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暴走が産んだ災害魔法剣士

ようやく神奈のメインウェポンである巨大な大剣(斬馬刀もどき)の完成です。


天然キャラにこれを持たせるとどうなるか……ニヤニヤ

砂漠のブレーン

[カタルシア]


サラマドの街を出発したキンダーガルテン号は、サルカイ砂漠横断線を旅客列車が立ち往生している地点に急行していた。


サルカイ砂漠横断線は砂漠の激しい寒暖の差と、地盤の緩さが原因で線路が波打ち高速走行には向かない路線である。

通常の列車なら時速30キロも出せば間違い無く横転してしまうだろう。

しかし、キンダーガルテン号は、その劣悪な路線でさえも特殊な12輪台車に装備された量子コンピュータ制御の個別可動式油圧式サスペンション機構が軌道の歪みを完全に中和する事で、時速120キロという有り得ない速度で駆け抜ける事ができる。

空力を一切考えていない重装甲重武装の巨体で高速列車顔負けの速度(通常軌道の直線で時速350キロ)で走るのも化け物じみているが、更に劣悪な路線を全く気にせず爆走するその姿は正にモンスタートレインと呼ぶに相応しい。



『やっはり魔力制御に難有りなのです……』


列車内では神奈が魔法の練習を続けており、それに付き合っていたラズロットがため息を漏らした。

武器に魔力を通し強化する所まではある程度順調だったのだが、魔力で身体能力を上げる練習でまたもや彼女の魔力が暴走したのだ。制御不能となった彼女の膨大な魔力は、その身体能力を際限無く増加させ、持っていた刀では軽すぎて自分自身の目や感覚がその動きについていけなくなるという本末転倒な事態となって

しまったのだ。


『きっと細かい作業が苦手だからなのだ。』


『不器用な上に、規格外の魔力……故に制御不能……厄介過ぎなのです。』


リズロットとラズロットはシンクロした動きで腕を組んで考え込む。


『自分の身体なのに制御不能とか意味分かんないし……』


自分の身体なのに上手くコントロールできないという事態に神奈はかなり苛立っている。


『せめて振り回す武器の動きを遅くできればいいのに……』


無理なのは解っているが文句を言いたくなる。


『……あ』


その時、何かを閃いた様にリズロットが顔を上げた。


『いい事思い付いたのだ♪ラズも手伝うのだ!』


リズロットが唐突に魔力を具現化し武器の生成をはじめるが、その顔は何かいたずらを閃いた子供の様な笑顔で嫌な予感しかしない。

そんな周囲の不安を余所に、リズロットは漆黒の巨大な大剣を無から創造し始めたがその巨大さは半端ではない……

刀身の長さは優に5メートルを越え、幅も90センチ近くある。

更に柄の部分には巨大な刀身とバランスを取るためのこれまた重そうな重りがついている。

ズドォォォン……


形が形成された漆黒の巨大な両刃の大剣は人が持つ武器とは思えない重々しい音をたて床に落ちた。


『ラズたん♪魔力機構の付与と質量増加を頼むのだ♪』


『なるなる……その手があるですね♪』


リズロットがやろうとしている事をラズロットも理解したらしく邪悪な笑みを浮かべる。

ちなみに何をしようとしているのかと言うと、高質量の巨大な剣で有り余る筋力を抑えるというかなり乱暴かつ単純な手段である。

普通は思い付いてもやらないなだが、二人は人が本来扱う事のできない巨大な武器を通常の武器の様に振り回せれば災害レベルの破壊力となり面白ろそうだという基準で実行に移したようだ。

実に身勝手極まりない……


神奈の魔法教育は本人が目指しているのは正統派の魔女ではなく、双子の暴走により巨大な質量の塊を振り回す災害魔法剣士というおもいっきり間違った方面……いや180度反対の方向へと突っ走り始めていた。


それはともかくとして、ラズロットが大剣に魔力を込めると、全体に複雑で美しい紋様の様な装飾が刻まれ、魔王の魔剣さながらのまがまがしい赤いオーラをその身に纏う。


『ちょ……デカすぎだってこれ……』


神奈が頭を抱えたが、双子は早く剣を取るように促す。


『無理だって……』


苦笑いをしながら神奈が大剣にてをかけた……その時


ガコン


その重々しい大剣は軽々と持ち上げられた。


『……え?うそ……』


絶対に持ち上げられないとたかをくくって大剣を持ち上げてみたら意外と軽くもち上がり焦る神奈。

(落ち着け……落ち着け私……きっとこの剣は発泡スチロールでラズとリズが仕掛けた悪い冗談に……)


『発泡スチロールとは失礼なのです!』


『自然界では存在しないレベルの密度なのだ!』


神奈の心を読んだラズとリズが頬を膨らませ、その巨大な剣の凄さを主張するが、自然界に存在しない密度と言われてもピンと来ない神奈は首を傾げる。


『まぁ、振ってみればわかるのだ♪』


リズロットの言葉に神奈は頷くと、剣を構え薙ぎ払ように振ろうとした。



『あ……ちょっと待つのです!』


『え?あわわわ!』


バリバリガッシャーン


刀身の長さを考えずに大剣を振ろうとした神奈をラズロットが制止したが、一度加速した高質量の物体を止める事は難しく神奈はそのまま大剣に振り回さる様に一回転した。

……キンダーガルテン号の側面を破壊しながら……


『な……何事ですか!側面のダメージセンサーが反応…………な……』


異変に気付き駆け付けたリタが車内の変わり果てた姿に唖然とする。

両側の強化防弾ガラスのパノラミックウィンドウは粉砕され、ミスリル合金製の窓枠と壁面は、

ねじ曲がり切り裂かれている。

ちなみにキンダーガルテン号の壁面に使用されているミスリル合金製の装甲盤は、60センチ砲の鉄鋼弾の直撃を受けても傷一つ付かない代物である。

それを変形させ、なおかつ切り裂く事は通常不可能である。


『あ……えと……これは神奈がやったのだ……』


『ラズ達は悪く無いから向こう行ってるのです……』


いたずらが見つかった時の子供のように責任を神奈に押し付けどさくさに紛れて逃走しようとした二人だったが、リタが素早くその首根っこを掴み逃走を阻止した。

:

『さてと邪神様……詳しく事情を話して下さいね♪』


リタの顔は笑顔だが、眼が笑っていない。


『だって神奈が……』

『だって神奈が……』


この期に及んで見事にシンクロして言い訳をしようとした双子についにリタの最終リミッターが外れた。


『三人共そこに正座!今日という今日は絶対に許しません!!』



キンダーガルテン号内に響くヒートアップしたリタの声……


そしてラズロットとリズロットそして神奈の三人は、延々と続くリタのお説教を目的地到着までの間、涙目になりながら聞く羽目になるのだった。





非常に砂粒子が細かく、砂の海に例えられるサルカイ砂漠を横断するサルカイ砂漠横断線。

その砂の海のど真ん中で立ち往生する列車があった。



『また来たぞ!』


『しつこい奴だ……』


列車の窓からアサルトライフルを撃ちながら列車を護衛する傭兵達が叫ぶ。

その銃口の先には列車に向かってダイブする巨大なエイの姿をした魔獣の姿があった。

しかも、魔獣の硬い外骨格はアサルトライフルの弾丸をものともしていない……


『ダメだ!対戦車ロケット弾を用意しろ!!』


傭兵隊をまとめる隊長らしい男の命令で傭兵達はアサルトライフルの先にロケット弾をセットし構える。

対戦車ロケット弾の成型炸薬弾が着弾する際に発生するメタルジェットならば、硬い外骨格を貫通し内部を破壊する事ができる。


『今だ!ありったけぶち込んでやれ!』


バシュッ

バシュッ

バシュッ……


アサルトライフルにセットされていたロケット弾が噴煙と共に打ち出され、魔獣に向かう。


『全部命中コースだイェヤァァァ!!』


ロケット弾が全て命中する事を確信した傭兵の一人が奇声をあげてガッツポーズをとった。


しかし、ロケット弾が魔獣に突き刺さる瞬間、明後日の報告に進路を変える。


『なっ!!』


『ちぃ、魔法を使う奴なんて聞いてないぞ!!』


ロケット弾の進路を変えたの矢の進路を変えて身を守る魔法そのものである。

また、カタルシアに存在する魔獣にはジマラ山脈に棲息するものを除き、魔法を使う高等種は確認されていない。

つまり、本来サルカイ砂漠でこの様な高等種に遭遇する事など有り得ないのだ。


『ツイて無いぜ全くよぉ……』


『おい!ボサッとしてないで伏せろ!!』


次の瞬間、急降下し列車をかすめた魔獣の身体に車体の上半分がもっていかれた。

シュバルツァークロイツの戦闘用の頑丈な列車ならこうはいかないが、残念ながらこの列車は戦闘など考慮されていない旅客列車である。


『クソッやってくれるぜ!』


『救助はまだ来ないのか?』


傭兵達の苛立ちはピークに達していた。


その時……


パァァァァン


勇ましい3連ホーンの空笛を鳴らしながらキンダーガルテン号が姿を現した。



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