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青年ライト

迷宮に挑む者、迷宮探索者。


その数は年々増え続け、現在活動している数だけでも千人にのぼるという。

1年以内の死亡率が50%を越えるこの仕事において、その数は異様である。


彼らの目的は、なんといっても「夢」である。


迷宮探索者の平均月収は、百万G。これは、一般の人々の月収の4倍である。

二十万あれば一月生きていけるこの国で、この収入は破格である。


また、迷宮探索で活躍することで上がっていく、迷宮探索ギルドにおけるランク。

HからA、その上にはSがあるこのランク。上がることにより、ニュートルニア内の様々な施設で優遇される。

迷宮が探索されるほど、ニュートルニアの活性化に繋がるとされているので、ある意味当然である。


しかも、ランクSの迷宮探索者の年収は億を越えるという。


そう、迷宮探索者とは、ハイリスク・ハイリターンの一攫千金も夢じゃないものなのである。


そして、ここにも一人、夢を追う若者がいた。


「ここがニュートルニアか……」


彼の名前は、ライト・コード。

銀髪の青年であり、腰には剣を装備している。


彼の迷宮踏破の物語が始まった。







ライトは、迷宮探索ギルドにて、受付に並んでいた。

ギルドは喧騒に包まれてる。

現在は昼。朝から迷宮に潜っていた探索者が、到達階層の報告に来ているのだろう。


「次の方、どうぞ~」


3つある受付の内、右端の受付が空いたので、歩いていって受付嬢の前に立つ。


「では、この紙に必要事項を記入していってください~」

「…………なぜ登録だと分かった」


ライトを見た途端登録用紙を出した受付嬢に、ライトが疑問をぶつける。

当然だろう、受付に並ぶ人の中には、現在の探索状況を伝える人もいる。それなのに一瞬で登録だと見抜いた。疑問を持たない方がおかしい。


しかし、受付嬢は平然と答える。


「だって、私、探索者全員の名前と顔を覚えていますので~」


と、平然と言ってのけた。

普通は、あり得ないことである。何せ、探索者は千人もいるのだ。それら全てを覚えるなんて、記憶量がどんなによくても無理だろう。


しかし、ライトは納得したような顔で、こう言った。


≪完全記憶≫(パーフェクト・メモリー)。≪学者≫が覚える最高位の能力(アビリティ)。修得レベルは500。レベル高いんだな、貴女は」


ライトが早口でそう言うと、それまで悪戯っぽい顔をしていた受付嬢が、一瞬固まった。



≪完全記憶≫(パーフェクト・メモリー)とは、ライトが言っていた通り、能力(アビリティ)の一つである。

能力(アビリティ)とは、探索ギルドにおいて強さの基準となるレベルをあげることで修得することができるものである。


探索者ギルドに登録する際、その強さに応じてレベルが与えられる。それは、迷宮内のモンスターを倒していくことであげることができる。


また、ギルドに登録する際に、職業(ジョブ)というのも決める。

これは、先程の会話に出てきた≪学者≫のようなもので、他にも≪戦士≫や≪魔術師≫というようなものがある。

また、職業(ジョブ)によってレベルが上がる時に修得できる能力(アビリティ)も違う。

≪学者≫や≪神官≫のように、研究や信仰心でレベルが上がる例外的職業(ジョブ)もある。


探索者の平均レベルは50である。よって、この受付嬢のレベルは異常だ。

しかし、それが分かったにも関わらず驚く様子を見せないライトに、受付嬢は驚きを隠すことができなかった。


しかし、流石は受付嬢である。すぐに持ち直し、「そうなんですよ~。では、書いてくださ~い」とライトに書くよう促す。


そんな様子もどこ吹く風。ライトは、表情を全く変えず、紙に記入していく。

傍若無人、そう呟きそうになるのを抑え、受付嬢は記入し終わるのを待つ。


「書き終わった」

「わかりました~」


紙を受け取った受付嬢は、紙に目を落とす。




名前:ライト・コード

年齢:18

使用武器:片手剣

使用魔法:無し

希望職業:剣士




受付嬢は、得体の知れないこの青年が意外にもまともな事を書いていたことに安堵する。この様子だと、使用魔法や使用魔法に「何でも」とか書きそうだったからだ。


「では、レベル測定と職業(ジョブ)の決定を致します。あちらのドアからお入り下さい」


ライトは、言われた通りにドアを開けて中に入っていった。


「疲れた……」


そう呟いてから、受付嬢は次の人を呼んだ。







ドアの先には、少し広い部屋があった。その真ん中には、魔方陣がある。

その脇の椅子に、白髪の老人が腰かけている。もうゆうに80は過ぎていそうなおじいさんだ。


「そこの魔方陣の上に乗りなさい」


老人がそう言ったので、ライトは言われるがまま魔方陣に乗る。

すると、老人が魔法の詠唱を始めた。


「くっ」


ライトの脳に、色々なものが流れ込んでくる。その苦痛に、ライトは顔をしかめて呻く。

その苦痛は例えようも無いほどのものだった。


しばらくして、流れがやみ、いつの間にかうずくまっていたライトは立ち上がった。


「自分自身に意識を集中してみるのじゃ。お前のレベルと職業(ジョブ)が出てくるじゃろう」


ライトは、言われた通りにやってみる。

すると、目の前に文字列が表れた。




名前:ライト・コード

年齢:18

レベル:68

職業:剣士

能力:三連撃

斬撃破

烈風突き

炎撃斬

雷撃斬

死斬




レベル68は、探索者の平均レベルを越えている。しかも、登録した時点でこれなのだから、驚きだ。

しかし、ライトは喜びの表情も浮かべず、ただ淡々と目の前に表れた文字列を見つめていた。


「どうじゃ、出てきたか?」

「ああ、出てきた。それじゃあな」


ライトは、短く返すと部屋から出ていった。


「あの若者……、普通とは違うのう。普通は一喜一憂するものなのじゃが」


老人の呟きは、誰も聞くことは無かった。



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