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道具屋と宿

ライトがギルドから出る頃には、もう日は落ちかけ、夕方となっていた。これから迷宮に出掛けるのはいささか遅すぎるだろう。

そう考えたライトは、泊まる予定の宿に向かうことにした。


歩を進めていくと、道具屋が見えた。

どうせ迷宮に入るには、様々な物を買っておく必要がある。今買っても問題ないだろう。

そう思い、道具屋の入り口をくぐった。


道具屋の内部は、質素なものだった。木製の棚には、無造作に道具が置かれている。その奥には受付があり、老人が何かをいじりながら座っている。時々なにか呟いていて、不気味だ。


「……いらっしゃい」


ライトに気付いた老人は、少し顔を向けて挨拶すると、すぐに何かをいじり始めた。あの熱中ようだと万引きされても全く気付かなそうだ。気付いても気にしないかも知れない。


とりあえず、棚においてあるポーションを物色し始める。


ポーションとは、体力を回復することができる緑色の液体だ。その緑色が濃いほど効果がある。

迷宮探索者には需要が高く、一日に千個単位で売れる道具屋もあるらしい。


ここで売っているポーションの緑は薄く、効果が薄そうだ。だから客もいないのだろう。

しかし、ライトはあることに気が付いた。


「匂いが薄い……」


ポーションから漂ってくる匂いが、普通のポーションよりも薄いのだ。


ポーションは、どんなに良いものでも悪いものでも匂いが変わらない。だから、迷宮で危なくなった時に間違えて効果が薄いポーションを飲んでしまい死にそうになった、という話を聞いたことがある。


しかし、このポーションの匂いは薄い。

ということは……


「ポーションに水を入れて薄めている?」


ライトは、そんな答えにたどり着いた。


何故そんなことをしているのだろう、ライトは考えを巡らせる。その時、


「あんたみたいに、頭が回る人を見つけ出すためだよ」


不意に老人が喋りだした。ライトに話しかけるかのように。

ライトが受付の方に向くと、老人がこちらを見て不敵に笑っていた。しかし、その顔からは何を考えているのかをうかがい知ることができない。


「何、そんなに警戒しなくていい」

「何故考えていることが分かったのだ? 何かの能力(アビリティ)か?」

「いいや」


老人は静かに首を振る。


「この年になると、人の考えていることも何となく分かるようになるもんさ」


その真偽は分からないが、とりあえず今聞きたいのはポーションのことだ。と、ライトが口を開きかけた途端、老人が話し始めた。


「ポーションの少しの匂いの違いから水で薄めていることまで見抜くなど、並大抵の頭ではできん」

「いや、何で頭の回る奴を探しているのかを」

「それは今から話す」


老人にきっぱりと言い切られ、ライトは押し黙る。


「では、そんなお前さんに質問だ。儂と契約しないか?」







その後、老人―――名前はヤルタと言うらしい―――は長々と話をした。それを要約するとこうだ。


ライトが迷宮に潜る際に見つけたドロップ品は、全てこの道具屋が買い取る、しかも、道具屋においてあるポーションは全てただでもらって良い。


ライトは、ドロップ品を売り捌くことができ、ポーションをもらうことができる。いいことずくめだ。


一見老人に得がなさそうだが、そうでもない。


老人は、体力の低下により迷宮に潜れない。よって、ポーションの素材などを取りに行くことができない。

それをライトがとってきてくれれば、大助かりなのである。


しかし……、ライトは考える。

この老人の話を、全部信じていいものか。


そもそも、頭が回るのとこの取引は、あまり関係がない。どっちかというと、体力がある人に頼むのが得策だ。

また、素材を取りにいけないのならば、こんなにも多くのポーションを作ることはできないはずだ。

なら、老人の真意は何なんだ? 何を考えているんだ?


ライトが考えを巡らせていると、老人が大きな声で笑い出す。


「なーに、からかっただけだ。特に意味はない」


老人のその言葉にライトは拍子抜けする。

今の言葉は辻褄があっていなかったので、からかったと言われて納得がいった。


普段は表情を表面に出さないライトも、少しだけ笑みをこぼす。


「なかなか面白いジョークだったよ。またな、ヤルタじいさん」

「ああ、じゃあな、ライト。迷宮探索、頑張れよ」


ライトは、そうして道具屋を後にした。

そのあとすぐに何も買ってないことに気付き、急いで引き返したのは、ライトにとっては赤面ものだろう。







「お部屋はどういたしますか?」

「一人部屋を……とりあえず十日間」

「はい。では、1000×10で、一万Gとなります」


ライトは、宿の受付員に銀貨を10枚払い、鍵を受けとる。鍵には、204と書かれている。部屋番号だろう。


階段を駆け上がり、右から4番目の部屋に、鍵をあけて入る。

部屋はやはりかなりみずぼらしく、ベッドもボロボロだ。


しょうがない、ライトはこぼす。


一日1000G、しかも朝晩食事つきだ。むしろ、ベッドがあって良かったというレベルである。


ベッドに腰かけたライトは、ポケットから小さな袋を取り出す。

何と、これと先程買ったものが入っているベルトにかかった巾着袋以外、彼は持ち物か無いのである。

あとは、剣ぐらいのものか。


その小さな袋と巾着袋から、現在の持ち物を床に取り出す。

持っているのは、先程買ったポーションと銀貨、小さい頃に拾ったお守り位のものだろう。


「……少ないけど、しょうがないか……」


その時、部屋のドアがノックされた。夕飯の知らせだろう。

ライトは、ドアを開けにいった。






名前:ライト・コード

年齢:18

レベル:68

職業:剣士

能力:三連撃

斬撃破

烈風突き

炎撃斬

雷撃斬

死斬

所持金:2000G

持ち物:ポーション(薄)×5

鉄の剣

謎のお守り




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