御徒町樹里の西遊記(番外編その弐)
御徒町樹里はある国の僧です。
観音様のお告げで天竺までありがたい経典を授かる旅に出ました。
馬に揺られて進んで行くと、ある町に差し掛かりました。
「お坊様、寄ってらっしゃいな」
奇麗な女性が呼び込みをしています。
「さあさあ」
女性は樹里を女の子とも知らずに店の中へと連れ込みます。
「さあ、お好きな女の子とお話なさって下さい」
女性は下品に笑って言いました。
そこにはたくさんの若い女性が並んで座っています。
「そうなんですか」
樹里は笑顔全開で勧められた席に着きました。
「いらっしゃいませ」
店の女の子が樹里の隣に座ります。
その頃、樹里が乗って来た馬はいかにも悪そうな顔の男達が盗んでしまいます。
どうやら店とグルのようです。
グルと言っても、尊師ではありません。盗賊です。
「坊主は金を持っているはずだ。女と部屋に入ったら、奪い取れ」
盗賊の頭が言いました。
手下達はニヤリとして頷きます。
樹里は女の子と部屋に移りました。
「ねえ、お坊様、お名前は?」
女の子が色目を使って尋ねます。
「御徒町樹里です」
樹里は笑顔全開で応じます。
「は?」
女の子はビックリして樹里を見ます。
「お坊様、女なの?」
「はい」
仰天する女の子に尚も笑顔の樹里です。
「このままここにいると大変な事になるわ」
女の子は樹里を連れて裏口に回ります。
「逃げて。貴女のような女性がいてはいけない」
女の子は悲しそうな顔で言いました。
「そうなんですか」
樹里はそれでも笑顔です。
「おい、何してる!?」
盗賊達がやって来ました。
「逃げて!」
女の子が盗賊に取り押えられました。
「逃がすかよ」
盗賊の頭が樹里をグイと引き寄せると樹里の帽子が取れました。
「おお!」
樹里に後光が差し盗賊達が平伏します。
「申し訳ありませんでした」
「そうなんですか」
樹里は知らないうちに盗賊達を改心させ、馬も返してもらいました。
「旅のご無事を祈っております」
盗賊と女の子達に見送られる樹里です。
めでたし、めでたし。