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はじまりのうた

 窓辺から入る月明かりを背に一人の女性がある本のページをめくる。


「太古の昔、神様は世界を……大地を、空を、海を、山を、森を、川を、風を、生命を、そして人間をこの世に創りました。」


「神様は人間を慈しみ、愛し、いろいろなモノを授けました。」


「住むところや良い暮らしをする為に必要な道具や知識、技術を……」


「人々は神様に感謝し、毎日を精一杯に生きていました。」


「人々は日々の生活を一生懸命に生きた結果、世界はいつのまにかたくさんの人間で埋め尽くされ、たくさんの村や町、国が出来ていきました。」


「同じ人間同士、仲良くしようと隣の村や町、国の間でたくさんの交流が始まりました。」


「最初の頃は自分の住んでいるところと違う文化や暮らしに興味や関心を持っているだけでしたが、いつしか人々はこう思うようになりました。」


―――隣の奴らは同じ人間なのにどうしてあんな(・・・)に良い暮らしをしているんだ?


―――隣の統治者はあんな(・・・)に寛容なのにここの圧政は酷すぎるのだろうか?


「人々は日々の生活をもっと良く送る為にと村や町、国同士で……また、同じ村や町、国の中でも争いが生まれました。」


「人々は自分たちの小さな世界だけでなく、外の大きな世界をることで妬みや僻みといった負の感情を持ち始めました。」


「負の感情を持ったことにより争いにが生まれ、人々はたくさんの悲しみや苦しみ、憎しみ恨みなどの負の連鎖が生まれてしまいました。」


「すると、今まで魔界で暮らしていた魔王や魔物達が人間の負の感情におびき寄せられ、人間の世界へと姿を現すようになりました。」


「人間は自分たちと違う異形の姿をした魔物達に恐怖を抱き、人間同士で争うことをやめて魔王と魔物達に立ち向かうことにしました。」


「人々は力を合わせて魔王や魔物達と戦いましたが、彼らの強靭な爪や牙、肉体に歯が立ちません。」


「それを見ていた神様は魔王や魔物達に対抗できるよう、人間に“魔法”を授けました。」


「魔法を得た人間達は長い……永い戦いの末、多大な犠牲を払いながらも魔王や魔物達を撃退することができました。」


「けれど、人間達が一度持った負の感情は無くなることはなく、魔物達は今も人間の世界へやってきては人々を襲い、人々は心も体もボロボロになってしまいました。」


「それを見兼ねた神様は《空の女神》に人間の世界で人々の心の拠り所になるように言いました。」


「《空の女神》は人々の心を勇気付け、一緒に魔物達と戦いました。それから……あら? もう寝ちゃったみたいね。」


 母親は読んでいた本をベッド横の机に置き、机に置いてある灯り点す魔法具を止めると室内は窓から差す月明かりに優しく包み込まれる。


母親は椅子から立上がりふかふかのベッドに気持ち良く寝ている少年に顔を寄せる。

 そして、少年の顔にかかる金色の髪を優しく払い、母親は微笑を浮かべながら頬に唇を落とすと部屋から静かに出て行く。


「おやすみ、ヴィオ。」


バタン


 母親が慈愛に満ちた声で息子……ヴィントにおやすみの挨拶をして部屋を出て行くと、室内は静寂に満ちた。


 スヤスヤと眠るヴィントの安らかな寝顔をただ月明かりが照らし続ける。



† † †




 創世から幾星霜……




 世界には豊かな自然とそれらに囲まれた人々の穏やかな生活、どこかで生まれる憎しみと悲しみに満ちた争いや人間と魔物の戦い……相反するモノがありふれた世界。


 美しくも穢れた……そんな矛盾した世界のある大陸。


 その名はビューネ大陸。


 東西南北と中央の五つに分かれた国から成る。


 海と大地に恵まれ、人々の活気に溢れたオステン王国はビューネ大陸の東に位置する。


 この国の王家には歳が三になる頃、体のどこかに何か生き物を象った痣のようなモノが現れることがある。


 それは、蝶や鳥などの小さく、か弱き生物や獅子や虎などといった強く大きな生物であったり、また……存在自体がほぼ幻である様な竜であったりする。


 その痣は《王認紋》と呼ばれ、初代国王であるアインス王に宿り、現在は王家の象徴と守り神であるとされ、脈々と紡がれた血の中に秘められた竜の意志がその発現を決めるとされ、生まれ持った人物の潜在的な素質により生物の格の高さが決まる。


 また、《王認紋》には魂が宿り、魂には独自の魔力源が存在していて、その魔力量は一般的な魔術師の数倍から数十倍と莫大な魔力量を誇る。


 しかし、その《王認紋》の恩恵を得るには心身共に成熟していなければならず、未熟なまま操ろうとすると逆に莫大な魔力によって身を滅ぼされてしまう。


 その為、母親は自分の子どもが三歳になる日、段々と浮かび上がる《王認紋》の周りに封印を施し、心身が成熟するまで魔力が暴走しない様にする。


 そして、心身共に成熟すると母親は封印を解き、父親が《王認紋》の魔力と子どもの魔力に合わせる《調律》と呼ばれる儀式を行う。


 《調律》をする事で《王認紋》に宿る魂の恩恵を得る事ができる様になり、また、《王認紋》が模している生物を世界に顕現させることができるようになり、王になる資格が認められるのであった。


 





挿絵(By みてみん)




改めてに方も新しい方もこの『竜脈隔世りゅうみゃくかくせい』をよろしくお願いします。


感想等頂けたら執筆スピードが上がる機能を搭載しました。(ぇ


誤字脱字の報告もお待ちしております。



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