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異界の門①

今回から異世界からの使者の少女が登場します。


巨大なエイの様な魔獣にまたがる少女……


淡いピンク色のツインテイルの髪と瞳、紺色の生地に控え目に施された金の刺繍のマント着きの服に青白い肌が映える。

年齢は15歳に見える。


彼女は、何日にも渡る魔法の儀式により作り出された異界の門を通りこの異世界(カタルシアブレーン)にやってきた。


『ホントについて無いわね……出た傍から異界の魔物に襲撃されるなんてね……まあいいわ、邪魔する奴はぶっ飛ばすわよ!』


そういうと、彼女は魔獣をダイブさせ、異界の魔物に急降下させる。


魔物はそれに合わせ、鉄の塊の様な矢を放ってきたが、彼女の操る魔獣はこの程度の攻撃ではびくともしない。





『魔獣の癖に生意気なのよ!』


少女が油断したその時、


バシュッ

バシュッ

バシュッ……


さっきよりも大きな鉄の塊が魔物から放たれた。


『……っ!守りの風よ!』


反射的に守りの風の魔法で、鉄の塊の進路を変える。

外れた鉄の塊は、地面に落下すると爆笑した。

火球の魔法が炸裂したくらいの威力だが、魔力が一切感じられない。


不思議に思いながらも彼女は更に魔獣を急降下させ魔物に近づける。

その時、彼女は魔物の身体が一部透けていて、その中に沢山の人がいる事に気が付いた。


『魔物に食べられたんだ……助けなきゃ!』


彼女の乗る魔獣が急降下しながら速度を上げていく。


『いっけぇぇぇ!!』


ガシャァァァン……


魔獣の硬い外骨格が魔物の身体の一部をえぐりとった。


『あの魔物はそれほど硬くないようね……ちゃっちゃと片付けるわよ!!』


ギュォォォ!


彼女の命令に魔獣が咆哮で答えた。


その時……


パァァァァン


遠くの方から咆哮を上げ高速で近づく新たな魔物の姿があった。


全身が頑丈そうな殻で被われ、今戦っている魔物より遥かに強そうだ。


『強そうなのが来たわ、ギュオ、油断しちゃダメだからね!』


ギュッ!


ギュオと呼ばれた魔獣は短く吠え、同意の意思を示す。






『魔力反応確認、魔力ランクE、一致する反応パターン無し……。』


魔力センサーが検知した反応パターンをデータベースと照合した結果をリタが告げる。


『一致するパターン無し……未知の魔法技術の産物の可能性は?』


『可能性は限り無く低いですね……極めて原始的な技術を使用している様なので、古過ぎてデータベースから抹消されたパターンと推測するのが妥当でしょう。』


照合結果から、未知の魔法技術の可能性を疑う分析担当のプッペディナに対し、リタはその可能性を否定した。

理由は魔獣を制御する際に発生する魔力信号のパターンが単純かつ原始的なものだからである。


『それにしても、あのエイみたいなの……どこぞの荒ぶる海の邪神そっくりなのです♪』


『これで金色のドラゴンが出てきたら怪獣大決戦なのだ♪』


『邪神様……そのネタは解る人が少ないかと……』


その脇で、とあるマイナーなゲームのネタを出した双子にメタなツッコミを入れるリタだが、列車の武装を準備するのは忘れない。

キンダーガルテン号の主砲である2連装の30センチ魔導メーサーカノン砲が唸りを上げ回転し、魔獣を射線上に捕らえる。


『魔導メーサーカノン砲、拡散モード!』


『拡散モード、準備オッケーだよ♪』


リタの命令にプッペディナ達は的確に動き応える。

彼等は普段どこか抜けている様なふざけた言動をとっているが、戦闘時には素早く正確に動く。

そこは、さすがは魔導人形と言ったところか……


『魔獣がこっちに向かって来たよ!』


『列車から引き離す手間が省けたね。』


『弾幕張るよ~♪』


魔導メーサーカノン砲からマイクロウェーブの光が放出される。

拡散モードなので円錐状に広がる。

実はこの拡散モードは、通常の魔導メーサーカノン砲には無いモードである。

理由は拡散する事で出力が分散し威力が著しく低下するため、通常の戦闘列車の機関出力では十分な威力が得られないからである。

しかし、運用コストを一切考えず設計されたキンダーガルテン号の無駄に強力な機関出力ならばこの拡散モードでも十分な破壊力が得られる。

そのため、この列車のオリジナル機能として採用されているのである。

この広範囲に広がるマイクロウェーブが命中すれば魔獣は一瞬で内部が沸騰膨張し、内圧で硬い外骨格が破裂する。

外骨格が破裂しなくても高まった内圧で臓器が圧迫されもしくは、中身が焼肉になり絶命する事になる。


電子レンジでゆで卵を作ると爆発するのと同じ理由である。








迫り来る光……

ギュオに跨がる少女は、直感的にその危険性を察知し、ギュオを急上昇させて光の弾幕から逃れた。


『危なっ……何なの今のは!』


眉を寄せる彼女の目線の先には、光を浴び融解する巨大な岩や弾けて肉片になる不運な小動物達の姿があった。


謎の攻撃を前に、迂闊に近寄るのは危険だと判断した彼女は、高度を取り様子を見ようとした……その時、


ボンッ……バシュゥゥゥ……


蛇の様に長い魔物の頭から噴煙をあげる何かが飛び出し、うねりながら向かって来た!!


『ギュオ!避けて!!』


彼女の命令に反応しギュオが急旋回し、回避コースをとる。

しかし謎の物体は、まるで意思を持っているかの様に、再び衝突コースに進路を変える。


『Uターンして振り切って!』


『ギュッ!』


ギュオはUターンし、謎の物体を振り切るために急加速する。


しかし、ギュオと謎の物体の距離は徐々にに詰まっていく……そして命中……しようとした瞬間、



ギュオは身体を捻り物体をやり過ごした。


しかし……


ボンッ……


物体が爆発し、中に仕込まれていた金属片を撒き散らした!


『かはっ!!』


ギュオの上で、回避に成功し、安堵の表情を浮かべた彼女の顔が一瞬で苦悶の表情に変わった。

撒き散らされ破片の一つがギュオの身体を突き抜け、彼女の腹に食い込んだのだ。


硬い魔獣の身体により威力が殺されているとはいえ、柔らかい彼女の身体にめり込み臓器を引き裂くには十分な威力だった。

顔を歪め痛みに耐える彼女の腹部に血が滲む。

そして、彼女は意識を失い、魔獣にしがみつく力を無くしたその身体は風に流され空中に投げ出された。




『近接信管作動……破片によるダメージ確認!』


『魔獣はきりもみ状態で落下中……あ……魔獣から分離する魔力反応……人が乗ってたみたい……』


『反応パターンは魔族……どうする?リタ……』


『シュバルツァークロイツ交戦規定No.30[暗黒種族登録種保護]を適用、救助対象と認定……それでは、私と神奈及び邪神様で魔族の救助、残ったプッペディナのみで旅客列車の救助活動をそれぞれ行います。』



プッペディナ達の報告を受け、リタが次の指示をだした。



通常は車内に待機させるべき双子が、魔族救助メンバーに入っているのはかなり問題だが、車内で待機させた場合、好き勝手に行動され事態が悪化する事は確実である。

そうなるくらいなら、近くで眼を光らせておいた方が良いというリタの判断だった。


『邪神様、くれぐれも悪ノリで事態を悪化させないように……』


『解ってるのです……』


『リタはうるさいのだ……』


釘を刺すリタに双子達はふて腐れた様に答える。

その姿はまるで子供(外見は子供だが……)、とても2000年以上を生きた神とは思えない。


その様子を見る限り、おとなしくしている気は無いようだ。

当然リタもそれに気付いているが、いつもの事なので余り気にしない。

要は、双子達が好き勝手に動くのを前提にした事態を想定していれば良いのだ。

既にリタは、現段階で双子達が暴走した場合を想定し、旅客列車から双子達を離れさせるため魔族救助メンバーに入れている。

更にリタ自身が監視するという念のいれようである。


それはさておき、ラズロット、リズロット、リタ、神奈の4人は走る列車のハッチ(キンダーガルテン号はドアの代わりにハッチが付いている)から飛び出した。

双子達は背中に生えている悪魔の様な羽で飛行する。

リタは神奈を吊り下げ、る様に両手で支え、背中に装備された飛行ユニットを展開し双子達を追いかける。



ズゥゥゥン……


4人が向かう先に魔獣が墜落し砂煙が上がった。







彼女が失った意識を取り戻したのは砂の上だった。状況が掴めず周囲を見渡すと少し離れた場所に魔獣の巨体が横たわっていた。

身体のあちこちに、さっきの破片が突き刺さり、そこから体液が流れ出している。

まだ生きているらしく、もがき苦しむ様に身体をくねらせている。


『ギュオ!!……っぐ…』


魔獣の名前を呼び立ち上がろうとした彼女は腹部を押さえうずくまる。

腹部には、破片が深々と突き刺ささりそこから血が滴り落ちていた。

彼女は大きく息を吸い込むと、その破片に手をかけ引き抜こうと力を入れる。

その瞬間激痛が走るが、彼女はその力を緩めず、目に涙を溜め更に力を込める。

破片は引き抜かれ……痛みで飛びそうなる意識を踏み止まらせ、魔法で傷口を塞ぎ彼女はラル(魔獣)の元に駆け寄る。


『ギュゥ……』


彼女の姿を見たラルは、力無く吠える。

直ぐに治療してやりたい所だが、この魔獣は対魔法用である為、一切の魔法が効かない。

無論、回復魔法も効果は無い。

故に、攻城兵器で攻撃されてもヒビ一つ入らない硬い外骨格の鎧で身を守っていたのだが、異界の魔物の攻撃は、あっさりとその守りを打ち砕いた。


『攻城兵器の直撃を受けてもびくともしないはずなのに……』


目の前の光景に唖然とする彼女だったが、近付く4人の気配を感じ取り、戦闘体勢をとる。








『あれっぽいのだ』


地面に横たわっる全身が殻で覆われた巨大なエイを指さし急降下するリズロットに、ラズロット続く。


『邪神様、何故に急降下爆撃コースを……』


リタは、嫌な予感しか感じていない……

双子がこのような行動を取る時は、大抵事態を悪化させる、その証拠に双子の顔は何かイタズラを思い付いた子供の顔である。


『神奈さん、これよりあなたを目標地点に投射します。

着地したら迷わず邪神様に向かって剣風を飛ばしてください、時間が無いので、理由は後で説明いたします。』


『何か良く判んないけど、リタの判断なら間違い無いだろうし従うよ。』


リタの提案を快く承けた神奈は、リタの投射に耐えられるように体勢をとった。

次の瞬間、リタの腕のアクチュエータが唸り、まるで投石機のように神奈を投げ飛ばした。


砲弾に近い初速、普通の人間なら加速時のGで押し潰されてしまうのだが、暴走する魔力で強化された彼女にとっては、その程度のGは少し押された程度でしかない。


神奈の身体は、カノン砲の直射と同じ弾道を描き、目標のやや前方に着弾するコースで飛行する。


その上空では、双子達がポケットからハバネロソースの入った瓶を取り出している姿が確認できた……。


地面が迫り、神奈は身体を捻り着地体勢をとる。

足が地面と接触し、地面削りながら滑り目標地点丁度で止まった。

足にかかった衝撃は相当なものなはずなのだが、やはり暴走する魔力で強化された彼女には何の影響も無いらしく、当初の予定通り振り向き様に、双子に向かって剣風を飛ばした。


ぶおんという重い風切り音と共に放たれた剣風は、急降下中の双子達に襲い掛かり、今まさに投擲しようとしていたハバネロソースの入った瓶を粉砕した。

更に不幸な事に、瓶から撒き散らされた中身が双子達の顔面に直撃……


『ひぎゃああ!目が!目がああああなのです!』


『目がああああなのだ!!』


顔を押さながら、どこぞの人気アニメに登場する某大佐の様な台詞を叫びながら引き起こしをする事ができず、急降下を続け、ズドンという爆音と共に地面に突っ込み、二本の水柱ならぬ砂柱をあげる。

その砂柱の間を通りリタが現れ、何事も無かったかの様に神奈の前に着地すると、


『間に合った様ですね。』


と、地面に見事にダイブした双子を全く心配している様子はない。


『あの……二人とも見事に突っ込んだみたいだけど、大丈夫かな……』


さすがに、墜落の原因を作った神奈は心配しているようだが、リタはその肩を叩きこう告げた。


『まあ、あの二人は頑丈ですからあの程度で怪我をする事はないでしょう。』


そのリタの様子から、これは日常茶飯事の事だと理解した神奈は、背後に身構える少女に注意を向けた。


振り返るとそこには、魔法の杖を構えた少女が敵意剥き出しで身構えていた。



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