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迷宮

ライトは今、遂に≪永遠の迷宮≫(エンドレス・ラビリンス)の入り口まで来ていた。

現在時刻は朝7時といった所だろうか。ピークでは無いので、人はほとんどいない。


迷宮の入り口は、普通の洞窟のようだった。


ライトが中に入ると、いきなりどこかに転移された。成る程、あの洞窟のような入り口はただの転移装置であるということだ。

迷宮が異世界にあるとも言われる所以であるが、そこまでの事を学者でもないライトは知らない。


ライトは、ギルドで売っている情報を全く買っていない。たったの銀貨2枚しか持っていないので、当然である。

しかし、それ故にそれぞれの階層のモンスターを知らないのだ。


「どんなモンスターが出るんだろう……」


ライトが1分ほど歩くと、前から何かが歩いてくるのが見えた。

近づくにつれ、はっきりと姿が見えるようになる。


緑っぽい小さな体に、醜悪な顔。頭には、小さな角がついている。

レベル10のモンスター、ゴブリンである。


余談だが、モンスターは種族ごとにレベルが固定されている。ゴブリンはかなり低めであり、50階層より先のモンスターは500を越えていると言われている。


これまた余談だが、ライトは迷宮についての知識は無いが、モンスターの知識は豊富にある。その理由は、後に彼の生い立ちと共に語られることになるだろう。


と、ゴブリンがライトに襲い掛かる。武器は手に持った棒切れだけだ。


ライトが普通に剣を振るっても、倒すことができるだろう。しかし、ライトは試してみたいものがあった。

彼の能力(アビリティ)である。


初めての迷宮探索であるから、能力(アビリティ)の使い方も分からない。それなら、レベルの低いモンスター相手に使ってみたほうがいいのである。


「三連撃」


ライトがそう呟くと、自動的に剣が3回振るわれ、ゴブリンが輪切りになる。同時に、緑の体液が吹き出てきた。


剣を横なぎに三回振るう。それが三連撃という能力(アビリティ)である。


これで能力(アビリティ)の使い方が分かったライトは、不満を感じていた。

これは、「振らされている」という感じなのである。自分の意思で振るっているのではなく、あまり気持ちのいいものではない。


そんなことを考えていると、ゴブリンの死体が急速に消えていった。これはいくら迷宮の情報に疎いライトでも知っている。

迷宮で死んだものは、迷宮に吸収される。一般常識である。


そして、モンスターが死んだ後には、ドロップ品が残るというのも、常識である。

今回ゴブリンが残したのは、ゴブリンの角であった。ゴブリンの角は、初心者の剣の素材として使われることがある。


因みに、鎧なども売られているが、初心者はあまり買うことがない。初心者が鎧をつけると、逆に動きにくくて死亡率が高まる。

鎧を買うのは、探索最前線の人位だ。

「鎧つけたら一人前」、「初心者の鎧怪我のもと」 というような諺もある。


さて、ゴブリンをあっさりと片付けたライトは、他の能力(アビリティ)も試そうと思い、更にゴブリンを探しだした。







「死斬」


ライトは、そう短く呟く。すると、黒いオーラを纏った剣がスライムを切り、スライムはその青いゲル状の体を飛び散らせながら動かなくなった。

スライムとは、青いゲル状のモンスターである。1階層に出てくる敵で、レベルは5。つまり雑魚モンスターである。


また、そのドロップ品のスライムゼリーはポーションの材料の一つである。スライムゼリーと薬草を混ぜることで、ポーションが出来上がる。ポーションの効果は、二つの材料の質と作り方に左右されるらしい。


「死斬……、一撃で倒す技何だろうが、スライム相手だと分からない……」


ライトのレベルだと、能力(アビリティ)を使わなくてもスライム位一撃で倒すことができる。だから、能力(アビリティ)の効果のほどが分からないのだ。

ここまで相手にしてきたのは、ゴブリン4体とスライム3体。いずれも、ゴブリンの角とスライムゼリーをドロップした。


と、ライトがそこまで考えていると、下に降りる階段を見つけた。


この階層にいてもつまらない、そう判断したライトは、下―――2階層に降りようとした。その時、


「ちょーっと待ちな!」


後ろからの声に、ライトは怪訝そうに振り向いた。







迷宮で盗賊活動を繰り返している盗賊グループ、レッドボウ。グループ総員5名と少数であるが、全員が100レベルを越えている。頭領は、184という驚異のレベルである。


そんなレッドボウが1階層で目をつけたのは、一人の青年だった。


その青年は、朝早くから迷宮に入り、ゴブリンやスライムを狩り始めた。その狩りから、青年は高レベル、少なくとも、死斬が使えるようになる65レベルは越していることが分かった。


しかし、迷宮に慣れていない。


迷宮以外でどんなに強くなっていても、迷宮には迷宮の戦いかたがある。それを彼はしていない。

レッドボウはそう確信し、彼が2階層に降りようとするタイミングで襲うことにした。安心している時だからだ。


そして、遂に青年が階段に差し掛かった。

頭領が声をあげる。


「ちょーっと待ちな!」

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