第六話 「 バシー海峡を越えて 」 昭和十七年 五月
本土を発った285隊は、台湾を越え、バシー海峡を進んでいた。
南方戦線への、増援船団。フィリピンでヒ船団を切り離し、
さらに南方へと進む予定だ。その護衛空母「丹沢」に、我々は搭乗している。
なお、搭載数は24機なので、残りの5機は露天駐機だ。
天候は晴れ、波も比較的穏やかで、今の所敵影もない。・・・要は暇である。
あまりに暇なので、部隊長たちは甲板上で潮風にあたっていた。
グリム「潮風が気持ちいいですね!・・・揺れることを除けば。」
FV「そっすねぇ。これで魚でも釣れりゃいいんすけど。」
グリム「FV少尉の場合は、お酒目当てでしょう?(笑)」
FV「へへっ、バレテーラ。ところで大尉、何見てるんです?」
岩井「いやー、鳳翔とはだいぶ違うなと思ったんだよ。流石は新型艦。」
「いい設備ばかりだ。」
グリム「鳳翔もこれぐらい揺れるんですか?」
岩井「こんなもんじゃないぞ。何せ艦体が小さいからな。」
「ああ、そうそう。鳳翔はタバコ吸えないって知ってたか?」
FV「マジっすか。」
グリム「でも、艦載機の燃料弾薬庫って別でしたよね?そこ以外なら・・・」
岩井「鳳翔に、艦載機用の燃料弾薬庫はないよ。小さすぎるから。」
「だからドラム缶に燃料は入れてある。」
「これのおかげでマッチすら持ち込めない。」
「付き合いでしか吸わないから、私は困らなかったがな。」
「それに、タバコは肌にも悪いらしいからな。吸わない方がいい。」
グリム「・・・雪奈大尉って、そういうの気にしてたんですね!?」
FV「ただの空戦狂・・・いや、空に生きる人間だと思ってたんすけど!?」
岩井「失礼な。これでも一応女だぞ?(笑)」
グリム「いや、だって、化粧品すらほぼ持ってないじゃないですか!」
FV「なんなら、大尉の部屋ほぼ物が無いじゃないっすか・・・」
岩井「まあ、必要最低限しか置いてないからな。」
「軍人ということもあるが、私は空を飛べればそれでいい。」
「酒は好きだが、部屋に置くものでもないしな。」
FV「飲みたかったら自分の部屋来てくだせぇ、何本かは常備してるんで。」
グリム「・・・瓶が入っていると思ったら、もしかしてあれ全部酒瓶ですか!?」
FV「そっすよ。(笑)酒だけは手放せねぇんでね。(笑)」
「・・・じゃないと戦争なんてやってられんすわ。」
グリム「・・・それもそうですね。」
岩井「まったくだ。私は戦いたいからここに来たんじゃないしな。」
「戦争なんて、何も生まないからな。」
「とはいえ、起きてしまったことは仕方ない。」
「我々にできることは、なるべく早く戦争を終わらせることだ。」
「その為にも、協力してくれよ?」
グリム「当たり前じゃないですか!」
FV「当然っすよ。このままじゃ、酒もおちおち飲めやしない。」
艦隊はバシー海峡を越えて、さらに南へと進んでいった。
果たして、ラバウルの地とはどんなところだろうか。




