのだろうか



ようくん



そんなことより

もう、逝かなくちゃ



ようくん、待って



はやく、はやく

逝かなくちゃ、逝かなくちゃ、逝かなくちゃ



ダメっ、ようくん



あぁ、もう

逝かなくちゃ、逝かなくちゃ、逝かなくちゃ、逝かなくちゃ、逝かなくちゃ


お願いっ。ようくん、死なないで!


逝かなくち…












死なないで?シナナイデ?






もしかして、

僕はまだ…






私が悪かったの…

私が死ぬはずだったのに…






ゆうちゃんは、

わるくないよ。






私のせいであなたは…

私があなたを殺したの…






ゆうちゃんの、

せいじゃないよ。








それだけが言いたくて…








逝かなくちゃ


だけど、

どうしても、それを伝えたくて…

もう少し、彼女の側にいたくて…










もし、ぼくがまだ、きみのそばに、いれるなら、






ずっとずっと、彼女の側にいたくて…














僕は、逝かなくちゃならなかった。

けれども…
















そうして僕はこの非日常世界から抜け出した。






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