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第一一話 生徒会室

 繋ぎの回ですので、少々短めです。

「それで……一体、何用でしょうか?」


「ふむ」



 放課後、俺はマンモス校蒼南学園の自治組織たる生徒会の根城、まぁ、早い話が生徒会室にいた。

というより、呼び出された。

 一〇人前後が話し合える程のこじんまりとした部屋には、大きな本棚に数台のPCが置かれていた。そして、隅には誰かが持ち込んだものだろうか、“パキラ”という観葉植物が置かれ、その横にはジョウロが此れまた無造作に置かれていた。


 椅子に座らされた俺は、珈琲が注がれたマグカップを出され、こうして目の前の男と対面しているんだけど……。



「聞いていますか? 賢木さかき生徒会長」


「聞いているとも、神ノ瀬(かみのせ)クン」



 目の前にいるのは、賢木生徒会長。黒髪に黒縁眼鏡が特徴で、自分で言うのもアレだが、長身の部類に入る俺以上の長身の持ち主だ。といっても、精々一センチくらいの差だが。



「何用とはと君は聞くが、察しの良い君ならすでに分かっているのだろう?」


「……深雨みうの、事ですか」



 流石に、何時も通りの呼び名を遣うわけにもいかないだろう。彼女をミューと呼ぶのは俺くらいのものだし。


 俺の言葉に、賢木生徒会長は両手をパンと叩いて首肯した。



「そう!……やはり、説得は無理かい?」


「何度も言っていますが、無理です。彼女が自ら立候補するなら、無論賛成しますが」


「そうか。……彼女ほど、次期生徒会長に相応しい人材もいないというのに」



 賢木生徒会長は、兎に角人を見抜くのが上手いと評判だ。彼が生徒会長なのは、“人を率いるのが得意”と言うよりは、“人に任せるのが得意”と言った方が正しい。

 何処からか最適な人材を見つけてきては、その人に仕事を任せる。だから、賢木生徒会長が率いるチームは、生徒会から草野球チームまで、かなりの確率で成功する。


 そのため、此処蒼南学園において、賢木生徒会長に信頼されるということは、全生徒に信頼されると同義語だ。

「あの賢木さんが信頼する人なら、間違いない」と誰もが思うからだ。



…………蒼南学園の生徒会制度には、「現生徒会長推薦枠」という変わったシステムがある。立候補者に加えて、生徒会長が一名、候補者を指名するというものだ。勿論、指名された当人が立候補するかどうかは、当人の自由となっている。


 後任に自身の派閥のものを指名する……なんて感じの弊害が出そうだけど、実はそうでもない。そんなことをしても無意味と言うのが最大の理由だけど、もう一つの理由が、大抵の場合、立候補者と推薦枠の人間が、物の見事にカブるからだ。


 蒼南学園における生徒会長はかなりの名誉職だが、権限自体はあまりなく、しかも学園の規模が大きいことも相まってか、激務だ。書記などの他の役職は兎も角、“会長”ともなると、立候補者は毎年二人いれば良い方。大抵の場合、一人で終わる。そしてその一人は、現会長が推薦する程の者であることが多い。


 一応、選挙が行われるが、此処まで来ると出来レースだ。それでも、大抵の場合は校内で(良い意味で)有名な人が生徒会長に就くけど。



「大体、彼女は一年生ですし、二年でも有力株は幾らでも居るでしょう?」


「……君も、その“二年の有力株”の一人なのだがな」


「……」



 ジト目で見て来たので、スッと視線をそらす。

……家の事を二人にまかせっきりにしている以上、こういった活動はあまりしたくない。出来るだけ家にいて、ギンの世話とかしたいし。


「因みに君は四番だ」


「微妙ですね」


「二年で一番の候補は、松風まつかぜクンだね」



 確かに、雁飛かりとは真面目で何事もそつなくこなすし、人気もある。



「松風さんにその話は?」


「したよ。三日後に返事を貰った。了承するそうだ」



 そう言うと、賢木生徒会長は肩をすくめた。

 その態度に、少しムッとした。



「自分から松風さんに打診しておいて、了承した後も深雨を立候補させようとするのは、意地が悪いのではないですか?」


「その通りだが、どうしても諦めきれなくてね。在学中に、生徒会長となった彼女を見ておきたかったんだ」


「……まぁ、気持ちは……察しますよ」



 賢木生徒会長は、人間がベストなポジションで仕事をしている姿を見るのが大好きという、少し変わった人間だ。彼からすれば、ミューはまさに会長に適した人間なのだろう。


 其れには一理あると僕も思う。でも、賢木生徒会長は、ミューの徹底的なまでの人嫌いを知らない。

 そんなミューが承諾するとは思えないし、かといって俺が直接言ったら、ミューは二つ返事で了承しそうだ。「お兄様が仰るのなら」とか言って。


 まぁ、ミューを強制させるつもりなんてないが。好きに選ばせるつもりだ。



「では、会長の後任は松風さんが?」


「恐らくそうなるだろう。彼女はかなり有名だし、人気だ。確か、成績も上だったはずだが?」



 その通りで、雁飛はかなり成績が良い。俺は文系よりの人間なんだが、彼女は理系だ。

 もっとも、彼女は昔から運動がまるで苦手で、当の本人もよく嘆いていた。






 そうして、雁飛率いる新生徒会の発足が近付いてきたわけだけど……俺たちはそんな新生徒会に、ちょっとづつ関わっていくことになる。






 次話からは、またヒロインたちとの絡みに戻ります。


 学園モノって案外ネタがないんですよね……。

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