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異界の門③

久しぶりの更新です。

ようやく辺境の章の方向性が定まりました。

一応今回登場する組織は、某白い悪夢が所属する管理局とは全くの別物です。

(元ネタだろうと言われると何も言えませんが・・・)

 破損した旅客列車の復旧作業を行うキンダーガルテン号。

 その車内では、ラスティーが双子、神奈、リタの4人に事情を説明していた。

本来ならば、言語の壁が立ちはだかるのだが、リタの翻訳能力のおかげで、問題は無いようだ。


『要約すると、貴女はアーシェリアという世界のノワルニア王国の第一王女で、国の危機を邪神様に助けてもらうためにここへやってきた・・・そこに、たまたま通りかかった旅客列車を魔物と間違え攻撃したという事ですね。』


 一通りの事情を聞いたリタは、その内容を要約し間違いが無いか確認する。

 理由は、双子達が(わざと)誤解し、事態を複雑化させることを防止するためである。


『しょうがないじゃない!あんなトロッコの化物みたいな乗り物、アーシェリアにはないし。』


 呆れ気味に話すリタの態度が気に食わないのか、頬を膨らませるラスティ。


『確かに軌道内への侵入は非常識ですが、鉄道の無い世界の住人にそれを言ってもしょうがないですからね・・・』


 その様子に気付いたリタは、捕捉の説明で、彼女をフォローしようとしたが・・・


『鉄道がないとか、ショボ過ぎるのだ・・・』

『きっと、原始時代並みの世界なのです♪』


 KY邪神コンビがそれを見事にぶち壊す。

 もう少し状況を見て発言してほしいとおもいながらも、悪気がないのは判っているので、それを綺麗にスルーし捕捉を続けるリタ、とてもAIとは思えない大人な対応である。


『アーシェリアの文明レベルは中世期程度、ブリザッド運行管理局管轄のブルーネ局地戦略路線ブルーネ局地ターミナル駅付近に位置し、今後の辺境地域制圧の重要拠点のひとつとして、近々侵攻予定・・・』


捕捉説明を終えた、リタはため息をつき結論を述べる。


『この様子だと、あと数ヶ月で、貴方のノワルニア王国どころか、アーシェリアの全ての国が地図から消えますね・・・残念ながら・・・』


『ちょ・・・それどういう意味!』

『全ての国が無くなるとか、意味わかんないし!』


リタの物騒な結論に、ラスティーが食ってかかったのは、当然の反応だろう。

彼女は、アーシェリア意外の並行世界(ブレーン)を知らない。

一応彼女は、異界の門を使い並行世界に渡りはしたが、邪神の住む神の世界に渡ったというていど認識なのである。


『それを説明するには、まず並行世界についての説明が必要なようですが、長くなりそうなので後ほど詳しく説明いたします。』

『まずは、今後の対応について邪神様にご判断して頂きます。』


ラスティーへの説明は後回しにして、リタは、双子に今後の対応について尋ねた。


これに対し双子は、


『助けを求めて来たのなら、それを最大限利用すれば良いのです。』


『フラウなそうするはずなのだ。』


・・・と、既にどう対応するかを決めており、ラスティーの国を助ける方向で動くつもりのようだ。

まぁ、暗黒武装鉄道結社としては、物流を完全に支配してしまえば、わざわざ面倒な国の運営に手を出す必要性は無い。

今回は、その受け入れ窓口となる国が無かったため、やむを得ず武力侵攻を計画していたのだが、受け入れ窓口となる国が見つかったいま、利益の出ない武力侵攻よりも武器や物資の売買で、利益を出しつつ侵略が行える、物流侵攻を選ぶのは民間鉄道会社として当然の選択である。


『了解しました、それでは物流侵攻の窓口候補が見つかった旨を、本社に報告しておきます。』

『後は、事前調査と滑走軌道の準備ですね。』


『なんか引っ掛かるんだけど・・・』


釈然としない様子のラスティーだったが・・・


『気にしたら負けなのだ♪』

『それより、ラスたんは帰りの手段とかちゃんと準備してるですか?』


双子はそれをいつものノリで押しきると、次の動きのための話しに切り替える。


『当然よ、術式の準備に3日、展開に1日、5日目で帰れるはずよ!』


驚いたかと言わんばかりに自信満々のラスティーだったが、リタはそれを一瞬でへし折る。


『キンダーガルテン号だとターラン国際ターミナルステーションまでの移動で12時間、その後の燃料と物資の積込みで1時間、ブルーネ局地ターミナルステーションまでの移動で34時間、そこに展開中の第3列車総隊所属のブルーネ列車隊との合流した後で、全行程で3日あれば十分かと思われます。』


スピードを強調した移動行程を説明し終わったリタは、ラスティーを見た、しかも完全などや顔で・・・

どうやら、ショボい技術を自信満々に説明するラスティーの態度が気に入らなかったらしい。

しかし、ラスティーは折れる事なく反撃にでる。


『そんな長い間乗り物で移動したら腰が痛くなっちゃうじゃない!』


それに対しリタは、

『数日がかりの儀式で、憔悴する愚行を冒すより遥かにマシかと思われますが。』

と、反撃・・・


・・・そしてにらみ合い


『あ・・・あの・・・』


そんな二人の険悪なムードに戸惑いながら、神奈が話しに割り込んだ。


『ラスティーさんの国は危機的状態なんでしょ、なら少しでも早く駆けつけた方がいいと思う。』


神奈の正論にラズロットは頷き、

『神奈たんの言う通り、所要時間は短い方がいいのです。』

とリタ案に賛成する意思を示した。


リズロットも頷きそれに同意する。


『それに、リズ達は、お家以外で寝泊まりしたく無いのだ。』


リズロットが言う家とは、勿論キンダーガルテン号の事である。

双子達は、常にキンダーガルテン号を拠点に活動をしており、当然普段から当たり前の様にそこで寝泊まりをしている。

そのため、キンダーガルテン号の内装は、走る5つ星ホテルと言われるほど豪華な作りで、居住性を最優先に設計されおる。

その快適過ぎる居住空間に慣れきってしまっている双子達は、この列車意外での宿泊を極端に嫌がるのである。



『邪神様の意向により、キンダーガルテン号の移動とします。

何かご質問はございますか?ラスティー殿下♪』


『うぐぐぐ・・・』


プライドを傷つけられたラスティーは恨めしそうに勝ち誇った表情で彼女を見下すリタを睨み付ける。


『ねぇ・・・リタってあんな性格だった?』


『リタは仕切りたがり屋さんなのだ。

だから、同じ仕切り屋さん属性のラスたんに同属嫌悪してるだけだとおもうのだ。』


『アンドロイドなのに人間臭いんだねリタって・・・』



『何か言いましたか?』



ひそひそ話しをしていた神奈とリズロットは慌てて首を横にふった。


それはともかく、修理を終えた旅客列車を連結したキンダーガルテン号は、推進運転(機関車が客車を推してバック状態で走ること)で元来た道を帰っていくのだった。




________________________

魔法都市

[ポポリアス]


魔法都市ポポリアスは、数千キロ四方の小さなブレーンに存在する高層建造物が立ち並ぶ近代的な景観を持った魔法技術が極めて発達した巨大都市である。

そして、その都市の中心には、特殊な目的で設立された機関の本部局舎が存在する。


『次元震動確認!!』


『座標軸特定モニターに出します。』


『アーシェリアから管理圏外への一時的なゲート展開が原因と考えられます。』


その本部局舎内にある円形の広大なミッションルーム中央でオペレーターの報告を微動だにせず聞く初老の男の姿があった。

軍服に身を包んだ白髪のその男は、ゆっくりと立ち上がり、モニターに表示された情報を確認する。

彼の名は、グレン ポートマン。

この、亜空間の秩序を維持管理する事を目的に設立された巨大組織『亜空間管理局』の局長である。


『管理圏外・・・あの亜空間列車が出没する地域か・・・厄介な・・・』


亜空間管理局は13年前にシュバルツァークロイツとの戦闘を経験していた。

彼らの知らない事だが、その時の戦闘に参加した列車隊は、後方を守るために、第3列車総隊が申し訳程度に配置していた、5編成程度の部隊でしかなかった。

しかし、この衝突で亜空間管理局は派遣した部隊が全滅するという大損害を出し、その後その一帯は非干渉空間とされ管理圏外と呼ばれる事となり現在に至る。



グレン局長は、今回の件が管理圏外を刺激し最悪の結果を招く事を恐れていた。


『ヒューズを局長室に来させろ!!

下手をすれば13年前の悪夢が繰り返される事になる!!』


グレン局長はそう言うと、足早にミッションルームを出ていった。


下手にてを出すと恐ろしい結果になる巨大組織、それが暗黒武装鉄道結社シュバルツァークロイツ(民間鉄道会社)。

次回からは、グレン局長のお友達は胃薬になりそうです。

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